「再戦」 〜キリ番リクエスト・200〜



 帝国軍基地をGFの任務で出発しようとしたトーマの目の前に現れたのは傷だらけのブレードライガーだった。実のところブレードは両刃とも折れ機体はあちらこちら傷なんて可愛いものではない、それは溶けた跡、見るも無残な状態であった。
「またですか? フィーネさん」
「またなの」
 トーマはライガーから降りたフィーネへと少々呆れ気味に尋ねた。
 何故フィーネなのか?
 当事者であろうバンは帰還するや否やブレードライガーの整備に取り掛かってしまったからである。しかも子供が楽しい遊びから帰ってきた時のように嬉しそうな顔をして。
「これで何回目でしたか?」
「さぁ」
 トーマが任務の為に立ち寄った基地に傷だらけのブレードライガーがやって来る、それは数度に及ぶ。
「あの……やっぱり山岳地帯に現れると言う盗賊集団は……」
 恐る恐る尋ねてみたそれは今回のトーマのGFの任務内容。
「ええ、やっつけちゃったから後片付けお願いね」
 トーマから見れば天使の微笑みでフィーネは任務完了を告げた。
「はい!」
 任務を横取りされた事など全く頭にない様子でトーマは嬉しそうに返事を返した。

 最寄の村で盗賊集団が出て困っていると聞いたバンは正義感いっぱいでこう言った。
「俺が何とかしてやるぜ!」
 黙っていてもGFが何とかするだろうと思った人間がいたかどうかは知らない。
「頑張ってね、バン」
 その時同行者であるフィーネはいともあっさり同意したのだから。そしてその言葉に別の意味が含まれていた事などバンが気付くはずもなかった。

 さて盗賊集団の狙いで、物資はもちろんだが珍しいゾイドというのが含まれている。軍などの調べで奪われたゾイドは売り捌かれている事が判明しているのだがここでバンのブレードライガーを検証してみよう、かなり珍しいゾイドである。
 そして追従するように走るジーク、これも珍しいゾイドである。
 よって囮には十分で、山岳地帯を通る村と村を繋ぐ街道を行く彼等は正に狙ってください、と言っているようなものである。
「ねぇバン、いくら珍しいゾイドが狙われるとは言えこんな戦闘型ゾイドを狙ってくるかしら?」
「来なかったら来なかった時にまた考えるさ」
 バンはお気楽に後部座席にいるフィーネへと答えた。フィーネは内心、こう云う時のバンって楽しそうにしている様に見えると思っていた。
「フィーネの方こそちゃんとレーダーから目を離さないでくれよ」
「はーい」
 どこか呑気に答えるフィーネに不安を覚えたバン、双方あまりにも緊張感がないあたり人の事は言えないのである。
 それでも何故かきちんと仕事をこなしていて、フィーネはレーダーに映った新しいゾイドの機影をしっかりと捕らえた。
「バン、前方からゾイドが4体、後方からも2体来るわ。囲まれてる」
「了解」
 バンは操縦桿を握り直し顔を引き締めた。
「ジーク!」
「きゅい!」
 バンが呼ぶとジークはブレードライガーと合体した。
「どこからでもかかって来やがれ!」
 言いつつもバンは待つ素振りなど見せずにブレードライガーを前方へと走らせる。
「バン、後方のゾイドは?」
「後で何とかする。今は目の前の奴等を片付ける方が先だ」
 既に目視できる位置にダークホーン、その後ろにヘルディガンナーが3体。
「普通の奴ならダークホーンに威嚇されてお終いだろうけどな、こっちにそんな脅しは通用しないぜ!」
 バンはブレードを転回させダークホーンへと突っ込んで行く。ダークホーンは背中のビームガトリングガンを発射させるがブレードライガーは楽々とそれを避けてビームガトリングガンを切り裂いた。
 バンはそのまま後方にいたヘルディガンナーの背中へと着地するとロングレンジアサルトビーム砲を踏み潰し左右のヘルディガンナーへとブレードに装備されたパルスレーザーガンを撃つ。後ろ足に被弾したヘルディガンナー2体はバランスを失ってその場へと崩れ落ちた。
 盗賊団には反撃の余裕もなかった。
「フィーネ、後方のゾイドは?」
 バンは気を抜く事なく次の行動に移った。
「バン、後方からもう1体ゾイドが!」
 悲鳴のようなフィーネの声にバンもモニターを確認する。始めからいた2体の後ろにかなりのスピードで接近してくるゾイドが1体いた。
「一般人か?!」
 バンは慌てて後方へと駆け戻る。しかし後方から接近してくるゾイドのスピードは一般のゾイドの速度を遥かに超えていた。
「このゾイド……まさか!」
 予測通りだとしたら危ないのは盗賊の方だとバンは思った。
「バン、後方3体のゾイドの進行が止まったわ」
 フィーネの言葉にバンはブレードライガーのスピードを上げた。
「間に合ってくれよ」 
 バンは祈りながらどこかで無理だろうと思っていた。それはフィーネも同様だった。
 案の定祈りは届かずブレードライガーが到着した時には既に盗賊のゾイドだと思われるレブラプター2体が大破していた。
「レイヴン!」
 バンはその後ろに佇むジェノブレイカーを睨みつけた。
「ゾイドコアは破壊していない」
 悪びれた様子もなく通信回線から聞こえてきた声にバンは溜め息をついた。睨みつける気力も失せたようでブレードライガーをその場で座らせると操縦席から飛び降りた。
「おい、大丈夫か?」
 バンは真っ直ぐに大破したレブラプターへと駆け寄るとキャノピーを抉じ開けて盗賊を助け出す。外傷は見当たらない、気を失っているだけの様なのでバンはそのまま盗賊を縛り上げてしまった。
「こいつ等が気付いたらアジトの場所を教えて貰わないとな」
 ここで漸くバンは一仕事終えて一息ついた。
 その間レイヴンはジェノブレイカーの操縦席から不機嫌そうにその様子を眺めていた。それを手伝う気はなかったらしい。フィーネはと言うとそんなバンとレイヴンを交互に見て呆れていただけだった。
 そして一息ついたバンが次に気付いた事はこんな事だった。
「あれ? リーゼは一緒じゃないのか?」
 と、レイヴンに尋ねたのである。普段から漂うレイヴン冷たい雰囲気が1、2度下がったのは気のせいではないだろう。
「バンったら……」
 フィーネがブレードライガーの後部座席で溜め息をついた。
「リーゼはこいつ等のアジトへ行っている」
 その返答に不満を覚えたのはバンだった。
「1人でか?」
「スペキュラーとシャドーも一緒だ」
「でも女の子だろ!」
 レイヴンの気のない返事と内容は正義感の塊みたいなバンを怒らせるに十分だった。
「あいつがそんなにか弱いと思っているのか?!」
 レイヴンは何故自分が言われるのかと腹立たしさを感じ思わず本音を言ってしまう。それには思わずバンとフィーネも納得してしまった。
 それでもバンは納得から立ち直ると落ち着きを取り戻した。
「とりあえず俺もアジトヘ行く。レイヴン、場所は分かるのか?」
「……」
 バンが見上げたジェノブレイカーの操縦席からは無言の反応。
「レイヴン」
「行ってどうする」
 行っても無駄だとレイヴンは言う。
「どうするもこうするもないだろ。リーゼを止める。あいつ等を捕まえる」
 バンの決意も変わらないようだった。
 レイヴンは溜め息をつくとジェノブレイカーから飛び降りた。
「良いだろう、案内しよう。但し……」
 レイヴンはバンを見て、ブレードライガーを見た。
「分かった。でも、終ってからだ」
 バンはレイヴンの言わんとしている事を読みとって返事を返す。
「忘れるなよ」
 レイヴンはそれだけ言うとさっさと歩き出した。
「フィーネ、ジーク。こいつ等の事頼んだぜ!」
「は〜い、行ってらっしゃい」
 バンは盗賊をフィーネとジークに任せた。そして手を振って見送るフィーネに軽く手を振り返してレイヴンの後を追う。
 バンとレイヴンの姿を見送るとフィーネは大きく溜め息をついた。

 盗賊のアジトへ着くまで無言だったバンとレイヴンだがアジトへ着いて目にしたものに思わず双方相手の名前を呼んでいた。
「レイヴン」
「バン」
 思った事は同じらしいと結論付けた。
「リーゼだな」
「それ以外に誰がいる」
 アジトと思しき何かの施設だった建物は半壊してあちこちから煙が上がり、盗賊が倒れている。
「随分なご挨拶だな」
 リーゼの声が頭上から聞こえ、見上げると木に座って楽しそうにアジトの様子を見ていた。
「リーゼ」
「久しぶりだね、バン」
 リーゼは木から飛び降りた。
「シャドーはどうした?」
 レイヴンが強い口調で尋ねるとリーゼは盗賊の横にいるシャドーを指差した。その隣にスペキュラーもいる。
「これはリーゼがやったのか?」
「そう、手伝ってあげたんだから感謝して欲しいね。大丈夫、死傷者は出てないよ」
 無邪気に返されてバンは言葉をなくした。
「また、人を操ったのか?」
 この問いを発したのはレイヴンだった。
「見くびらないで欲しいね。僕はちょっとスペキュラーとシャドーに指示を出してアジトの中を引っ掻き回しただけ。こいつ等は驚いてスペキュラーたちを攻撃して勝手に自分達のアジトを壊したんだ」
 リーゼは膨れっ面でそっぽを向き、リーゼの話にレイヴンはホッとした。
「サンキュー、リーゼ」
 バンはリーゼに向かって手を差し出した。
「別にバンの為にやったんじゃない」
 リーゼはバンの手を少しだけ見ると照れた様にまたそっぽを向いた。バンは笑って手を引っ込める。
 レイヴンは面白くなさそうにそれを見ていた。
「じゃあ、こいつ等をふん縛ってさっさと戻ろうぜ」
 バンはレイヴンの様子に苦笑しながらレイヴンの肩を叩いて促す。今度はレイヴンも素直に手伝った。

 ブレードライガーとジェノブレイカーが対峙している。フィーネとリーゼ、ジーク、シャドー、スペキュラーが離れた位置からそれを見守っている。
「さあ、バン。そろそろ始めようか」
「こっちはいつでもOKだぜ!」
 先に動いたのはブレードライガーだった。大地を蹴って崖を駆け上りブレードの向きを変えパルスレーザーガンをジェノブレイカーへと撃ち、レイヴンはウィングスラスターを噴射させて避ける。
「やっぱりそう簡単には当たらねぇか」
「こんなものじゃないんだろ、バン!」
 レイヴンはジェノブレイカーの向きをブレードライガーへと向けるとミサイルを発射させる。バンは崖を蹴って飛び降りてそれを避けた。
 ブレードライガーはその勢いのままジェノブレイカーへと向かう。ブレードを翻しジェノブレイカーへと狙いを定めた。
 ガキィンと金属が同士の衝突音が響く。レイヴンがエクスブレイカーでブレードの付け根を捕らえブレードライガーの動きが止まる。
「くそっ!」
 バンは至近距離でショックカノンを撃った。衝撃で緩んだエクスブレイカーから逃れジェノブレイカーを蹴る事で距離を取る。
「ちっ!」
 構え直したブレードライガーに今度はジェノブレイカーがウィングスラスターを噴射させて接近する。ブレードライガーもブースターを噴射、同時にブレードを転回させた。
「バン!」
「レイヴン!」
 正面からの激突。
 ブレードはジェノブレイカーのフリーラウンドシールドに遮られた。レイヴンはアンカーをブレードライガーへと発射させる。
「しまった!」
 アンカーはブレードライガーの後ろ足を捕らえ着地の邪魔をし、ブレードライガーは体勢を崩し横転する。
「これで決まりだ!」
 レイヴンの叫びと共に荷電粒子コンバータが作動し荷電粒砲を発射させる。バンはアンカーをそのままにエネルギーシールドを展開させた。
「持ち堪えろ、ブレードライガー!」
 ブレードライガーはシールドで荷電粒子砲の直撃を免れた。
 バンはアンカーをパルスレーザーガンで撃ち切りブレードライガーを自由にする。
「まだだ!」
 レイヴンがエクスブレイカーをブレードライガーへと振り下ろす。間一髪で避けたブレードライガーのいた場所にエクスブレイカーが減り込んでいた。

 フィーネとリーゼはその様子を見守りながらジークとシャドーを宥めていた。
「ジークも一緒に戦いたいの?」
「きゅい」
 ジークがフィーネにお願いとでも言う様に姿勢を低くした。
「シャドーも行きたいのか?」
 シャドーは唯ジェノブレイカーを見ていた。
「行きたいんだね」
 リーゼは溜め息をついた。
「分からないでもないけどね」
「楽しそうだもんね」
 リーゼとフィーネはブレードライガーとジェノブレイカーの戦いを見ながらそう言った。
「まるで踊っているみたいね」
「そうかな? 僕にはじゃれ合ってる様に見えるんだけど?」
 フィーネはリーゼの言葉を否定しなかった。武は舞に、彼等の動きだけを見れば踊っている様に見えるが彼等そのものは楽しんでいる。
 本気で戦っているけれど相手を殺す気はない。だから遊んでいると言っても否定は出来ない。
「ぎゅい!」
「ジーク?」
 我慢できなくなったのかジークが飛び出してブレードライガーと合体する。
「ジーク!」
 驚いたバンが動きを止める。
「あっ、シャドー!」
 リーゼの静止も聞かずにシャドーもジェノブレイカーと合体した。
「邪魔をするな、シャドー」
「俺は別に良いぜ。ジークやシャドーも一緒に戦いたいんだよな!」
「きゅい!」
 ジークの嬉しそうな声が返ってきた。
「分かった。後悔するなよ、バン!」
「するかよ!」
 再び2体の機獣は戦いを開始する。

「バンってどうしてあんなに鈍いのかしら」
 戦いを見ながらフィーネが溜め息をついた。
「レイヴンが不器用なんだよ。ちゃんと手伝いに来たって言えば良いのに」
 リーゼも戦いを見ながら毒づいた。
「あれがあの2人流の交流って事なのかしら」
「そうなんだろ。付き合わせられるこっちの身にもなって欲しいよ」
 言いながらもリーゼは嫌そうではない。
 そして戦いはバンとレイヴンが満足するまで続いた。フィーネとリーゼも最後まで戦いを見届けた。

 フィーネに粗方の様子を聞きながらトーマは疑問に思った事を尋ねた。
「結局どちらが勝ったんですか?」
「引き分けみたい」
「引き分けですか?」
「そう、バンはブレードを両刃とも折られシールドも発生出来ないんだけど、レイヴンも荷電粒子砲を壊されエクスブレイカーもブレードに切り落とされてるから」
 その説明を受けて一体どういう戦い方をしたのだとトーマは悩む。そしてもう1つの可能性に思い至る。
「あの……もしかして、また……」
「また戦うんじゃないかしら」
 向けられた天使の微笑みにトーマは考えを放棄した。
 フィーネはブレードライガーを嬉しそうに修理するバンを見ながら思い出していた。レイヴンと出会っても、バンはレイヴンと出会った事よりもレイヴンと戦える事の方が嬉しそうにしていた様に見える事。
「結局バンはゾイドが一番なのよね」
 その呟きはトーマの耳にも、ましてやバンに届く事はなかった。




かなわ由太郎様
キリ番200ゲットおめでとうございました。
リクエストがレイヴン×バンでその後のお話と言う事ですが如何でしたでしょうか?
やっぱりレイヴンとバンはライバルものになってしまうので女性陣に解説を入れて頂きました。
女性陣が出張ってしまいまして、本当にリクエストに応えられたか不安です。
しかもレイヴンはなかなか出てこなかったですし、レイヴン×バンは難しいです。
でもゾイド戦は書くの楽しかったです(リクじゃないって)。





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