神子の魅力?

 

 

 

 その日、藤姫は悩んでいた。

 原因の元は龍神の神子たる宮本あかね。

 最初見た時は短い髪に、明らかに嫁入り前だというのに、生足を惜しげもなくさらすその姿に唖然としたものだった。

 幸い、顔には出ていなかったようだが…。

 加えて女子とは思えない突飛な思考に行動といい…。

 橘の少将を初め、皆もそれなりに唖然としていたはずなのである。

 それだというのに、今や神子は皆に慕われているのである。

 女官から聞く噂話では、いつも「○○様もあの神子様の事がお好きでいらっしゃるようです」で、最初はあれこれと理由を付けて神子のお供を嫌がっていたのに今では皆が皆、そろいに揃って朝のお出迎えである。

「これは何かあるに違いありませんわ…」

 自分にはないような何かが彼女には備わっている。

 これは後学の為にも学んでおいた方が良いだろう。

 殿方を引きつける事も、重要な力の1つなのだから…。

 

 

 …で。

 朝一番にお出迎えに来たのは、もちろん生真面目で時間にもきっちろとしている頼久である。

 そのマジメさ故に女には興味を示さない、いわいる朴念仁と思われていた頼久も、今では神子の存在は気になるものらしい。

『頼久に直接聞くのもいいかも…』

 彼ならば、マジメに答えてくれるだろう。

 そう思った藤姫は、早速頼久にアタックをしてみた。

「藤姫、おはようございます」

「頼久殿、今朝も早いのですね」

「はい、これも主の為ですから」

 予想通りのマジメな回答である。

「頼久殿、聞きたい事があるのですが」

「はい、私に答えられる事でしたらなんなりと」

「頼久殿は神子殿のどこに惹かれたのですか?」

「はっ?神子殿の…ですか?」

「そうです」

 頼久らしくない、明らかに狼狽した様子。心なしか顔も赤い。

 頼久のこういう様子は、実はとても珍しかったりする事を、藤姫は知っていた。

『鷹通に聞くべきでしたか…』

 こうなってしまっては聞き出す事はまずできないだろう。

 人選を間違ったかと思った矢先…

「これこれ、藤姫。頼久が困っているではないか」

 友雅がゆらゆらと現れた。

「橘の少将、今日はお早いのですね」

 ちなみに友雅はいつも最後に現れる天真の前。つまりは最下位から2番目である。

 それが今日に限ってはトップから2番目。

「ああ、早く来ないと神子が先に言ってしまうからね。頼久も相変わらず早い」

「橘殿、確か今日は重要な…」

「それはいいんだ。どうせ意味のない事ばかり話してるんだし…」

 ちなみに友雅も神子に気があると噂されている一人である。

 重要な用事を蹴ってまで来たのだから、かなり本気なのだろう。

「…少将殿…」

「まぁまぁ、藤姫、そう怖い顔をしちゃいけないよ」

「…少将がいけないんです」

「まぁまぁ…で、藤姫は「神子殿の魅力」を聞きたいんだね?」

 聞こえていたのか、それとも隠れて盗み聞きでもしていたのか。

 ストレートに会話に入ってくる友雅。

「ええ、そうです」

「そうだね…彼女の魅力といえば…。なんだろな」

「…少将殿も分かりませんか?」

「いや、具体的に言葉にしにくいんだ…」

「言葉にしにくい?」

「なんとなくあの空気がいい…と言うべきなのだろうが、それでは答えになっていないだろう」

「…空気…ですか?」

「藤姫の周りにも、ああいう女官はいないだろうからね」

「それは橘殿にも言える事なのではありませぬか?」

「はははっ!確かに。だからなのかもね」

「私も神子殿は突飛な方でいらっしゃるなと思いました」

「でも、いなかったからでは単なる「興味」で終わってしまうから、答えにはなっていない」

「…」

「…なるほど、そういう事ですね」

「…」

「…まぁ、人が人に惹かれるなんてそんな物だよ、藤姫」

「そういうものなのですか…」

「藤姫は神子殿のどこに惹かれたのだい?」

「私…ですか?」

「そう、私達と同じ様に藤姫も神子殿に惹かれているようだからね」

「…確かに尊敬できる方だとは思っています。明るいですし、私にもいつも優しくして下さいますし…」

「まぁ、そっから先は自分で探す事だよ。藤姫」

「…」

「あっ、そろそろ神子殿が来たようだね」

「あらっ!」

 廊下を歩く神子の姿を見つけるなり走っていく藤姫。

 その姿をそっと見守る友雅と頼久。

「…ところで頼久」

「はい」

「…君は神子殿のどこに惹かれたのだい?」

「っっ!その話しはさっき…」

「それはそれだ、まっ、答えられない内は、まだ私の方に勝利がある…という事かな?」

「橘殿っ!」

「まぁまぁ、さぁっ、私達もそろそろ行くくよ」

「…」

 歩き出した友雅の後を追う頼久。

 こうして、また一日が始まろうとしていたのだった…。

 

 

 

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あとがき

サイト2周年記念のアンケートに書かれていた内容を元にしています。

リクエスト内容は「神子抜きでの彼等のやりとり」です。

本当は8葉全員に藤姫が聞いて廻るという予定だったのですが、

すみません、とりあえず頼久書いていたら友雅さんが乱入してきて、そのまんま終わりました。

なんかリクエストに答えられているのかな〜などと思いつつ、逃げますっ!(おいおいっっ!)

ちなみに友雅の言う藤姫が惹かれているというのは、一人の人間としてですっ!

恋とかそういうものではありませんので誤解のないように…(^、^;)

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