| 「機械獣たちの円舞」 〜キリ番リクエスト・888〜 ジェノブレイカーとの決戦に備えて着々と準備が進められてゆく中、帝国内部でその提案をしたのは誰だったのだろう。帝国軍の軍人たるもの実戦経験がないままに戦場に赴くのは如何なるものかと、では実戦の経験を積ませれば良いと言う。ガイロス皇帝は快くその提案を承認するとその見学を希望した。 事は一転して御前試合へと変貌を遂げると共に、帝国の威信を賭けてと言われれば軍人に否と言う術もなく名を連ねさせられる事となったのはカール・リヒテン・シュバルツ。 ここに、カール・リヒテン・シュバルツ対帝国軍の模擬戦が執り行われる事となった。 「ね、面白そうだと思いませんか?」 ホエールキングの中でコーヒーを啜りながらルドルフは概要を言う。 「面白そうだとは思うけどさ、よくシュバルツがOKしたよな」 ソファに凭れながらバンが言うとその後方に控えていたトーマが口を挟む。 「あれでも兄さんは部下や部隊の兵の育成には熱心だからな、別に珍しくはない」 「そうなのか?」 「ええ、現にシュバルツ先生の元で鍛えられた士官は優秀だと聞いています。その分厳しいらしいですけれど」 ルドルフはその面々に思い当たりがあるのか自身の経験か、苦笑を禁じえないようだ。トーマも同じ様に複雑な顔をした。 さてこのホエールキング、模擬戦が行われる基地へ向っているのだがルドルフの護衛はGFに依頼された。故にバン、フィーネ、トーマが同席している。いつもルドルフの警護を勤めるロッソとヴィオーラは今、外部を警戒してホエールキングに寄り添うようにストームソーダで飛行中である。 GFに護衛を依頼したと言ってもルドルフにしてみれば久しぶりにバン達に会えるという嬉しいオプション付き、いや護衛の方がオプションなのか。 護衛の雰囲気など何処へやら、和やかにその場で談笑が交わされていた。 その中で、1つの問題発言がなされた。 「ねえ、相手は実戦経験のない人ばかりなのよね」 ここまでコーヒーの塩加減を調整しながら話を聞いていたフィーネが漸く塩加減が良くなったのか話に加わってくる。 「そうなりますね、フィーネさん」 「でもシュバルツ大佐は手加減無しで本気で戦うって事よね?」 その言葉に、バン、ルドルフ、トーマはそれぞれの思惑によって顔を見合わせた。 帝国軍基地の格納庫には整備の終ったシュバルツのセイバータイガーSSと高速戦闘隊の赤いセイバータイガーが並んでいる。 対ジェノブレイカー戦において突撃戦に強いレッドホーンと砲撃力の強いアイアンコングはそのスピードについてゆく事が出来ない為に砲撃力を重視され今回の実戦経験習得の模擬戦には必要がないとされたのだ。実戦経験が必要になってくるのは接近戦、当にセイバータイガーを駆る者たち。 「ルドルフ陛下がご到着になります!」 格納庫へと告げられた報告に全ての兵たちはホエールキングを出迎える為に滑走路へ集合する。その最前にはシュバルツと基地の責任者である帝国士官。 ホエールキングは鳴き声と共に着地した。 「全員敬礼!」 シュバルツの号令と共に一糸乱れぬ敬礼をする帝国の兵たちに迎えられゆっくりと降り立ったのは幼くして賢帝の呼び名も高いガイロス皇帝ルドルフ。そしてその後ろにGFが続いて降り立った。 「出迎えご苦労様です」 ルドルフは労いの言葉をかけると基地の責任者に促され、今回叡覧の場所とした司令室へと歩き出す。後を追うように歩き出したバンではあるがシュバルツの前で立ち止まり楽しげに笑った。 「何だ? バン」 自分の前で立ち止まったバンにシュバルツは訝った。 「アンタの戦い振り、楽しみにしてるぜ!」 それだけ言うとバン後ろで早く行け言わんばかりの不機嫌な顔をしているトーマに苦笑してルドルフを追う。 「それでは失礼致します」 トーマも不機嫌な顔のまま兄である上官に敬礼を返してそれに続くと最後はフィーネとジークが降りて来て言った。 「頑張ってね。シュバルツ大佐」 どこか含みのあるような、それともそれが地なのか分からないフィーネとジークの背を見送りながら矢張りバンとトーマの様子に訝しみつつもそんな事を考えている場合ではないと気持ちを引き締めるシュバルツだった。 一度は司令室へと行ったルドルフであったが矢張りまだ子供なのかゾイド乗りの気質なのか、落ち着かない様子で司令室を出て格納庫へと向った。当然の事ながらバンとフィーネ、ジークもそれに続く。但し、周りから見れば本当に護衛をしているのかと思うほどに率先して格納庫へと向っているのはバンに見えた。 格納庫からは次々とセイバータイガーが模擬戦の場へと出撃して行く。その隣でトーマは現在ホエールキングに積んでいたディバイソンとブレードライガーを降ろしていた。 「おーい! トーマ」 バンは降ろされた愛機とディバイソンの元へと駆けて行く。 「久しぶりですね。ブレードライガー」 追いついたルドルフは久しぶりに見るブレードライガーを懐かしそうに見上げて軽く挨拶すれば、それに返すように小さく唸った。 「これから警護の予定位置につけるんだろ? ライガーは俺が自分で持っていくよ」 バンはブレードライガーとディバイソンを見上げながらトーマに言った。 「陛下の護衛はどうするつもりだ?」 「久しぶりにバンのブレードライガーに乗せてもらいたいので、少しだけ、そこまで一緒に行っては駄目ですか?」 トーマの危惧に返事を返したのはルドルフだった。 「陛下がそう仰るなら……」 流石に帝国軍人は皇帝に逆らえない。トーマは渋々承諾した。 「しかしだ、バン。もう余り時間もない。ブレードライガーを位置につけたら直ぐに陛下を司令室にお送りするのだぞ」 トーマはルドルフに向って言えない事からか小姑の如くバンへと注意を促した。 「分かってるって」 気楽に手をひらひらと振りながらバンは軽く言ってブレードライガーへと乗り込んだ。 「本当に分かっているのか……?」 不安そうな顔でブレードライガーを見送ると、トーマもディバイソンを定位置へ向わせるべく動かした。 ブレードライガーはそのまま格納庫を出ると定位置に付ける所か模擬戦の行われる場へと走り出した。 「バン!」 トーマは慌てて静止をかけるがブレードライガーはそのスピードによって既に戦場へと到着していた。 「すみません、シュバルツ中尉」 「大丈夫だって。直ぐに戻ってくるからさ!」 「陛下!」 成す術もなく肩を落とし、トーマは渋々とディバイソンを定位置につけてブレードライガーの軌跡を追う。ライガーは基地を出るとそこに広がる滑走路を最高速で走り抜け、そのまま砂地を蹴って目前に迫る森林へと入って行く。 風圧と機体に触れてしなる木々。 「しっかり掴まってろよ、ルドルフ!」 「はい!」 バンは森林を駆け抜け岩肌に向って大きくジャンプした。傾斜のある岩肌は2、3度蹴る事によってその頂上へと辿り着く。 「良い見晴らしですね!」 「ここで見たら一番良いんだろうけど、そんな事したら皆から大目玉食らうだろうな」 基地からは司令室が幾ら高い場所にあると言っても平面でしか見えない。見えない部分はモニターである程度カバーされると言ってもそれでは臨場感がないのだ。そして基地から一段高くなったここは全てが見渡せる場所だった。 「見てみろよ、ルドルフ」 バンは滑走路の前に佇むシュバルツのセイバータイガーを指差した。 「シュバルツ先生のセイバータイガーですね。他のセイバータイガーは森林の中へと散っていきましたね」 基地はその背に崖を、前には滑走路、砂地から森林へと続いているこの地形、その両側は基地の背から続いている崖。崖の後ろにはまた森林が続いている。 この基地は森林の中の谷間を利用して作られた要塞。 「3方を崖に囲われ、その崖の高さは普通のゾイドじゃ昇り降りは先ず無理だ。俺だってブレードライガー以外でこの崖を上れと言われると辛いぜ」 バンの言葉にルドルフは笑って感想を述べる。 「バンはセイバータイガーには無理だと思いますか?」 「いや、セイバータイガーでも行けると思うぜ。俺はあんまりセイバータイガーについて詳しくないから自信ないけどさ、皇帝銃士隊とかシュバルツとかレイヴンとか、セイバータイガーでも結構強い奴っていっぱいいるしな」 バンはそれぞれの戦歴とその記憶に苦笑して言った。 「セイバータイガーでも無理じゃない……」 セイバータイガー達を見ながらルドルフは考え込む。 「おいおいルドルフ。ロイヤルセイバータイガーで試そうなんて考えてないだろうな?」 その様子を見てバンは茶化すように言った。 「考えましたよ」 ルドルフにさらりと笑顔で返されて、バンは毒気を抜かれた。 「私だってゾイド乗りですよ」 ルドルフは皇帝らしからぬ膨れっ面になった。 「悪い悪い」 バンは楽しそうに言った。その顔、悪いと思っている様には見えない。 「バン」 膨れっ面のままルドルフは嬉しそうにしているバンを後部座席から睨んだ。 「そう怒るなよ。ルドルフがさ、今でもゾイドが好きでゾイド乗りの気持ちでいてくれるんだって思ったら嬉しくてさ」 振り返って本当に嬉しそうな顔をしたバンにルドルフは同じ様に笑った。 「だからこうやってブレードライガーに乗せて欲しいって頼んでるんじゃないですか」 「そうだよな」 バンとルドルフが互いに昔と変わらない事を確認して笑い合っているとライガーへと通信が入る。 『ルドルフ陛下、そろそろお戻りください。バン、お前も早く定位置に着け!』 こめかみに血管を浮き上がらせんばかりの顔をしたトーマがモニターへと映ると、続けて別の通信が入り新たにモニターへと表示される。 『ルドルフ陛下。陛下がお戻りにならなければ模擬戦を開始する事は出来ません。ですからお早くお戻りください』 静かに述べたのはシュバルツであったが、その意味する所にルドルフとバンは溜め息をついた。 「流石はシュバルツ先生。ものは言い様ですね」 「仕方ない。戻るとするか」 シュバルツの言葉は表面的には普通の懇願に聞こえるのかもしれないが、バンとルドルフにとって何よりも強力な脅しに他ならない。 戻るまで模擬戦を開始しない、と言っているのだから。 「でもシュバルツか……。俺も参加してみたいよな」 「私も、バンとシュバルツ先生の戦い振りを見てみたいです」 バンはその言葉に基地へと戻りかけた機体を止めてルドルフへと振り返る。ルドルフは応える様に悪戯っぽく笑った。 「へへっ……」 同じ様に、悪戯っぽく笑ってバンはブレードライガーを崖へと向ける。 「とりあえずは、あいつ等のご要望どおり基地へ戻るぜ。しっかり掴まってろよ!」 「はい!」 並みのゾイドとゾイド乗りでは無理な芸当、ブレードライガーは勢い良く崖を駆け下りた。 バンはそのまま低位置に着かず格納庫へと向った。 ライガーを止めると、バンとルドルフはコクピットを降りて司令室へと急いぐ。早く模擬戦が見たい一心だ。 「お待たせ!」 「お待たせいたしました」 バンがルドルフを伴って司令室へと現れるとヴィオーラとフィーネが些か呆れた顔で待っていた。それでも怒らないのはバンへの信頼と時折見せる年相応なルドルフを好ましく思っているからだろう。 「あんまり司令官やシュバルツ大佐とトーマさんを困らせるものじゃないわ。バン」 出迎えた2人にフィーネのにこやかな嫌味が突き刺さる。 「すみません、私がバンに無理を言ったのです」 ルドルフは慌てて弁解した。 「でも余り無理はなされない様にして下さいね。陛下」 分かっているとヴィオーラが優しく言う。 「はい」 素直に頷くルドルフを見て、バンとフィーネは矢張りロッソとヴィオーラはルドルフにとって必要な者達であったのだと思う。 「それじゃ俺も持ち場に戻るけどあと宜しく頼んだぜ!」 バンは手を振って司令室を後にした。 今回の警護、ロッソは上空からストームソーダで巡回、トーマのディバイソンとバンのブレードライガーが流れ弾対策として基地の司令室前で待機、ルドルフの傍はヴィオーラとフィーネ、付け加えるならジークとなっている。 トーマは格納庫から出て来たブレードライガーに改めてバンへと通信を入れる。 「分かっているな、バン。絶対に流れ弾を撃ち逃すな」 真剣な表情でセイバータイガー全機の現在位置と装備を確認してその可能性と威力を割り出し、射撃の体勢を整えるべくビークの操作をしてディバイソンの隣へ並んだブレードライガーへとそのデータを転送する。 「サンキュー、トーマ」 バンは送られてきたデータを見ながらその詳細さに感心した。 「でもこんなに細かいデータを一々見てたんじゃ間に合わねーぜ。俺は来たヤツを撃ち落とすだけだ」 バンはまるでゲームの開始を待っているように模擬戦場を見据えた。 「とりあえず装備と数だけでも見ておけと言っているんだ」 トーマも折角送ったデータを無駄にしてなるものかと言い返す。 「ああ、ちゃんと頭に叩き込んだぜ。この地形と一緒にな」 バンは先程ルドルフと一緒に崖から見下ろした地形とセイバータイガーの配置を頭に思い描く。そしてトーマから送られたデータの中から地形をスキャンしたデータとその配置を記憶の中のものと比較して簡単にブレードライガーに入力した。 「面倒くせぇ……」 思わず漏れた言葉はいつもデータ入力をフィーネに任せているからだろう。 「必要なデータだ」 通信から漏れたのだろうトーマから叱咤の声が聞こえる。 「分かってるって言ってるだろ」 実は司令室やシュバルツのセイバータイガー、ロッソのストームソーダにも筒抜けなその会話に普段の彼等を知る人々の間から笑いが漏れる。 「バン。そろそろ開始させようと思うのですけれど準備は良いですか?」 放って置けば漫才の様に延々続けられる会話を聞いていたいと思わないでもなかったが、それ以上に楽しみな模擬戦の為にルドルフはバンとトーマの漫才に終止符を打った。 模擬戦の事をすっかり頭から抜け落ちていたバンは大慌てでデータ入力を終えた。 「いつでもOKだぜ!」 バンはブレードを転回させ、そこに収納されたパルスレーザー砲を戦場へと向ける。 その様子を確認したルドルフはシュバルツとセイバータイガー部隊へと通達する。 「それでは模擬戦を開始して下さい」 兵士たちの間に緊張が走った。 最初に動いたのはシュバルツの最も近くにいたセイバータイガーだった。セイバータイガーは森から出てシュバルツの正面に現れるとビームガンを撃った。 「正面から攻撃するのなら銃撃ではなく格闘戦にまで持ち込め!」 シュバルツはビームガンを避けるとセイバータイガーに向って疾走した。赤と黒の、シュバルツのセイバータイガーが大きく口を開くとその牙でビームガンに噛み付きそのまま大きく首を振ってセイバータイガーを投げ飛ばす。 「格闘戦とはこう云う事だ」 投げ飛ばされたセイバータイガーがコマンドフリーズで停止した。 続け様にシュバルツへと砲撃が向けられる。シュバルツは背後から迫っているビーム砲に目を向けながら森の中へと駆けて行く。セイバータイガーの砲撃はシュバルツに掠る事無くその軌跡へと着弾してゆく。 「動いているという事を考えてその時いた場所を狙うのではなく先を読んで攻撃しろ!」 シュバルツは静止と同時に砲撃したセイバータイガーへビームガンを撃つ。砲撃に集中していた為に静止状態であったセイバータイガーは避ける術もなく被弾した。 「反撃されると言う事も忘れるな」 更にシュバルツは森の奥へと走るとその視界に映った機影に向って対ゾイドレーザー機銃を発砲させた。薙ぎ倒された木々の向こうにセイバータイガーが露わになる。 「隠れてばかりいるな!」 シュバルツの叱咤が通信を通してセイバータイガー部隊に飛ぶ。 シュバルツの声に反応してセイバータイガーが突進した。その頤を開き、剥き出しにしたキラーサーベルでシュバルツのセイバータイガーの喉元を狙う。 「少しは骨があるヤツもいそうだな」 シュバルツは微かに笑った。 シュバルツはセイバータイガーが喉元に喰らい付く寸前に機体を低く屈めて思いっきり地面を蹴った。喰らい付き逸れたセイバータイガーは腹部へと頭突きされそのまま弾き飛ぶ。 「さあ、これで終わりか? 今度はこちらから行かせて貰うぞ!」 シュバルツはセイバータイガーを駆った。応える様に、セイバータイガーもその実力を見せ付けて行った。 モニター上のデータではセイバータイガー部隊の表示が次々とコマンドフリーズへと変わって行く。 「あれは確実に兄さんの闘争心を煽ったな」 トーマはその表示を見ながらセイバータイガー部隊の残り機体数と残弾数を確認する。今の所シュバルツの戦い方によって流れ弾は来ていない。 「でも本気じゃない」 ディバイソン、ビークから送られてきたデータ、バンはトーマと違いその表示は機体の位置と行動可能か不可能の表示しかしていないそれを軽く確認しながらもバンはシュバルツの戦いから目を逸らさずに見ていた。 「何故そう思う?」 「シュバルツはまだガトリング砲を一発も撃っていない」 トーマはバンの言葉にデータを見直した。 「しかし……だからと言って本気でないとは言えないだろう」 「まあな。でも余力を残している証拠だ」 その間にもフリーズを示す表示が増えて行く。既にモニターへと映るシュバルツ以外の行動可能なセイバータイガーは残り1体。 バンは操縦桿を握り締めた。 『これで終わりだ!』 そしてシュバルツが最後のセイバータイガーをコマンドフリーズへと追い込んだ。 シュバルツがセイバータイガーを倒し模擬戦終了の通信を入れようとした時。 『まだ終っちゃいないぜシュバルツ!』 通信スピーカーから聞こえてきたのはバンの声だった。 そしてシュバルツが基地の方へと振り向くと滑走路を駆け抜けて来るブレードライガーの姿が目に入った。 『止まれ、バン!』 静止を告げるトーマの声が聞こえてくる。それはバンに聞こえていない訳はないはずなのにブレードライガーは止まる気配を見せない。 「どういうつもりだ、バン!」 シュバルツは困惑しつつも操縦桿を握り直しブレードライガーとの戦闘に備えた。 「アンタと戦ってみたくなった、それだけだ!」 高速ゾイドであるブレードライガーは既にセイバータイガーの目前、ライガーは大地を蹴るとその前足を振り上げた。 シュバルツは素早く後方へとジャンプしてストライククローを躱しブレードライガーの着地地点へと衝撃砲を撃つ。 『ルドルフ陛下、バンを止めて下さい!』 後方ではトーマがルドルフへの懇願しているのだろう、その会話が入る。 『私がバンに見たいと言ったと言えば?』 ルドルフの周囲では予測済みだったのか、バンの性格から堪えられないと踏んでいたのか驚いた様子はなく、『バン、頑張ってね〜』等と気楽なフィーネの通信までもが入ってくる始末。 トーマはバンと出会って確実に増えたであろう溜め息をついた。 『そう云う事ですシュバルツ大佐。貴方方の戦いはきっと彼等の勉強になるはずです。頑張って下さいね』 ルドルフの通信を聞いたシュバルツは先程よりも何処か楽しげな顔になった。 「そういう事か。ならば遠慮なく戦わせて貰うぞ、バン!」 「当然だ! こっちだって手加減なんてしねぇぜ!」 「望む所だ!」 バンとシュバルツ、ブレードライガーとセイバータイガーは再び双方に向って駆け出した。 「今度はこちらから行かせて貰うぞ!」 セイバータイガーは地を蹴り巨大な牙を剥いた。ブレードライガーはシールドを展開させその攻撃を迎え撃つ。 シュバルツはその勢いのまま、自分のゾイドのトレードマークであるセイバータイガーの背のガトリング砲を発砲した。 「チッ! ブースターオン!」 バンはシールドを展開したままロケットブースターを噴射させ、間合いを詰めてガトリング砲の死角へと入る。 「まだだ!」 シュバルツは着地と同時にセイバータイガーの尾に装備されたリニアレーザーガンを発射した。ブレードライガーは軽やかに躱すも、しなやかに動くその尾に装備する事によって死角が殆んど存在しないそれは避けた筈のライガーの跡を確実に追う。 「しつこいぜ!」 バンはパルスレーザーガンの狙いをリニアレーザーガンへと定めた。 翻ったブレードの切っ先を見てシュバルツはバンの狙いを悟り、セイバータイガーの体勢を変えてバンの攻撃を紙一重で避けた。 互いに距離を置いたまま2体の戦闘機械獣は対峙する。 「流石に遠距離戦では決着は着かないか……」 「その様だな」 通信から聞こえたバンの呟きにシュバルツも苦笑しながら同意する。 「なら、接近戦で行かせて貰うぜ!」 バンはそう言うなりシールドを展開してブレードライガーをセイバータイガーへと突撃させる。 シュバルツもセイバータイガーをブレードライガーへと駆けさせるとセイバータイガーの鉤爪を振り上げてシールドへと叩き降ろす。 シュバルツはシールドから受ける衝撃を耐えながら至近距離でEシールドジュネレーターへガトリング砲を撃ち込んだ。 「くそっ!」 操縦席のモニターへシールドジュネレーターが破損した事を告げる警報がなりその瞬間シールドが消る。 「Eシールドも至近距離からのビームガトリング砲には歯が立たなかったって所か!」 「悪く思うな、バン!」 シュバルツが更にビームガトリング砲を打ち込もうとした時、ブレードが翻りセイバータイガーの眉間へとパルスレーザーガンの狙いが向けられ発砲した。 セイバータイガーは後方に避けるよりもブレードの付け根とライガーを踏み台にしてその後方の崖を駆け上がる。 「なっ! ブレードを折るんじゃねぇ!」 踏み台にされたブレードは付け根の部分から無残にも折れ曲がっていた。 「これでEシールドもない、ブレードも片方しかない。どうする、バン?」 シュバルツは崖の上からブレードライガーを見下ろした。 「まだ負けた訳じゃねぇ!」 バンは、ブレードライガーに薙ぎ倒された木を咥えさせるとそのまま崖を駆け上った。そして駆け上りながらロケットブースターを噴射させた。 セイバータイガーも崖を蹴り、重力に引かれるまま加速しながらビームガトリング砲を撃った。 「うおおおおお!」 バンは叫びながらガトリング砲を躱し、躱し逸れた砲撃は代わりに咥えた木が受け止める。 「これで終わりだ!」 ブレードライガーとセイバータイガーが激突した。 セイバータイガーはキラーサーベルでブレードライガーの咥えていた木を噛み砕いた。そして止めとばかりにガトリング砲を撃ち込もうとしたシュバルツの目に映ったものは……噛み砕かれた木の向こうにレーザーの輝きを見せるもう1つのブレード。 木をカモフラージュに、潜ませたライガーのブレードがビームガトリング砲を切り裂いた。 分離したガトリング砲が小さな火花を上げて落下して行く。セイバータイガーのモニターにコマンドフリーズの文字が浮かび上がりシュバルツに負けを告げた。 「ふっ……。流石だな、バン」 シュバルツは自嘲気味に笑いながらフリーズした機体をなんとか着地させる。 ブレードライガーは軽やかに駆け下りてその隣に並ぶ。 「こっちこそブレードをやられた時はマジでヤバイと思ったけどな。楽しかったぜ」 バンはモニターに映ったシュバルツの顔を見ながら握手でもしたい気分になった。 『お2人ともお疲れ様でした。良い戦いぶりでした』 ルドルフの声が通信から入る。 「いえ、面目ありません」 シュバルツが神妙な顔でルドルフに答えた。 『いいえ、どちらが勝ってもおかしくない戦い振りでした。これで皆の士気もあがるでしょう。私にとっても良い勉強になりました』 「勿体無いお言葉、ありがとうございます」 モニター越しに深深と頭を下げるシュバルツを見ながら、どうしてそこまで拘るんだとバンは思いつつも軍だから、と諦めた様に見ていた。 『おめでとうございます。バン』 「あんまりおめでとうでもないけどな」 バンはセイバータイガーよりも機体損傷度の激しいブレードライガーを思いながら苦笑した。 「でも楽しかったぜ。ありがとな、ルドルフ」 『今度は私も戦ってみたいです』 「俺が相手になってやろうか?」 『考えておきます』 笑いながら通信を終えるとバンはブレードライガーと格納庫へと引き上げて行く。 周囲のセイバータイガーは回収部隊が回収を始めている。隣を見るとシュバルツのセイバータイガーは何事も無かったかの様に、ゆっくりと基地へ戻って行く。それでも背中にはビームガトリング砲がないので通常ではないと教えてくれる。 「なあ、シュバルツ」 バンはシュバルツにのみ通信回線を開いた。その限定通信コードにシュバルツもブレードライガーにのみ通信を開く。 「何だい? バン」 「また戦ってくれるか?」 「機会があればな」 「そっか」 「ああ。その時は……今度こそ俺が勝つ」 珍しいシュバルツの一人称にバンはシュバルツが結構負けず嫌いで、今回の結果に不満があるのだと気付いて笑った。 「俺も負けるつもりはないけどな?」 挑発するように言うバンにシュバルツも笑みを浮かべた。 「そうなったら又再戦するまでだ」 「いつでもOKだぜ」 シュバルツの言葉にバンは嬉しそうに通信を切った。 シュバルツ自身、久しぶりに夢中で戦ったと思う。軍人としてではなくゾイド乗りとして戦い熱くなった。久しぶりに忘れていた感覚、ゾイドに乗る事、そして戦争ではなくゾイド乗りとして戦う事が楽しいと思う気持ちが蘇る。 先を歩むブレードライガーを見ながらシュバルツは結果よりも、唯また戦ってみたいと思った。 バンは瞳を閉じて戦いを思い出す。ゾイドを傷つけるのは好きじゃないけれど、久しぶりにゾイド乗りとして戦って楽しいと思う。 いつまでも高揚した気分が冷めやらなくて、バンは格納庫へ向う足を止めた。 『バン?』 通信からフィーネの声が聞こえる。 「もう少し駆けてから戻る!」 バンはブレードライガーの向きを変えるとそのまま駆け出した。 『もう……いってらっしゃい。気をつけてね』 そんな通信が届けられ、バンは更にスピードを上げる。 基地にいた人々は呆れた様に、それでも納得した様にその後姿を笑みで見送った。 ブレードライガーは森林を駆け抜けその先の砂漠へと駆け出して行く。その姿は誰の目から見ても楽しそうに映っていた。 久我直樹様 キリ番888ゲットおめでとうございました。 キリ番リクエストがバンが滅茶苦茶動きまくるぜ!な話と言う事でしたが如何でしたでしょうか? その前に「ゾイド戦書いて〜」と言われ、 「シュバルツとバンって戦った事ないよね」と言っていた影響がこんな所で出ています。 ゾイド戦……と云うのは自分の頭の中でちゃんと動いているイメージ(映像)があって、 その映像って云うのは、カット割、カメラワークとかカットインまでも思い浮かぶ訳です。 それをちゃんとその人の中で動いてくれるように書くって云うのは難しくて、 言葉が足りなかったり訳分からなかったりしたら申し訳ないです。 特に装備なんかは名称出しても何処の何?みたいな部分があると思います。 その辺文章の限界なのかなぁとか思う事もある訳ですが、 どの武器使ってどんな効果があって、どうなるのかって云うのはいい加減に出来ない性格なのです。 ゾイド戦の結果はバンの意外性の勝ち。 シュバルツが勝ったら意味が無いのでこれは初めから決まってましたね。 実力的にはどうなのかなって思うのですけど(笑)。 最近本当に話が長くなってきて、読むの大変になってきてて申し訳ないです。 キリリクこんな好き勝手な話書いてしまいましたが喜んで頂けると嬉しいです。 戻る |