先生達の忍者講座 〜サバイバル演習 1〜




 桜の季節が終わると穏やかだった日差しは強くなり草花は成長を、木々は緑を増してゆく。
 春と呼ぶには遅くて初夏と言うにはまだ早いそんな時期には穏やかな日ばかりじゃなく、寒暖の差は激しく少々冷え込む日もあれば少し動けば汗が滲む様な夏日もある。
「今日は暑いですね〜」
 出席簿を団扇代わりにパタパタ扇ぎ手持ちの手ぬぐいで汗を拭いながら前の時間に校庭で生徒達と体術の授業をしていた教師が職員室に入ってきた。
「本当に、洗濯物も良く乾きそうですね」
 イルカは出席簿を小脇に抱えて窓の外を見ながら「雲一つないですよ」と眩しそうに太陽を見上げた。
「イルカ先生……洗濯物を干してきたんですか?」
「もしろん干してきましたけどね。って、そうじゃなくてこの後の授業は水遁の術なんで」
 イルカが苦笑すると見に覚えがあるのだろう。
「ああ、本当に。今日は水遁の術日よりで」
 その教師は言いながら同じ様に苦笑した。
「私なんか冬場に生徒の失敗した水遁の術で濡れた時は風邪をひくかと思いましたから。今日は晴れで良かったですね」
「ええ私も、そんな事ありましたから良かったですよ。今日は受付の仕事もあるんで濡れ鼠のままではいかないんですよ」
 多少ならすぐ乾くから受付に影響はないが盛大に濡れた場合着替える必要がある。今日に限って授業の終わりと受付の時間の間が短く着替えていたら交代時間に遅れるかもしれない。
「あれ? 今日受付の仕事が入ってるんですか?」
 驚いた顔で問われるが普段なら授業の後に受付業務をする事など誰でもある事なので驚かれる事はない。
「そうですよ」
「じゃぁ今日のあれは……参加になってましたよね?」
「勿論、受付が終わってから行きますよ」
「じゃぁ頑張って授業と受付を終わらせないといけないですね」
「頑張ってきますよ」
 イルカは軽く手を振りながら職員室を出て行く。
 授業を終えた教師が自分の机に出席簿を置き窓の外を見上げれば先程まで外で見ていた太陽が窓ガラス越しに見える。
「本当に良い天気だなぁ」
 動かなければ暖かい陽気が心地よく、体術の授業の後とあって些か疲れた体と脳に休息を要求する信号が伝達されているらしい。
 欠伸を噛殺して帳簿を付ける為に席へ着く頃、イルカは生徒を引き連れてプールへと歩いて行っていた。

 忍者学校、通称アカデミーの一角で水遁の術用に水の張られた浅いプールの周りで子供達の騒ぐ声と生徒達に呼びかけるイルカの大きな声が聞こえてくる。
「今日は水遁の術の練習だ」
「術の練習だって!」
「やったー!」
 口々に喜びの声を上げる生徒達に、教室で講義されるよりも実習の方が嬉しいのは今も昔も変わらないものだと苦笑を浮かべた。
「こらこら、喜んでばっかりじゃなくてちゃんと説明を聞けよー」
「はーい」
 騒がしいけれど子供は素直で特に興味のある事に対してはそれが顕著に現れる。実習の説明になった途端に騒ぎは静まり、その眼差しは早く術を使いたいから早く説明してと訴えて来る。
 今の静けさも説明が終るまで。
 説明が終ったらまた騒がしくなるのだろう、しかも先ほどの比じゃない位に。そして術を使う為に目も離せなくなる。
「この前授業で教えた水遁の印を覚えているか?」
「はーい」
「覚えてます」
「忘れましたー」
「こら! ちゃんと授業は聞いておけよ」
「すみませーん」
「まったく……」
 悪びれない生徒の態度にも慣れたもので授業のお浚いで簡単に印其々の説明をする。
「ここまでは分かったな?」
 ぐるりと生徒達を見渡して先ほど忘れたと言った生徒に復習の意味で説明させると思い出しながらも印について答えてゆく。
「よく出来たな。じゃあ今からチャクラを練り水遁の印を組んで水を動かしてみるが先生がお手本を見せるからちゃんと見ているように」
「はーい」
 プールに向ってチャクラを練り水遁の印を組むと水面が波打ち水がプールの中を回る。
「わぁ!」
「すごーい!」
「先生やる〜!」
「洗濯機みた〜い!」
「おいおい……」
 どうやら洗濯機は誉め言葉ではないらしい。
 生徒は素直な感想で盛り上がるがイルカはチャクラの練り方を変えて水面をぴたりと静めチャクラを練るのを止めた。
「水を動かすなんて水遁の初歩なんだからお前達もやってみろ」
「はーい!」
 水の張られたプールに向う様に生徒に促せば意気揚揚とチャクラを練り始める生徒達。イルカはチャクラを足の裏から放出させて水面を歩いてプールの方から生徒を見渡す。
「あー! 先生水の上歩いてるー!」
「お前らももっとチャクラ練るのが上手くなったら出来るから頑張れよ!」
 言うと同時にイルカはチャクラを練るとその周囲から手の平サイズの水が浮き上がり、イルカの手の上で球体になると今度はその水の玉でお手玉を始めた。
「これぐらい簡単に出来るようになれよ!」
 イルカが生徒を煽るような事を言えば元気の良い子供達は更にチャクラを練ってゆく。そこかしこで小さく水面が盛り上がったり波打つ様をイルカは笑顔で見守っていた。
「俺も先生のぐらい簡単にやってみせるんだ!」
 意気込む声と共に練られた子供にしては大きめなチャクラ。慌ててそのチャクラの持ち主へ注意を向ければ子供の前で子供の背を越えるくらい大きく水面が盛り上がった。
「やったー!」
「おい!」
 自分の動かした水の大きさに喜んで気を逸らした事で止まったチャクラ、与えられていたチャクラが突然止まった事で盛り上がった水はその状態から水面に叩きつけられた。
 バシャン!と盛大な水飛沫を撒き散らし水面にも波紋を広げて生徒達が練った形跡を跡形もなく消して行く。
「あー、こっちも濡れただろー!」
「ごめんごめん」
 当の生徒は頭から水を被る事になり、その隣では巻き添えの生徒達が文句を言っている。
 その中で一人の生徒が気付いたのだろう。
「先生びしょぬれ〜!」
 水の上にいた事と生徒の方へと駆け寄ろうとした事で巻き添えを食らったイルカも当然ずぶ濡れだった。
「術の途中で気を抜けば失敗すると言う事が身をもって分かったな!」
 こめかみを引き攣らせながらイルカは何とか生徒へ注意をし、空を仰いで受付業務までに乾く事を願うのだった。







はい、続いてます。
更新してないのが申し訳なくて見切りUPです。
まだ前半の前半です。予定では全3話くらいです。
とりあえずキリの良いシーンまで。
いや、ここがきりが良いのかと言う事ではつっこまないで下さい。
書きかけている部分よりはマシと言う事でお願いします。