| 「眉間」 バンは格納庫でコマンドウルフとグスタフを見上げていた。 「会えて嬉しい?」 バンが考えに耽る間に傍に来ていたフィーネが同じ様に新しく並んだ2機のゾイドを見上げた。 「トーマの所に行って来たんじゃなかったのか?」 バンはフィーネの質問に答えずに逆に問い返した。 「容態は落ち着いてるから」 「そうか」 「それに私がいるとトーマさんが落ち着かないから出ていた方が良いって看護婦さんに言われたの」 「ああ、なるほどね」 バンはいつものトーマの様子を思い出す。あのくらい騒げるならもう大丈夫だろうと少しだけ笑みが浮かんだ。それでもボロボロになったディバイソンを見てレイヴンを思い出し笑みが消える。 フィーネが何か考えるような顔で俺を見た。 「バンも、ちょっと、落ち着いた?」 バンは何の事だろうと思う。トーマの事ならと考えるが他は思い当たらない。 「まあな、トーマの容態が安定してちょっとホッとしたかな」 「違うの。バンの事よ」 「俺の?」 「そう」 フィーネのその意図を掴みきれずにバンは悩んだ。フィーネは悩んでいるバンに構わず繋がりがあるのかないのか分からない、急な話題転換に似た話の振り方で改めてバンに言った。 「ムンベイもアーバインも変わってないね」 「そうだな」 「でもバンは変わったわ」 言われて、そうかもしれないとバンは思った。 「でもまた変わったの」 「また?」 「そう、アーバインとムンベイに出会って変わったわ」 そのフィーネの顔はどことなく嬉しそうにしていた。 「今の方が良いわ」 「そうか?」 「うん」 バンはきっとフィーネは何かに気付いたのだろうと溜め息をついた。 「レイヴン」 フィーネは唐突にその名前を口にし、バンの顔を見る。それは何か観察でもしているかのような、見つめているような視線。 バンはまたフィーネの行動の意味が分からず困ったような顔を観される事となった。 「レイヴンがどうかしたのか?」 バンがそう言うとフィーネはバンの眉間を指差した。 「俺?」 「眉間」 「眉間?」 「そう」 フィーネはトンっとそのままバンの眉間を軽く突付いた。 「おい、フィーネ」 何をするんだとバンが少しムッとするとフィーネは笑って指を下ろした。 「今のバン、眉間にシワが寄ってるわ」 「だからシワがどうしたって言うんだよ?」 バンの声には怒りが含まれている。フィーネはそれすらも楽しいのか笑みを止める事はない。 「レイヴンの現れてからのバンってずっと眉間にシワが寄ってたわ」 「ずっと?」 「うん。何でもない時でも」 バンの顔には意外だったと書いてある。 「気付かなかったな」 バンは大きく溜め息をついた。 「今はトーマさんの容態の事とかがあるからまだ落ち着けないのかもしれないけど、それでもちょっと穏やかになってる」 「そうかな?」 「そう」 「そっか」 バンは眉間に指を当ててみる。少しシワが深くなったと感じるのは気のせいだろうかと不安になって、また眉間にシワが寄って慌ててシワを伸ばした。 「きっとアーバインやムンベイたちがいないままトーマさんが運び込まれてたら、バンはもっと眉間にシワを寄せて、なんか、尖った感じだったと思うの」 「そうかもしれないな」 バンは苦笑した。言われて始めて自分がそんなに張り詰めていないと気付く。そして独自のカラーを持つコマンドウルフとグスタフを見上げた。 「なんかさ、こいつら見てるだけでもホッとするんだよ」 「うん、私も落ち着く」 バンとフィーネはその2機のゾイドを見上げていた。 「ちょっと二人とも何やってんのよ」 格納庫の出入り口からムンベイが声をかけた。 「なんだ、俺のコマンドウルフがそんなに珍しい訳じゃないだろうが」 アーバインも同じ様に出入り口で佇んでいる。 その光景にバンとフィーネは顔を見合わせた。 「あの二人のゾイドじゃなくてあの二人の方がもっとホッとするな」 「うん」 互いに笑い合ってアーバインとムンベイの方へ駆けてゆく。 「久しぶりに会ったんだし、ゆっくり話でもしようぜ!」 「こっちはそのつもりよ」 「まあ当然だな」 「うん!」 戦いの中、そのひと時に笑顔は広がった。 戻る |