爆妄御殿17 オアシスの木さん

 

BASARAの国のアリス
<2>

2003.1.13 最終回はこちらから

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トランプの世界は、ハートの女王が全てを治めています。
アリス・那智ちゃんは、青いピアスのウサギが親衛隊長を勤めてるという、女王
様のお城をめざして森の中を進むことにしました。
(ええかげんでええねん、ええねん…)
そんな呪文をつぶやいたので、ページがパラパラとめくれてしまい、一気に最終
章へ突撃しちゃいました。女王陛下の居城に到着です。

その城壁の前で、
「ほれみい!うまいこといったやんけ。かっかっか」
那智ちゃんは得意げに笑いました。
「何が『かっかっか』や。そーゆーのはただの手抜きちゅうねん」
「んなことより女王様ーてどこにいてんねやろ。わい知らんで」
「ま、とりあえず浅葱からいこか」
「ちゅうか、なんで女王様は浅葱にウサギのカッコさせてんねん」
「そらやっぱし〜!…趣味ちゃうん?」
「悪趣味ちゃうんか?」
いつの間にかアリス1人漫才にチェシャ猫ひーちゃんが加わってました。彼は背
中に大きく『天狗』の文字が刺繍された服を着て、どうやらこれがチェシャ猫軍
団総元締めの跡取り息子(長いねー)の正装らしいです。
チェシャ猫はマジな顔で言いました。
「行くときは一緒やで」
同じくマジな顔した那智ちゃん、
「いややー1人で行って」
「なんでやねん?」
「………」
「那智、われ抜け駆けしてお宝独り占めしちゃろ思てたやろ」
まさしく図星。
「ひーちゃんのカンてすごいなー」
アリスは尊敬の眼差しとチャームポイントの八重歯&笑顔でごまかすのでした。
(バレバレやで。byひーちゃん)

女王陛下に会う作戦は“虎穴に入らずんば虎児を得ず”――ようするに無策でし
た(笑)。
パワーポーションの効果は切れかかってますが、どうにか城壁をぶち破り、
「じゃーん!熊野の星☆天狗党アリス那智ちゃん参上やで!!」
お城の庭にいざ乱入〜〜!!

聖ちゃんは庭の手入れをしてるトランプの兵士達が何やらあわててるのに気がつ
きました。
「なんということだ。国宝の仏像に油をしこむヤツがいようとは!」
「あれ?水を入れて防火用水にするとか言ってましたよね、たしか」
「命令が伝わってないんじゃないすか」
「上の方って結構ツメが甘いですよねえ。蜂也さん」
「………」
なんと驚いたことに、トランプの兵士は夜朗組の面々です。
庭園にはバラの木ではなく仏像が整然と並び、トランプの兵士達はひとつひとつ
の仏像をチェックしてるのです。女王様が庭へお出ましになるまでに、すべて滞
りなくすませなければ!と。しかし…悪趣味な庭…。
「もう時間がない。密、おまえは南の庭園を見てこい」
「はーい。南といえば盆栽と蘭の畑ですね。適当にやっときますよ」
(こらあかんわ)
庭木に登って兵士達の様子をうかがいながら、チェシャ猫ひーちゃんは思いまし
た。
(あかん、金にならんわ…この仏像)

一方我らが主人公は、夜朗組幹部と面識がない上、聖ちゃんのように細かいこと
にこだわらない性格だったため、そのまま乱入を続けておりました。
「ジャーンジャーンジャーーン!討ち入りやで〜!」
アリスのココロは赤穂浪士らしいです。都合よくアリスのバックで紙吹雪が舞っ
ておりました。
さて突撃したアリスは勢いあまって、庭に整然と並んでる仏像のひとつを銛で突
き、ガラガラ派手な音を立てて破壊してしまいました。とたんに飛び散るは、油
か水か――!?アリスはベチャベチャになってしまいます。
「がーん!せっかくええ場面やったのに」
「何がいいシーンなんですか」
独り言に返事があったのでアリスが振り返ると、知らないお兄さんが腕組みをし
てました。
「あ、わたし蜂也さんの腹心で密と言います。てゆうか、どーしてくれるんです
か、ここ」
アリスの突撃で南の庭園のランが台無しなのです。
「ここ南の庭園はわれわれの上役が趣味の園芸をやってるんですよ〜。とても怖
いお方で、バレたらあなたの命はないですよ」
が、その割に兵士・密には危機感がありませんでした。
「なんせ座右の銘が“下剋上”、女王陛下の失脚を狙ってるくらいだから。侵入
者の1人や2人、陛下や親衛隊長に内緒で片付けるくらいどうってことないんで
すよねー」
那智アリスは主張しました。
「賊ちゃうで。わいは客や」
とてもそんな姿には見えませんでした。右手の銛があやしさ爆発です。
「何がや!簡単なことや。わからないんか!」
「うふ?」
アリスは庭にしゃがみ込みました。背負い袋から取り出したセロテープで、折れ
た蘭をせっせと修復しています。散らばった花びらもたくさんくっつけました。
おかげでもとの姿とは少々(?)異なるようですが。
「おまえも手伝わんかい。お庭の管理はトランプの兵士の仕事やで」
「うふ?」
庭の手入れを無料で手伝っている自分は侵入者ではない――全身全霊で主張する
アリス。しかしこんなことでは、いつになったらウサギや女王様に会えるのでし
ょうか。
…もうすぐです。

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「ブルーブルーブルー♪僕はブルーが好きさー…ブルーを求めて旅に出るんだ♪

青いピアスのこうさぎは、ハートの女王につかえる親衛隊長です。
「空も水も僕のもの♪君のひとみも僕のもの♪女王陛下のひとみも僕のもの〜♪
あー世界中のサファイアは僕のもの〜〜」
どうやら欲しい物がたくさんあるお年頃みたいですね。
ウサギはかわいいおしりと尻尾をふりながら庭園を巡察し、やがて南の庭園にさ
しかかりました。そこでは珍しく騒動が発生していました。

「良い格好だな」
ニューフェイス登場、自称トランプの兵士の上役です。南の庭園に討ち入りでご
ざると報告を受けた彼は、己が育てたランが気になって己で駆けつけてきたので
す。もちろんトランプの兵士も大集合!スペードマークの黒い羽織に、装備はそ
ろって日本刀。
大勢に囲まれたアリス那智ちゃんのピンチに、辛子爆弾で反撃したひーちゃんで
したが、そこら中がずぶ濡れなので戦果は今ひとつです。
「燃えろ。燃えてしまえ」
彼は松明を片手にかかげ、那智ちゃんの足元に投げました。
「では、仏像に油をしこんだのは、南の大老萩原さまご自身というわけですか」
「そうよ。わたしは策士でね」
トランプのスズメバチ・蜂也とその上役が会話してる間、
「ポション…」
と、松明の火はとっくに消えてました。
「……!?」
「――ただの水やん?これ」
「ほんまや水や!ひーちゃーんの辛子爆弾てすごいなー」
「そらやっぱ消化弾やしー、てちゃうわ」
あっけにとられている仕掛人の上役は放っといて、密が言いました。
「水、ですね。誰が仏像の中身を入れ替えたんでしょうね、蜂也さん」
「密…もっと早く気づかなかったのか?」
おまえは最初からいたんだろう、と蜂也があきれるのは至極もっとも。
「え〜?だってそのままにしといても問題ないかな〜と思いまして」

(…今のうちやでアリス)
(…ひーちゃん?)
(…敵さんがもめてる最中に退散や)
(ラジャ!わいかてあの鯨には何百回もトライしてんねやで)
ハートの女王に会えないのは残念だけど、退くときは退く。無駄死にはアホやで
。捲土重来を期すことを心に決めたとき、2人の横から冷たい声がかけられまし
た。

「何こそこそ隠れてんの?」
青い瞳に青いピアス、なぜかこうさぎの姿をした親衛隊長です。
「あっあーっ、会いたかったで!浅葱っちゃ〜ん♪」
「ほんまや浅葱やん!なんやねん、そのウサギ」
さっきまでアリスは忘れてましたが、物語の序章はこのウサギを追いかけること
でした。
「これは…親衛隊長のご友人でしたか」
トランプのスズメバチと兵士達がこうさぎ(限定)に敬礼をします。
「これは…親衛隊長が賊と通じていたということになりますな」
トランプの兵士の上役が下剋上のチャンスとばかりに主張しました
(わたしが天下取りレースを制するのだ。その時は親衛隊長を部下にするのも悪
くない)
心の中でほくそ笑む南の萩原を、しかし浅葱はぜんぜん気にしてませんでした。
「おまえの考えてることはわかるよ」
ピョンと軽くはねて紀州ゲリラを振りほどくと、親衛隊長は微笑みました。
「僕は…クスッ♪賢いリーダーにつきたいもんねえ」
ウサギになっても人を小馬鹿にする態度は相変わらずです。

「そんなことよりねー!女王陛下がもうすぐ…」
親衛隊長が言いかけたとき、“その人”が登場しました。
衣ずれの音も軽やかに――
「オレを忘れちゃいないかい」
「あっ揚羽〜♪(はあと)」
青いマントを着たハートのクイーン★その人(爆)
「揚羽!揚羽!揚羽!…ちがった、今は女王陛下だね!」
こうさぎはハートの女王に駆け寄ると、さりげなく蜻蛉を追い払って女王様の肩
に抱きつきました。すっかり懐いてる様子です。
トランプの国は男女平等、男でも女王になれるのです(爆)。
(がーん!ハートの女王ておっさんやったんかいー)
(むちむちぼいーんでも期待してたん?)
(……ひーちゃん、はよ帰ろ)

そのときハートの女王が親衛隊長に命じました。
「本気になれって」
それを聞くなり、こうさぎは人間の姿になりました。
青い瞳と青いピアスはそのままですが、ウサギの毛皮が消えて群青色の軍服を身
にまとい、勲章や青い宝石をたくさん飾りつけています。左腰にサーベルを下げ
、手には銀色の鞭を持ってました。
(あ…浅葱が化けたで…!)
(ちゃう!今までが化けてたんや)
(おかーちゃーん!)
カツカツカツと軍靴を響かせて近寄ってきた親衛隊長は乾いた声で言いました。
「侵入者が何度も手を焼かすんじゃない」
本気モードに入りすぎた浅葱は、アリスとチェシャ猫を一撃で捕らえるとミノタ
ウロスの迷宮へつないでしまいました。見張りの責任者は萩原ではなくトランプ
のスズメバチです。

「ねえ揚羽。裁判と追放どっちにする?暗殺もいいけどさ」
「浅葱よ…そろそろウサギに戻っていいぞ」
「ウサギの方が仮の姿だと思うんだけどなー」
彼はずっと親衛隊長の姿でいると危険な性格になるようです。
「じゃ、裁判の準備してくるね」
とりあえずウサギが親衛隊長のまま物語は裁判へ。

検察官はたずねました。
「おまえ達はなぜ城に侵入したのか」
アリスは堂々と答えました。
「わしら客やで」
「………」
検察官は重ねてたずねました。
「では、何の目的でこの城へ来たのか」
「目的ィ?――目的ちゅうても……なんやっけ?」
チェシャ猫ひーちゃんに助けを求めようとしましたが、ひーちゃんもすっかりあ
きれた顔でアリスを眺めてます。アリスは懸命に思い出そうとしました。この城
をめざしたのは、お茶会の場で頭の薄くなった眠りネズミが教えてくれたから。
そもそもは不思議なウサギを見かけたのが始まり…せや、そのせいでミカンを落
としてもたやんけ。青いピアスのこうさぎを追いかけ冒険を続けてきた、その遠
大な距離!(実際にはページをずいぶん飛ばしてるけど)
アリスは旅の目的を思い出しました。
「――目的は、一攫千金☆やで!」
検察官は、
「………」
沈黙しました。
(那智ちゃん!アホたれ。われ危険人物や言うてんのと一緒やで)
ひーちゃんの言葉にアリス那智ちゃんもはっとしました。
「ちゃうちゃう…そーゆーのとちゃうねん…えーと」
検察官をはじめ広間に詰めるトランプの兵士達の視線が厳しくなってました。
「なんちゅうかほれ、アルバイト〜して親孝行しちゃろ思てるピカピカ勤労青少
年ちゅうかー。そこの萩原ちゅうおっさんみたく、下剋上ねろてんのとちゃうで

アリスは何気なく言ったのですが、その発言に広間が騒然としました。
「萩原殿…まさか…本気でそのようなことを!?」
「なんという…なんというふざけたまねを!」
「おい…どーするんだ?オレ達」
ひーちゃんは猫の素早き技を使って、騒ぎの中退屈そうにあくびをしている親衛
隊長の側に行きました。
「…浅葱、説明せえ」
「…うん?僕は萩原の考えてることなんかお見通しだって言ったでしょ。まあ、
知らない人がこれだけいたってことだね。やんなっちゃうなあ」
「親衛隊長がええんかい、それで」
「わかった、さっさと片付けるってば。お仕事お仕事…」
親衛隊長が立ち上がったのに気づいて人々…いや、トランプ+他は静まりました

「じゃあ判決を言うよ。萩原は蓬莱山へ追放。一生そこで土木工事でもしてるん
だね」
ガーンと落ち込む南さま。
(…わたしの育てたランが…)
「女王陛下は次の公演の準備があるでしょ、もう退室していいよ」
先の検察官の存在が無視されてます。
「ああそうだった――アリスとチェシャ猫はどうしようかなあ。とりあえず萩原
の反逆を告発した手柄で新しいバイト先を紹介してあげるよ。城の経理担当なん
てどう?」
「ひーちゃん!わい勘定奉行やて♪」
「そら良かったな。おれも手伝っちゃるわ」
「ひゃひゃひゃ♪おぬしも悪やなあ〜ちゅう感じやて」
「ほな、まあ一杯」
(ツメは押さえちゃらなあかん)

ためこみ主義のひーちゃんのおかげで、どんどんお金がたまりました。親衛隊長
の趣味はサファイアだけで金銀には見向きもしなかったため、勘定奉行'sは安心
して私腹を肥やすことができました。お目当ての一攫千金を果たし、幸せな一生
をおくりましたとさ。
めでたしめでたし♪

――はらへったー…
波の音がしていました。体が少しゆらゆらしてます。
「あれ、金は?」
黄金のイルカを抱いて昼寝をしていたはずなのに、それがありません。那智ちゃ
んはふところやパンツの中を探りましたが、ひーちゃんに内緒でしまいこんだ金
銀までもが見あたりませんでした。
「…とりあえず飯やな」
那智ちゃんが周囲をよく見るとどことなく見覚えのある船の上でした。複数の人
がこちらに来るようです。
「んーと…」
「あっアリス!そんなとこに隠れてたのかい。飯炊きは新人の仕事だよ」
「ほら、茶々に言われた通りに働け。厨房はこっちだ」
「………」
「なんだいアリス?目を開けたまま居眠りかい」
「器用だな」
どうやら那智ちゃんは夢を見ていたようです。夢だということにようやく気がつ
きました。飯抜きにされて船から逃げ出したと思っていたけど、実はまだ昼ご飯
もできあがっていなかったのです。さっきまでの不思議な体験を話すと、
「――一炊の夢、というヤツだな」
BASARA版“一炊の夢”の故事はこういう物語でした(笑)
「座木さんて物知りやなあ。どおゆう意味なん?」
「それくらい調べろ。ほら、これで鍋をかき混ぜるんだ。焦がすんじゃないぞ」
座木に言われたとおり、那智ちゃんはせっせと働きました。飯抜きにされては大
変と思って、つまみ食いをいっぱいしました。(…努力の方向がずれている)
とりあえずクビにならなかったアリス那智ちゃんは、今日もどこかの海でふしぎ
な夢を見ていることでしょう〜〜(^^)

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