JAZZ 44

 

すごい音が頭の中でしたかと思ったら、今度はばたん、と音がした。

ゼフェルがアンジェリークを押し倒した音だ。

 

何にしても。

ゼフェルはアンジェリークが好きで。

その気持ちを伝えるには、まさしく「からだ」しかなく。その上ゼフェルが言葉が苦手だ。

 

だからよかったのかもしれない。ちょっとめんどうなこともあるかもしれない。でも口ベタな彼と、耳のきこえない彼女。

事故があって、お互いそのことを忘れたわけじゃない。だけどお互いが必要としている関係。

 

「大好き」

アンジェリークが言う度に、その体にキスマークがついていく。

朝から熱い。

 

でも、ゼフェルはアンジェリークを抱きながら同時に切なさも込み上げてきた。

こんなにも愛しいのに、それが伝わっていない気がする。アンジェリークが自分を好きだということはわかった。彼女は好きでもない男に体を許すようなオンナではないはずなのだ。

だけど、どれくらい自分が彼女のことを好きでいるかわかっていない。彼女がどれだけ自分を好きでいてくれるのかわからないのだ。

ああ、好きだ

自分の声がこだまして、頭がくらくらするくらいに。

いつか。

証明してやらなくてはならない。

証明してもらわなければならない。

そのいつか、がいつでもかまわない。泣き叫ばれても、ゼフェルはもう二度とアンジェリークを手放すことなんてできないのだ。

今でさえ、1秒だって離れていたくない。服さえもじゃまなくらい。

「好きだ」

 

ゼフェルは言うことができる。相手には聞こえないのに。

でも彼は知らない。

アンジェリークには奇蹟がおこるのだと。

アンジェリークはゼフェルの声だけは敏感に聞き取ることができるのだと。

少しの空気のふるえだけで、わかってしまう。

「私も」

そしてまた繰り返す

「おめー、聞こえるのか!?」

驚いたような、真っ赤な顔が、間近にあって。

アンジェリークはキスをした。

「うん」

それからもっとゼフェルの顔が赤くなる。

アンジェリークはその赤い顔にちゅっと、キスをした。

 

「今日から毎日、そばにいて」

 

ゼフェルの大切なもの。

きれいに光るサックスと、

それから、アンジェリーク。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

If I heard you voice,I could answer your love by my one.

もし私があなたの声を聞けたなら

私はあなたの声に応えられるのに

But remember I am listening to what u say.

でも覚えていて

私はあなたの言うことを聞いているわ

When Say You Love Me.

あなたが私を愛してると言ったら

I will tell you how large love between us.

私はどれだけ大きな愛が二人を包んでいるか応えてあげる

But I cannot tell you how great love it is.

でも私はその愛がどれくらいすばらしいか言えないの

Darling.Sau you Love Me.

ねえ、愛してるって言って

Everything gonna be all right.Everything gonna be all right....

すべてうまくいくから

すべてはうまくいくから

この歌ができたのは、いつだっただろう。

あれからたしか1年後。二人が遠い国に行ってしまったころ。

チャーリーの元に届いたテープ付きの手紙に入っていた。

手紙には一文も書かれてなくて、変わりに。

―――親子3人、仲良くやっています―――

そう記された一つの家族の写真が入っていた―――

 

 

FIN.

 

 

あとがき