Ysという事件〜Ys Etarnalリリースによせて〜
いきなりですが、日本ファルコムをお嫌いの方、この先にはお進みにならないほうがよろしいかと・・・。あらかじめ申し上げます。レビューとしては主観的過ぎるほど、ワタクシ、褒めまくります。 うーん、いいんだろうか、のっけからこんなんで。
ファルコムなんか嫌いだ。
・・・・・・。
はい、こっから先は、あなたが日本ファルコムをお嫌いでない、それを前提にお話します。嫌いな人はお帰りいただきましたんでね。
先日、パソコンゲームの老舗、日本ファルコムから、Ys Eternalという作品がリリースされましたね。ひさまつの素人裸足、ゲーム分室、記念すべき第1回目のレビューはこのYs Eternalを取り上げます。
もはや迂遠な説明になるかも知れませんが、このYs Eternal、まるっきりの新作と言うわけではありません。1987年リリースの〜もはや10年以上前ですね〜名作、Ysのウィンドウズリメイク版です。
Ys Eternalを語るのに、すでにオールドゲーマーたるワタクシ(い、いやだぁ)としては、原作・Ysをやはり語らなければならないなぁと思うんであります。
そこで、ご存じでない、若いゲーマーさんのために、Ys〜イース〜というゲームがゲームの世界に与えた衝撃を私の記憶の及ぶ範囲で書き連ねます。私と同じオールドゲーマーの方には言わずもがなの内容になるやも知れませんが、どうかおつきあい賜りますよう・・・。
前述したとおり、Ysというのは、1987年に日本ファルコムから発売されたゲームです。ジャンル的にはRPGってことになるんでしょうか。最初はPC88SR以降用ということで発売された物ですが、ブレイクの後は各社の8ビットパソコン→16ビットパソコン→ファミコン→家庭用ゲーム機なんて順に移植され、最近では抱き合わせで某セガの次世代機で発売されたのが記憶に新しいところです。
で、Ysリリース以前のRPGは、いわゆるレトロな古いRPG〜もともとテーブルトークRPG(以下TRPGと表記)のルールブックをパソコン上で再現しよう、言い換えればパソコンにゲームマスターやノンプレーヤーキャラクターを代行させ、一人でTRPGができるようにしよう、とした〜の影響がまだ強く、それゆえ「パラメータが細かく、武器や防具が無数に存在し、レベル上げが基本のプレイでまたそれが結構たいへんで、謎なんかも難しくて謎解きの間違いがそのまま死に直結なんてザラにある、そんな状況でした。
で、我々ユーザーも、RPGを選ぶ際に、「敵の種類が何通りで、装備の種類が何通りで、自分のパラメータがこんなにあり、謎解きがハードらしい」ものがいいRPGだと思っていた時代があったのです。そしてそれこそが、RPGの販売競争の中で勝ち抜くための唯一のセールスポイントであったわけです。
そんな中、新たな試みとして、この希代の名作・Ysはリリースされたのです。
そのコンセプトは、「やさしさ」。
ある一人の若い男の冒険者が主人公で、名前はアドル。この名は固定です。当時の常識では、主人公=自分というのが大部分で、ゲームをスタートするとまずは名前の入力から始まる、というのが当たり前の状況でしたから、僕なんかは首をかしげていたのをおぼえています。
で、主人公の能力値は、ストレングスとディフェンスとヒットポイントだけ。他にはレベルと経験値と所持金しかありません。賢さも信仰心も、素早さも器用さも、回避率も命中率もありません。
さらに武器、鎧、盾、それぞれ5種類ずつしかありません。装備品は他に指輪がありますが、これも5種類だけ。アイテムも一個だけ装備できますが、それとて5〜6種類が装備できるだけ。カギのたぐいは6種類、クリアアイテムは数種類ありますが、それも当時としては信じられないほど少なかったわけです。
ストーリーは一本だけ。相当ひねくれた人でもない限り、別な遊び方なんかできないシステムになっていました。クリア後のアイテム集めもできないし、レベルを競おうにも何とレベル10でマックスなんですから。
これが、当時のゲーマーの前に発表されたとき、そして彼らがそれに触れたとき、確かに一握りのゲーマーは易しすぎるシステムと「押し付けがましい」ストーリーを拒絶しました。が、より多くのゲーマーは〜相当にヘビーなプレーヤーでさえも〜これをすんなり受け入れたのでした。
なぜか。 答えは簡単です。
初心者ゲーマーや一般のゲーマーはもとより、そういうヘビーなゲーマーであっても(あるいはそういうゲーマーほど?)そのゲームから伝わる「優しさ」を感じとることができたからです。
それはストーリーが?システムが?全体のデザインが?インターフェースが?
どこについて、より強く感じるかはわかりません。ただ、ゲーム自体が非常にていねいに作られた物であったこと〜ゲームバランスが芸術的なほど絶妙であり、操作がとても簡単で易しかったことであり、それでいてそれが相当ヘビーなゲーマーにとっても楽しいものであったことであり、また、グラフィックとBGMが当時としては群を抜いてすばらしかったこと〜は多くのプレーヤーの認める事実であったでしょう。
そしてこのYsというゲームの出現は、それ以後のRPGの潮流を激変させました。
それまでのゲームは、前述した通りTRPGの再現を目標としていました。ゆえに自分が提示された世界・提示されたストーリーの中に自分を転生させることを第1義としていました。また、せっかく計算の早いコンピューターにゲームマスターをさせるのだから、という理由から、当時のハードの演算機能をフル活用した確率判定、経験値・ダメージの管理。そして無原則にさえおもえるほどの装備物・アイテムの増加。これらが当然のように指向されました。
その方向性は、確かにRPGを指向する多くのプレーヤーに支持されました。ウィザードリィシリーズに代表されるアイテム・モンスター・呪文の数の多さや詳細な能力値・経験値・クラスの管理やザナドゥシリーズに一応の完成を見たであろう能力値、経験値の多様化はすなわち、「人間のゲームマスターには管理できない数値をコンピューターによる管理で実現した、より現実に近いおもしろさを表現する手法」として、確立していたと言えるのです。
そしてこの異端なRPG・Ysは、この完成された手法に真っ向から反しています。
発売時のキャッチコピーにいう、「より難しいければいいというのは、危険な思い込みだ」という言葉は、ある意味破壊的な言葉でした。しかもその言葉は、すでにザナドゥシリーズで緻密なRPGの完成を見せていたファルコム自身から、半ばは自分自身にむけて発せられていたのです。
そのYsは、難しさより易しさを、難解さより明快さを、高度な操作より易しい操作を、システムより雰囲気を、それぞれ重視したその作りは、しかし新たな試みとしては異常なほどの成熟を見せていました。僕らはそれに、文字通り言葉を奪われ、本当に楽しくゲームをすることを知ったのです。
町の人々やキーパーソンたちの生き生きとした存在感。
有名な半キャラずらしに代表される、「スリリングだが、単純で易しい」雑魚キャラとの戦闘の楽しさ。
最初は「こんな奴には勝てない」と思えるほど強く、でも、繰り返して挑戦するに連れてどんどんこつをつかんできて、やがてようやく勝てたときの快感がたまらないボスキャラとの戦闘。
ストーリーに身をまかせて流れているだけで、レベル上げやお金稼ぎの苦労も全くなく自然に進んでいくことのできるゲームバランス。
全編を彩る(当時としては)卓越した高速かつ美しいグラフィックと、こちらはもはや伝説的とも言える、ゲームミュージックという音楽ジャンルを完全に確立したすばらしいBGM。
本当にすべてが、楽しかったのです。エンディングを見たとき、私は当時中学生でしたが目が潤んでいたのを覚えています。それは与えられたストーリーに対する感動と、それ以上に「ああ、こんなに楽しかったのにもう終わってしまったんだ」というさびしさにも似た感情であったような気がしています。
すべてが、完成されていました。一つの作品として、完結していました。
そしてこれ以後、RPGに一つの潮流が生まれたのは、多くのゲーマーが指摘するところです。いわゆるストーリー重視型のRPGがそれ以後どんどんでるようになったのです。
Ysの存在が不可欠だったとは必ずしも思いませんが、Ysの存在がその分化を著しく促しました。今日ではどちらかというと主流になる、ストーリー重視型RPG。(今日では緻密なデータ量を易しいインターフェースと壮大なストーリーのアクセントとして使用しているケースも目立ちます。)その根底、ないしは根底のさらに前の源流、そこには恐らくYsの存在があると思うのです。
RPGにストーリー重視の視点とプレーヤーに優しいスタイルを持ち込んだYsの影響は今日の次世代機専用のRPGのすべてに及んでいるし、その功績は測り知れないものがあると思うのです。
そして・・・。
1998年5月。 Ys Eternalがリリースされました。
ほとんど全てが、Ysのままでした。・・・Ysは、やはりYsでした。
リメイクされて、結果全く別のゲームになってしまったなんて話はざらにある話だとは思いますが、全力を費やしたであろう美麗な演出の数々と、一部のマップの改変(前作で表現しきれていなかったストーリーの追加とゲームバランスの取り直しのためと思われる。)以外は、まったくYsのままでした。
今日では、もはやシステム的に古いのは否めませんが、あの楽しさは、ちょっと他のゲームでは味わえないでしょう。また、midiで演奏されるBGMのすばらしいリメイクも含めた数多くの演出は、旧作で表現したりなかったであろう部分を完璧以上に補完しているようです。・・・前作経験者に対しても全く嫌みでないその手法は、「あぁ、目指していたものはこれだったんだなぁ。」と素直に感じさせてくれます。
もしもやったことのないユーザーで、難易度の高い、ないしはバランスの悪いゲームに苦しんでいる方、ぜひ試みられてはいかがでしょう。完成度の高さと、楽しさ、快感、感動は同時期のほかのソフトの追随を全く許していないと思いますよ。
P.S
・現在発売されているバージョンは、何でも相当のパソコンの機種で、動作中のハングアップとかグラフィック表示、音源関連の不備が目立つようです。早く完全版のパッチソフトの提供か新バージョンへの変更を希望します。
動かない、あるいは動かすのが大変なソフトが「優しさ」を目指していたとは誰も思ってくれないでしょうから・・・。
Ys Eternal
1998 Nihon Falcom / Windows 95
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