エースコンバット2〜華麗なる「ヒコーキごっこ」の麻薬的おもしろさ。〜
このゲームは、ナムコがプレイステーションで送り出した傑作中の傑作。恐らくここまで楽しい3DポリゴンシューティングはもうPSでは現れないのではないかと言ってしまうくらいスゴいゲームです。
主人公はテロリストに軍隊の過半を掌握されてしまったとある国家に雇われた傭兵。与えられているのは2機の航空機とこれだけは無尽蔵の燃料、弾薬のみ。これでいくつかのミッションをこなし、報酬を手にし、敵から奪った飛行機を投入してさらにミッションをすすめていくという、シューティングゲームにはありふれたストーリーが展開されます。
このゲームの売りの一つ、それは、その超美麗なグラフィックです。作り込まれた上質のBGMにを背に、精密なポリゴンモデルで描かれた敵機をを高速で動かし、それを追いかける自分は画面いっぱいに展開されたヘッドアップディスプレイに敵機をとらえるべく、さながらフライトシミュレーターのように、自機を操り、これまた美しく描かれた空と雲と、海と大地の間をまさに飛び回ります。その美しさは、プレイステーション+家庭用モニタという脆弱なハードウェアの存在をプレーヤーから忘れさせてくれるほどです。
しかしこのゲーム、はっきり言ってしまうと見た目ほどのリアルさはまったくありません。むしろ大味で、ある意味子どもっぽい作りになっている部分もあり、それを指摘するプレーヤーもいないわけではありません。しかし、ナムコ自身がCMで「ヒコーキごっこ」と称したように、このゲームは決してリアルさを追及したゲームではないのです。
自機は、飛び立った際、決して弾丸の尽きない無限に撃てるバルカン砲と航空機としては常識外れとも言える、60発以上(!)の高性能ミサイルを搭載しています。このミサイルの高性能なこと、一度ロックオンして発射すれば、相手がどんな状態にあろうと、〜飛行中だろうと、エンジンを切って待機中だろうと、それどころか、地上ミサイルランチャーであろうと砲台であろうと空母の艦橋だろうと〜ホーミングし、回避されない限り確実に命中し、いかなる地上目標物も一撃で、飛行している航空機は2〜3発で破壊するという、前代未聞のものです。
ここまで武装の高性能なことを書いてしまうと、非常に易しいゲーム、あるいはゲームバランスが悪すぎてゲームにならない、そう言った欠点を想像される人もあるかも知れません。リアリティの欠如を指摘するプレーヤーの論旨の多くも、この点をやり玉にあげてきたと聞いています。ですが、それを完璧に「楽しくてたまらない」レベルにまで昇華させているのが、ナムコお家芸ともいえるごっこ遊びの神髄なのです。
そのゲームバランス。絶妙です。実際のミサイルに比較すれば確かに高性能過ぎるそのミサイルは、ヒコーキごっこの中の世界ではまるっきり相応しい武器なのです。その理由はこんなところにあります。
ステージ1から、プレーヤーはターゲットとなる長距離爆撃機を含めると10機以上の敵機を相手にしなければなりません。それもたった1機で。この事じたい、もはやごっこでなければありえないシチュエーションでしょう。6機もの長距離爆撃機が直衛機を付けて侵攻してくるような基地で、スクランブル可能なのがファントム1機というこんなシチュエーションが現実のにあるはずがないのは、軍用機や航空戦略に造詣の深い人でなくてもわかることです。
ですが、これがごっこであるなら、ゲームであるなら、これほどスリリングなシチュエーションはないでしょう。
こういうシチュエーションが与えられたストーリーの中で、現実にこだわった兵装にこだわる必要はない。むしろ押し寄せる敵機を猛攻をかわしつつ撃墜し、防衛ラインをかいくぐってターゲットを攻撃するというこのゲームで、現実の兵装にこだわるほうがよほどゲーム性を阻害すると言えるのです。
それでも、リアリティがまったく損なわれているかといえば、それは決してそんなことはありません。ミサイルの射程〜ロックオンできる距離〜や、ミサイルそのものの攻撃力は、その自機の性質(開発時期、現実の用途)などによって詳細に決められていますし、自機それ自体の性能〜速度、上昇性能、運動能力、安定性、防御力など〜も、ミサイルのように現実の実機の性能に則して決められています。それは非常に細やかに、そして確実にゲームに反映され、与えられたミッションとその時点で選択可能な自機(シナリオを経るにしたがって増える)ともにらみ合わせ、最適な機種を選び出す楽しさ、選んだ機種に則した戦法を考える楽しさに直結します。
ごっこ、ゲーム自体が現実をある程度模して、意識して行われるものである以上、ある程度現実に即していることが要求されますが、この点このゲームは、十分以上にこの要求を満たしていると思われます。
ゲームは、楽しさを感じるのに充分なリアリティがあれば、シミュレーターのように必ずしも現実に限りなく近づくことを目指す必要はない。楽しみを阻害するリアリティと楽しさを増進するリアリティをきちんと見分け、取捨をきちんとする。前述したナムコお家芸・ごっこ遊びの神髄もおそらくはここにあります。
そこそこ高性能な武器を携え、一長一短はあるものの美しく描かれた戦闘機を駆り、群がるテロリスト軍の敵機を撃墜し、基地を爆撃し、勝利を目指す。このシチュエーションは、自分がかの漫画「エリア88」の敏腕パイロットになったかのような錯覚を与えます。さらに突き詰めれば一騎当千の猛者〜三国志の張翼徳や趙子龍〜に通ずるものがあり、砕いていえばアニメやヒーロー物の主人公になぞらえることもできます。
現実を精密に取りあつかったフライトシミュレーションゲームとしては恐らく駄作。フライトシミュレーションを模した3Dポリゴンシューティングゲームとしては恐らく空前の良作。どちらに評価するかはやった本人にしかわかりません。ですが、ことこのゲームに関して、重箱の角をつつくように設定の不備を指摘するより、与えられる極上の楽しさを指摘すべきではとの意図から、あえて高得点を付しました。
まだまだ中古相場が高いこのゲーム。買った人が手放さないタイプのゲームらしく、新品とほとんどかわらない価格で流通しています。ですが、ぜひやってみてください。初心者でも操作に慣れさえすればただそれだけで、最高品質の楽しさを確実に提供してくれますよ。
Ace Combat2
1997 Namco / Play Station
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