桜花狂華
月華の光
浮き出る薄紅
散る桜
甘やかな血肉を喰む女がいる
泣いているのは悲しみから
涙を浮かべるは喜びから
ただひたすらに甘美なる液体を飲み肉を噛みくだく
己の背後に降り立つ白銀の髪をもつ雄々しき者に目もくれずに
「男を愛したのか」
静かに問う
「男を殺したのか」
問いに答えることはない
「愛した男を喰ったのか」
答えるのは散る桜に染まる紅い水
「愚かだな」
見守るは月
「けれど愛した者を喰らうは鬼の性か」
鬼は愛した者を己にとりこむ事で相手のすべてを己のものにする
たとえば元は人間の女子であったとしても
鬼になったら人を喰う
愛した者の肉なら なおさら欲する
そして すべてを
なくし
失くし
亡くし
桜の下
一人の女性が白銀の妖怪の見守る中
鬼になる