青硝子
5年たって。
アンジェリークは女王の風格とその優しい気質を全面に出したような美しさを持つようになっていた。
でもその美しさは―――女王としてのものだけではなかったけれど―――。
「アンジェ・・・」
夜毎に。
月夜がさんさんと輝いているのはなぜか。
ここのところずっと雨が降っていないのに、星たちがみな水に飢えずにいられるのは何故か。
愛にあふれた星で宇宙がうめつくされているのは何故なのか。
答えは簡単だった。
「アンジェ・・・」
女王に、愛が溢れているから―――
愛し、愛されているから―――――
たとえ。
たとえ、その恋が許されないものでも。
この聖地に、彼等をとがめようとするものはだれ一人としていなかった。
アンジェリークの涙を、見たくはなかったから。
「アンジェ・・・」
繰り返す。名前を呼びあう。体を重ねて。
忍び込んでくる快楽とか、気持ちとか。
愛しいだとか。
すべてひっくるめたら、「ゼフェル」に。「アンジェ」に。
この世で一番素敵な名前に変わってしまう。言葉はいらない。
「ゼフェル・・・」
朝がやってくる。お別れの朝が。でも朝が来るからには夜もやってくる。でも夜は短いのだ。眠らなくてはならない。
「アンジェ・・・」
夜毎に聞こえる囁き声がアンジェリークを癒してくれる。そして相手も癒してしまうのだ。
二人が公に愛しあうことなど、これから先ないかもしれない。
でも、どちらかのサクリアが切れた時。
その時が。
お別れではない。決して。
賭けてみる。
青い硝子に。このちっぽけな星に。
二人の運命を分かつかどうかを賭けるのだ。
運命があるならば、二人はおそらく同時にサクリアが切れるだろうから。
その日まで。
毎夜。
囁く声は跡絶えることはない。
青硝子が二人を分かつことがないように。
祈りをこめて、囁こう。
この世で一番愛しい名前を―――――
FIN.
あとがき