シュルーズベリ・24

『Picnic at Acton Scott-8』

【SKYFISHさん】

さぁて、出発……アリスはコマドリに戻って、竜酸と一緒に行くようだ。

(青猫さんは……おっ、来た来た♪)

青猫を鞍の上に抱き上げて(心なしか「重い」ような気が)待っていると、サムが小悪魔ジョアンを連れてやって来た。

「じゃあ、お願いねSKYFISH。分ってるでしょうけど、桟橋では気を付けて。スティーブン、あなたもよ」

サムが妹を連れて来たことに気付いたスティーブンは、非難の目をSKYFISHに向ける。が、文句を言わないだけの分別はあったらしい。渋々ながら、サムの言葉に「は〜い」と気のない返事。

「分ってます、マダム。おいで、ジョアン、猫さんと一緒に行こうね〜♪」

ここで青猫に逃げられてはかなわないので、「しっかり」抱きしめておいて、なおかつ「脅迫」することにする。

「青猫さん、お菓子全部預かってますからね……逃げ出そうなんて思わないで〜〜(^_^;)」

綺麗な猫を見つけたジョアンが、早速ぎゅうぅううう〜〜っと青猫を抱きしめた。

「ジョアン〜、あんまりぎゅうっとしちゃだめだからね〜。いや、言っても君には分からないと思うけど」

半分、青猫に言い訳するように、ジョアンを引き剥がす。と、言っても、小悪魔は青猫のしっぽを引っ掴んでいたから、あまり良い救出方法とは言えなかったが……。

(ま、どちらにしても、同じ鞍の上だしねf(^_^;;))。

青猫さん

『ああ、おなかいっぱい…』

幸せを噛み締めながらガイド・SKYFISHのところに行くと、鞍に乗せてくれた。

『寝ちゃおうかなぁ…』

などと考えている猫は、魔の手がすぐそこまで迫っていることに気付いていない。

>「分ってます、マダム。おいで、ジョアン、猫さんと一緒に行こうね〜♪」

なんだか嫌な予感がしてちらりと目をあけると、農場の人が小さな子供をつれてきたところだった。逃げ出そうとする猫を押さえ、SKYFISHが悪魔のように囁く。

>「青猫さん、お菓子全部預かってますからね……逃げ出そうなんて思わないで〜〜(^_^;)」

一瞬の躊躇が命取り(笑)。女の子が、ぎゅ〜〜〜〜〜むと音がしそうなくらい、しっかりと猫を抱き締めた。プレスされているようだ。

『は、はなせぇぇぇっ、このクソガキッ!!!ぐ、ぐるじ〜〜〜〜』

こういうとき、人語を話せない状況はつらい。ふみゃお、ふみゃおと鳴いていると

>「ジョアン〜、あんまりぎゅうっとしちゃだめだからね〜。いや、言っても君には分からないと思うけど」

SKYFISHがそう言いながら引き剥がしてくれたが、しっぽはまだ悪魔の手の中にあった。

『いってぇぇぇぇぇっ!しっぽ、しっぽ掴んでる!はなせぇぇぇぇっ!』

この状況で人語をわめかなかったのは、猫にしては驚異的な自制心といえよう。

しかし、次の奇跡の保証はない。

【キャメロン】

SKYFISHが「小悪魔」だの「人間以前」だのと呼んでいる幼女にかまけている隙に、キャメロンはさっさと馬を進めてしまう。工房を通り、博物館を過ぎると、もう森は目の前だ。

周りの木々に挨拶しながら、今は馬に戻っているグリーシュに、小声で説教を始める。

「グリーシュ、森歩きは久し振りだろう?お前は水辺に居過ぎるから、森のやんちゃ者に誑られるんじゃ」

アハ=イシカは海馬なので、当然住まいはハイランドの海辺である。陸に上がることの方が珍しいのだが、キャメロンの言葉に文句も言わず、えらく神妙に聞いている。

「まあ、《ガイド》の客に手を出さなかっただけの分別はあったようだが?」

『……あの娘は食べても良いって、《彼》が言った』

「この姿の時にはしゃべっちゃいかん。坊やがまた怒鳴り込んで来るだろうが」

SKYFISHが怒るぐらい、気にもかけていない割には殊勝なことを言う。もっとも、今の台詞がSKYFISHにも『あの娘』にも、とっくに聞こえているだろうことは、承知しているようだったが。

森を少し進んだところで、後続に注意する。

「遅れずについておいで。この森は深いからな、迷子になったら抜けられんよ」

森の中では、キャメロンのキルト姿は、妙に違和感がない。腰に剣を下げていないのが、不思議に感じられるくらいだ。どうやら、彼の『領域』に入ったらしい。ここでは、何が起きても不思議ではないし、誰があらわれてもおかしくないだろう……。

アリス@PACHIさん

竜酸の頭の上にちょこんと乗っかって、とんだ「災難」に遭っている青猫の様子を楽しそうに眺めながら、アリスはのんきに歌い続けていた。

ふと、キャメロンと妖馬の会話が耳に入って来る。小声だろうと精霊語だろうとアリスの地獄耳には筒抜けだ。むろんSKYFISHもそうだろう。

『……あの娘は食べても良いって、《彼》が言った』

身のほど知らずのバカ馬が何か言っている。

“あの娘”って私のことかしら? ――そうよね、ほかにその代名詞に当てはまるひとはいないし……ようこっこは《ガイド》の客だもの……。

まあ、あいつ、生意気に私を食べるつもりだったの。「時の猫」並みの胃袋ならともかく、私を食べきれるとでも思ったのかしら。

それにしても、キャメロンは《あいつ》のことも知っているのかしら。

森のひとなら森の精霊は同胞みたいなものなのでしょうけど――。

 

森は不思議。

森は神秘的。

そして魅惑的。

 

この森は誘いをかけてくる気かしら。

竜酸さん

アリスはひとっ飛び羽ばたいて竜酸の頭の上に舞い下り、くすくす笑ってからかった。

「竜酸さん、体格のわりにいっぱい食べたのね。あんまり重たくなると“りうさん”がびっくりするかもよ? 湖の桟橋で沈んじゃうかも♪」

 いきなり、コマドリが頭の上にとまるのに、若干びっくりしながらも、

「んぅ〜 そんなに食べたのですかねぇ〜〜  いつも、これぐらい普通だと思っていたのですけど…

 あ、でも『りうさん』も微妙な変化には気付いてないみたいだし、

まぁ、多分、大丈夫でしょぉ〜♪」

いつもながら何も考えてないのか、のんびりとした口調でアリスと話していた。

 

「あ、青猫さん…  あんなに楽しそうに子供と戯れ…てないようですね。

 うぅ… 青猫さぁ〜ん 大丈夫ですかぁ〜?」

『災難』に遭っている青猫の様子を楽しそうに眺めているアリスとは逆に、竜酸は少し心配そうに見つめていた。

 

そうこうしている間にも、一向はすっかり森の中…

「遅れずについておいで。この森は深いからな、迷子になったら抜けられんよ」

キャメロンの注意する声が聞こえる。

「もしかして、富士の樹海みたいにコンパスもきかないとか…」

竜酸はそう思いながらも、なんとか遅れないように一向についていった。

【キャメロン】

「もしかして、富士の樹海みたいにコンパスもきかないとか…」

竜酸の不安そうな一言が、キャメロンの耳に届いた。

キャメロンは微笑すると、馬上で振り返って竜酸を見る。

「心配いらんよ、竜酸!だが、もしはぐれたらな、〈りうさん〉に好きなように行かせなさい。馬の方が道をよく知っとるから」

それから、小声でグリーシュの首を撫でながらそっと続けた。

「…そうとも。運命へ至る道筋は、どんなに枝別れして見えても、いつも1本しかないものだ」

【SKYFISHさん】

『いってぇぇぇぇぇっ!しっぽ、しっぽ掴んでる!はなせぇぇぇぇっ!』

「あ、ごめん、青猫さん…f(^_^;)。ジョアン…えぇと、しっぽ掴んじゃダメ」

一応、ジョアンに注意はするものの、彼女はSKYFISHを無視して、またもや青猫を抱き締める。SKYFISHがそれをやんわり引き離す。

「ジョアン、だ〜めっ。悪い子は置いてくぞ」

「ねこ、かわいいのね。SKYFISHも、ねこすきでしょ?」

「はいはいもちろん」

SKYFISHは少しばかり考え込んだ。

ジョアンを一人で前に座らせると、馬にちょっかい出すので危ないし、と言って今みたいに膝の上じゃ、青猫が避難する場所もない。

「ジョアン、君、ちょっとこっちに来なさい」

結論が出たようだ。

ジョアンを鞍の前に座らせておいて、青猫を自分の膝に乗せることにした。手綱を片手で持って、空いた方の手はジョアンを支えている。

「ジョアン、ひとりで乗れるよね?平気だね?」

「ひとりでへいき!」

早晩飽きるだろうが、当面は大丈夫(青猫も)だろう。

ふと気付くと、ひんやりとした森の空気に包まれている。

キャメロンの「お説教」は、SKYFISHの耳にも届いていたが、最後尾についているので、反論もできない。

(嫌なじじぃだな〜……奴のこと知ってるみたいだけど、眷属じゃあるまいな……)

森の空気が、秘密めいて旅人たちを包み込んでいる。

SKYFISHは、ぞくりと冷たいものを背筋に感じた。

(まさかね!それなら、ぜったい『わかる』からな〜)

それでも、不安は拭えない。そっとコマドリ・アリスの様子を伺うが、彼女も神妙な表情をしている。

SKYFISHは、そっと独り言を囁いた。彼女には聞こえるだろう……。

「《領域》に入ったみたいだな…ここじゃ、大地の娘も誑られるよ。なにしろ、土も水も、緑と一緒になってるからね…」

青猫さん

キョーフの子供から解放され、猫は思わずガイドの膝の上で、胸にしがみつく。しっぽは、体に巻き付けるようにちゃんとぴったりと引き寄せる。

灰色のびろうどのような毛並みの猫に、体の前にはりつかれているガイドは暑いだろうが、耳が寝てしまっている猫には、そんなことを思い遣るゆとりはなかった。

竜酸さん

「心配いらんよ、竜酸!だが、もしはぐれたらな、〈りうさん〉に好きなように行かせなさい。馬の方が道をよく知っとるから」

「は〜い わかりましたぁ〜♪ うん。 それならば安心。 『りうさん』、よろしくたのみますよ〜」

まるでもう迷子になったかのごとく『りうさん』に話かけていた。

 

「あ、では、そろそろ買ってきたお菓子を食べますか。」

そう言って、右側のバッグよりさっき買ってきたチョコバーを取り出し、包み紙を開ける…

「!!!!」

竜酸はチョコバーの変わり果てた姿に驚いた。

「はぅ! 溶けてる〜〜」

こんな暑い日にずっと袋の中に入ってたのでチョコバーは溶けていたのだ。

「ん〜 このまま捨てるのはもったいないので、食べちゃいます」

竜酸は仕方なく、生暖かく溶けたチョコバーを食べた。

「んぅ…  手がベタベタするぅ〜

 SKYFISHさぁ〜ん  どっか手を洗える場所、ありませんかぁ〜?」

ラエリナ@真鳥Xさん

「サー・ガウェイン、感謝します」

曙光に目を覚まされた時、私はそう呟いた。そのことを、妙に鮮明に覚えている。

きっと寝ぼけていたのだろう。常識的判断にすがりつこうとする私に、旅仲間は無情にもこう告げる。あの時以上に覚醒したあなたを見たことはない、と。

裏を返せば普段が普段だということだが、或いは、その通りなのかも知れない。それが誰の意識であったにせよ。

 

大地に突き立てられた一振りの斧。

旅行というささやかな非日常から、全くの悪夢の世界へと私を叩き込んだ闖入者は、それから視線をやや上方にあげたところに立っていた。

緑色の甲冑に身を包んで。

騎士の話すウェールズ語は古めかしく、現代ウェールズ語すら怪しい私に理解できるはずもなかったが、彼が「サー・ガウェインと緑の騎士」の再演を望んでいることは解った。解らないことはただ一つ、何故私をガウェイン卿の代役に指名したか、である。卿に成り代わって抗議したかったが、情けない事に声が出ない。それ以上に逃亡したかったが、下半身も目下臨時ストライキに突入している。国もとのメトロをどうこう言えない。

斧が、月光を反射して怪しくきらめいた。こんな状況でなければ美しいとさえ言えるひかり。それが、私の最後の理性をも断ち切ってしまったらしい。導かれるようにして斧に手を伸ばし、それを支えに立ち上がる。

それを高々と振り上げた時にも、重さをまったく感じなかった。

斧は再び大地にその刃を食い込ませ、騎士は転がった首を元の位置に戻した。これがモンティ・パイソンの新作なら、テリー・ギリアムの手腕に喝采を送りたくなるような出来だ。

でも今、それを信じるのは催眠術で高層アパートが建つのを信じるくらい難しかった。

私は機械的に首を斬首台に乗せ、次の瞬間を待った。

そのとき、空気が揺らいだ。風が吹いたわけではない。その場を長らく支配していた、不可視の何かが変化したとしか、私には言えない(SKYFISH氏はそれを、「我々の存在が《領域》に干渉した」と表現した。どういう事なのかは、今もって正確に解らない)。

私の口から、未知の言葉が溢れ出していた。それは古代の祈り。或いは、鬨の声であったかもしれない。王の帰還を意味する言葉だと、私は何故か感じた。同時に、狂気じみたアイデアが頭の中を支配していった・・・

この祈りを捧げられた対象と、ガウェイン卿はどこかで繋がっている。卿は夜明けから正午に掛けての3時間、膂力が3倍になった。1日を1年に見立てれば、これは立夏から夏至に当たる。今夜は夏至前夜。旧き火の神の力が極大に達するとき!

私が意識を喪う寸前に見たものは・・・銀色に輝く刃を退ける、黄金のひかり。

 

21日、朝。私を発見した人たちの中で、一番最初に私と目が合ったのは、猫と少女だった(猫・・・エジプトのバステト神って元来太陽の女神だっけ・・・?)。

半分寝ぼけた頭で、ぼんやりとそう考える。猫はまるで挨拶するかのように一声鳴くと、さも当たり前のように少女の膝の上に収まった。少女が身に纏う不思議な空気に気づいたとき、私は思い出した。

古代の人々にとって、大地の深奥こそ、太陽の帰還する王国であったことを。

【SKYFISHさん】

「あの〜、青猫さん…お気持ちはわかりますが、すっごく暑いんです…あぁ、聞いてないですね…f(^_^;)」

SKYFISHは青猫をさりげなく引き剥がそうと苦心している。寒いのはともかく、暑いのは苦手なのだ。だが、揺れる馬上、おまけに、目の前の子供から目と手を離せないとあって、結局は失敗に終わる。

SKYFISHはため息をついて、しばらくはこのままで行こう、と考えたようだ。青猫だって暑くなれば、離れるだろう。

>「SKYFISHさぁ〜ん、どっか手を洗える場所、ありませんかぁ〜?」

竜酸の声が前方から聞こえてくる。これには、キャメロンが答を返した。

「しばらく我慢するんだな、竜酸。じきに水辺だ、手でも顔でも、好きに洗えば良いよ」

その言葉が終わった瞬間、空気が揺らいだ。奇妙な様子に、グリーシュが低く嘶く。キャメロンは、不思議な微笑を浮かべていた。「新客」の到来を知っていたかのように…。

SKYFISHにしがみついていた青猫も、一瞬「悪魔」のことを忘れたのか、顔を上げた。

「SKYFISH〜」

しかし、誰よりも早くそれを見つけたのは、鞍の上の「悪魔」だった。

「あのひとおちてるよ?」

SKYFISHは、青猫を抱いたまま、素早く馬から降りた。

「ジョアン。あれは、普通《落ちてる》でなくて、《倒れてる》っていうんだよ。あ、鞍から手を離しちゃダメだからねっ」

(誰だろう?ツアー客じゃないよなぁ……『ツアー』客かな??)f(^_^;)

アリス@PACHIさん

>「《領域》に入ったみたいだな…ここじゃ、大地の娘も誑られるよ。なにしろ、土も水も、緑と一緒になってるからね…」

 

SKYFISHが珍しく不安をあらわにつぶやいている。

アリスは竜酸の頭の上でふっと歌いやめ、空気の匂いをかいだ。

異世界のにおいがするわ――。

ゆうべの『合』の影響がまだ強く残ってる今日、森に入れば、どんな世界と通廊がつながってもおかしくはない。

こちらからあちらへ行けるのと同じように、あちらからもこちらへやって来るのは普段よりも数倍たやすいことだろう。

 

前方の空気が揺らいだ。

だれかが落ちてくる―――。

竜酸さん

「あのひとおちてるよ?」

ジョアンの声は竜酸の耳にも届いた。

「!?  落ちてる?

 あぁ、確かに落ちて… いやいや。 倒れてますねぇ〜」

ちょっと様子を…と言わんばかりに、竜酸も倒れている人に近づき、馬から下りて少し声をかけてみた。

「あの〜 もしも〜し。 そんな所で寝ていたら体に毒ですよ〜」

青猫さん

悪魔はまだ鞍の上。

猫は解放された嬉しさで、思わず「うるるにゃん」と言いながら、SKYFISHの腕から降りた。

〈落ちている〉…もとい、〈倒れている〉人間らしきもののそばに行って、くんくん、ふんふん。

『ちぇ…ただの〈ツーリスト〉じゃん、食えねぇや』

また美味しい魔物が食べられるのかと期待した猫は、少々がっかりして髭を落とし、どうする?というようにSKYFISHを見上げ、

「うるにゃ〜お?」

と鳴いた。心の中では、

『ああ、不便だ』

と人語を話せない状況を嘆いている。