シュルーズベリ・24

『Picnic at Acton Scott-4』

竜酸さん

一向は再び出発をした。

竜酸も高くて揺れるのに慣れたらしく、余裕を持って景色を楽しむ。

(ぐぎゅるるるるるぅぅぅ〜〜〜)

「ん〜? あぁ、腹の虫が鳴いてますねぇ〜

 そういえば、お昼ご飯まで後どれくらいなのでしょうかねぇ〜」

「え〜っと…  SKYFISHさぁ〜ん お昼ご飯まであとどれくらいあるのですかぁ〜?」

竜酸は、もしお昼ご飯まで時間があるのならさっき買ったお菓子を食べようと思っていた。

【キャメロン】

琥珀の瞳を黄金にきらめかせ、アリスはうっとりと微笑んで言った。

「恋は焦ってはいけませんわ、森の狩人。大地の女神の酒を味わうにはそれなりの段取りがいりますの。まずは私をもっと楽しませて、満足させてくださいな」

そして、ふんわりと地面から浮きあがったかと思うと、パッとコマドリに身を変えて羽ばたき、SKYFISHの頭にちょんと舞い下りた。

「テニスンの詩に読まれし乙女、それがそなたの望みとは!命も領地も投げうって、そなたの愛と好意を求める騎士に、欲するものは密やかな愉悦のみ……」

キャメロンが大袈裟にため息をついた。ちらり、と、コマドリに流し目をくれて、指先でその頬を軽く撫でてやる。

「だが、望みとあらば。そなたのその白き手に、望むものはなんでも与えよう!」

歌うようにアリスに言い残す。そして、SKYFISHの手から青猫だけを抱き取ると、グリーシュに騎乗した。

【SKYFISHさん】

アリスは、SKYFISHの頭にちょんと舞い下りた。

「アリス……人の恋路を邪魔する気はないけどさ。ヘンリーの奥方みたいな目にあわされたら、どーすんの?キャメロンの正体もわからないのに」

SKYFISHは、頭の上の知己に警告した。もっとも、アリスが聞くとは思っていなかったが。

それより、SKYFISHにとって気になるのは、湖を回る遠乗りのことだ。

この辺りは、本当に伝説が多い。冗談抜きで『ブリガドーン』されちゃ、ガイドの面子が立たないのだ。あまり、のんびりもしていられないかも…と、今さらながら不安が頭をもたげて来た。

(キャメロンが、アリスだけにかまっててくれると、こっちとしてはありがたいんだけど……)

*ガイド蛇足

『命も領地も投げうって………望むものはなんでも与えよう!』

ヘンリー8世が詩を書いたとされる、節回しだけは有名な『グリーンスリーブス(Greensleeves)』より。

ちなみに、『テニスンの詩に読まれし乙女』は、シャロットの乙女(アーサー王伝説に出てくる魔女)のこと。

『ブリガドーン』

バレエで有名な、スコットランドの伝説。霧の向こうにある伝説の国『ブリガドーン』に、二人の青年が迷いこんで、恋に落ちたり現世に帰って来れなくなったりするハナシ。そう言えば、ミュージカルにもなっていたっけ。

PACHIさん

「だが、望みとあらば。そなたのその白き手に、望むものはなんでも与えよう!」

キャメロンは大袈裟なセリフを吐いてアリスの頬をひと撫ぜすると、馬上の人となった。

(ずいぶんと芝居がかったじいさんね〜〜)

うっとりを通り越してちょっと鳥肌が立ったアリスはひとり苦笑した。

「アリス……人の恋路を邪魔する気はないけどさ。ヘンリーの奥方みたいな目にあわされたら、どーすんの?キャメロンの正体もわからないのに」

SKYFISHがなにやら警告めいたことを言ってくる。

 

「確かにあのおじいさんは妻6人じゃすんでなさそうよね〜、どう考えても。でも、女を取り替えては首を取るようなシュミのひととは思えないけど……“あなたの”アースキンみたいに闇の気バリバリってわけでもないし。

 恋をするかどうか決めるのは、もうちょっと正体見極めてからだわね。

 あなたも今日はちゃんと自分のお客さんは自分で守ってよ?」

アリスはSKYFISHの髪をくちばしでつんと引っ張った。