「時代を越えても」
年末の特別番組、紅白歌合戦、カウントダウン、この日ばかりは子供たちも夜更かしが許される日。
晩ご飯も食べ終えて風呂に入って、ジャマだけだと寒いから上着を羽織り、コタツの上にミカンを用意して湯冷めする前にコタツに潜り込む。
テレビを見ながらミニ四駆のメンテナンスとセッティング。
「豪、テレビばっかり見てセッティングが全然進んでないじゃないか」
烈はどちらかと言えばセッティングに集中してテレビはあまり見ていない。
豪はといえばコタツの上にミニ四駆を置いたままテレビを見てばかりいた。
「だってさ、折角夜遅くまでテレビ見てても怒られないんだし」
その後にミニ四駆のセッティングはいつでも出来ると言いそうで烈は思わず豪を睨む。
烈も・・・別に豪がミニ四駆のセッティングを二の次にしているとは思わない。特別な日だからと云うのは分かっているのだ。
大会前とか、平日でもミニ四駆のセッティングとなると宿題そっちのけで夜中までしてお母さんには怒られている。
でも特別な日だからと言ってメンテナンスを欠かす事は出来ない。
少しは見逃がすかもしれないけど、テレビはメンテナンスが終った後でも見れるからと集中して、烈はミニ四駆のセッティングを終らせる。
頃合いを見計らった様にだしの良い匂いがする。
「さ、年越しそばが出来たわよ」
「はーい」
良江が烈と豪を呼びに来ると、二人は揃って返事をする。
豪は少しテレビが名残惜しそうだ。
「ほら、行くぞ」
「分かってるよ」
烈は豪を促して先に行く。
豪もテレビを振り返りながら烈の後について年越しそばを食べに行く。
年越しそばも食べ終わって再びコタツに戻ると時間はもう11時になろうとしていた。
豪は今度はテレビを見ずにセッティングを始める。
烈は食後のデザートとばかりにミカンの皮を剥くとミカンの酸っぱい匂いがし、匂いに釣られて豪が顔を上げた。烈がミカンを半分に割った時、
「あっ烈兄貴!俺にもミカン剥いてくれよ!」
言った豪のその目は剥いたばかりのミカンを見ていた。
烈は少しムッとしたが割ったミカンの片方を豪に投げてやる。
「ほらっ」
「サンキュー、烈兄貴」
ミカンを受け取るとぱくりと口に頬張った。ミカンを頬張る事によって空いた両手は再びセッティングを始める。
何となく呆れた様な気分になりながら烈は一粒づつ食べてゆく。
後数分で年が変わるというくらいになってようやく豪もセッティングを終える。
テレビのアナウンサーが『2001年まであと5分です!』と興奮気味に宣言すると豪がミニ四駆を持って立ち上がっり、庭に面した戸を開ける。
ひんやりした空気が暖められた室内に入ってくる。外向きではない格好には寒く感じる風。
豪は直ぐに庭にあるコースに行けるようにと置いてある靴を履いた。
「烈兄貴ー!」
豪が庭から烈を呼ぶ。
「ちょっと待てよ」
寒いなぁと思いながら豪と同じようにミニ四駆を持って庭に出る。
テレビからは「あと1分です!」と聞こえてきて、ミニ四駆のスイッチをオンにした。
そして、どちらから説明をした訳じゃないのに同じようにスタートラインにミニ四駆を用意する。
徐々に減っていく秒数は『あと10秒!』まで来ていた。
「烈兄貴」
「豪」
二人の間に程よい緊張感。
テレビからのカウントダウンの声と重なる二人の声。
『5、4、3、2、1、あけましておめでとうございます!』
「「5、4、3、2、1、GO!」」
瞬間ミニ四駆から手を放す。
走り始めるソニックとマグナム。
追いかける烈と豪。
「豪、あけましておめでとう」
「烈兄貴、今年もよろしくな」
にっと笑って改めてマシンを追う。
今年もまた一緒に走り続けて行こう。
来年もきっと。
世紀を越えても。
時代を越えても。
いつでも。
ミニ四レーサーは走り続けていく。
あけましておめでとうございますの言葉と共に、
年賀メールとして送った小説です。
でも、これを書いていた時に思っていた烈と豪は昔のままでした。
本当なら中学生ですか?
なものですから、これは烈と豪というよりも、
統べてのミニ四レーサーのイメージで書いていたのかもしれないですね。
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