terrystorch.gif (15653幽霊狩りの夜−3

『Ghost Hunt Night Walk−2b 』
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アリス@PACHIさん

SKYFISHは黒妖犬ショーンの姿を見て、この涼しいのにずいぶん汗をかいたようである。

彼女の『ツアー』にアリスみたいな娘が引き寄せられてしまうのも、さらにそれがショーンみたいなやつを呼び寄せてしまうのも重々承知のはずなのに、今夜のSKYFISHはやけに焦っているようだ。どうやら彼女主催のちょっとヤバめの“スペシャル・ツアー”はアリスの予想以上に混乱しているらしい。本人はあくまでシラを切っているがアリスにはバレバレだ。

騒動を見るのが楽しみでやってきたアリスだが、彼女のツアーにちょっかい出すつもりはハナからないので、少し歩みをゆるめて自主的に行列の一番後ろにつくことにした。

それにこのほうが、好奇心いっぱいの竜酸にも面白いものを見せてやれる。

せっかく「幽霊狩り」に来たのだ。幽霊を見ないで何を見るというのだ。

修道院から再びセヴァーン河へ取って返し、イングリッシュ・ブリッジにさしかかると、ナイト・ツアーのガイド、ダリルは足を止めてまた怪談を語り始めた。

今度は12世紀の魔女狩りにまつわる悲劇だ。

魔女裁判から逃れたものの、街には入れてもらえず町民からは石を投げられ、迫り来る追っ手に絶望して、この橋から河へと身を投げた哀れな美しい娘……。

そのクライマックスに合わせて、細い悲鳴とともにザバーンと派手な水音が、真っ暗なセヴァーン河に響き渡る。

客たちは驚いて橋の手すりに駆け寄り、暗い水面をのぞきこんだが、もちろん誰かが水に落ちたような気配はない。遠い街灯をチラチラと反射させながら流れる河をバックに、ダリルの低い声が場をしめくくる。

「……こうして、彼女は死にました。でも、今も、彼女は自分の無実を訴えて、さっきのように水に飛び込んでみせるのです……こんな風に、人々が集まる夜には」

他愛のないイベントの一幕である。

ざわざわと笑い声を闇に響かせながら、ツアーの客たちはダリルに率いられて移動をはじめた。

だが、もっと鋭い客たち……SKYFISHのグループの面々は「それ」を見逃さなかった。前のほうで青猫が首をのばして河を眺めている。アリスも一瞬だったが小さな光がすべっていくのを見た。

しかし、それはアリスにもちょっと見なれないものだった。

「なにかしら? ショーン、わかった?」

「どうせお決まりの“演出”だろ? それか、いつものあの女か……」

ショーンがのんびりした調子で言った瞬間、あたりにすうっと不自然に冷たい風が吹いた。

「私じゃないわよ。ホント、ショーン、あんたって黒妖犬のくせに鈍感ね」

振り向くと橋の反対側の手すりに、金髪の色っぽい女が全身ぐっしょりと水に濡れた姿で腰掛けていた………。

竜酸さん

ダリルの会談話のクライマックスに合わせたかのような

ザバーンという効果音に竜酸は

「うわぁぁぁ  ビックリしたぁ〜 寿命が10年縮まりましたよ」

どうやら、真剣に驚いたようである。

そして、当たりを見回すとアリスの見た色っぽい金髪の女を竜酸は見た。

おもわず、アリスに聞いてみた。

「あの女の人、なんで飛び込んだりしたんでしょうかねぇ?

 何かあったのかなぁ?」

竜酸は心配そうだ。
アリス@PACHIさん

「あの女の人、なんで飛び込んだりしたんでしょうかねぇ?

 何かあったのかなぁ?」

 

竜酸の無邪気で善良な質問は、アリスにはもちろんショーンにも当のびしょ濡れの女にも聞こえた。3人は5秒間ほど固まったのち、同時にどっと笑い出した。

ショーンが腹をかかえながら竜酸の肩を叩いて言った。

「あっはっは! 竜酸、おまえ、今の水音、この女が飛び込んだんだと思ったのか?!」

「よ、よしなさいよ、ショーン。り、竜酸さんは本当に心配してるんだから……」

そういうアリスもクスクス笑いが止まらない。

「あ、あのね、竜酸さん。か、彼女が河に飛び込んだのは、別に今さっきのことじゃないのよ〜」

「???」

「あのなあ、竜酸。あいつは、さっきのダリルの話に出てきた“魔女と疑われて河に身投げした哀れな女”なんだよ。つまり正真正銘の幽霊さ。しかも12世紀からかれこれ800年以上もこの辺をうろついてる、筋金入りの地縛霊だ」

「?!!」

驚いて目を真ん丸くしている竜酸の人の善さに興味を持ったのか、幽霊女はふわりと橋の手すりから浮かび上がると、すうっと竜酸の目の前に漂ってきた。そして宙に浮かんだまま、にっこりと色っぽく微笑むと、ぐっしょり濡れた氷のように冷たい手で竜酸の頬をなでた。

「こんばんは、旅の方。あたしはグラディスよ……。あなたみたいにあたしが見えて、しかも親切そうな人、284年ぶりよ。……ねえ、あたしのお願い、聞いてくれない……?」

グラディスはいかにも哀れっぽい声でそう囁いたが、その間にも彼女からはぞっとするような冷気が漂ってきて、竜酸は凍りつきそうだった。

「よせよ、竜酸。河の中に引き込まれちまうぜ」

ショーンはにやにや笑いながらそう言った。

アリスも苦笑いしながら黙って見つめている……。

竜酸さん

「あのなあ、竜酸。あいつは、さっきのダリルの話に出てきた“魔女と疑われて河に身投げした哀れな女”なんだよ。つまり正真正銘の幽霊さ。しかも12世紀からかれこれ800年以上もこの辺をうろついてる、筋金入りの地縛霊だ」

ショーンに言われて、竜酸はようやく、いままでのいきさつを理解できた。

「あぁ、そうだったのかぁ〜 私の脳味噌どうも混乱しやすいみたいです〜」

竜酸は笑ってなんとかその場をごまかした。

そして、グラディスにこう言われた

「こんばんは、旅の方。あたしはグラディスよ……。あなたみたいにあたしが見えて、しかも親切そうな人、284年ぶりよ。……ねえ、あたしのお願い、聞いてくれない……?」

竜酸はとまどっている様子だ。

ショーンが言っているように、

(ひきずりこまれてこのまま戻って来られない…‥)

こんな感じがしたからだ。

(でも、幽霊とはいえども可愛そうな幽霊だ。 なんとしてでも力になってあげたい)

2つの思いが竜酸の頭の中を駆けめぐる……‥‥

「うーーーーん…‥」

1分後…‥

「内容次第によっては……‥‥」

竜酸はあいまいな言葉を返した。

そう言いながらも竜酸は(ほんとうにこれでいいのかなぁ〜?)と思った。


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