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「万年の距離」
ニュースなどで言っていた。
確かにはっきりとこの目で見える星。
6万年に1度の巡り合わせ。
火星……。
夏の蒸し暑さも少し和らぐ夜の屋上。
見上げていた時間はそんなに長くないだろう。
階段を上って来る足音が聞こえる。
誰かが探しに来たのだろうか?
振り返ってみればチームメイトの面々と、長い筒状の物。
「あれ? リーダーこんなところにいたのかよ。探してたんだぜ」
先ず始めに気付いたエッジが声をかけてくる。
「こんな所で何してたのよ」
「夕涼みだ」
それはお互い様だろうと思うから、本当の理由を口に出す事なくはぐらかす。
それでもハマーDの持っている物に目を奪われて訊いてしまうのは仕方が無いだろう。
「お前達の方こそ……それは天体望遠鏡だろう?」
「だってさ、折角6万年に1度の火星大接近なんて見なきゃ損じゃないか」
と、最も目を輝かせているのはミラーで。
「その為なら天体望遠鏡の重さなんて軽い軽い」
かなり本格的な大きな天体望遠鏡を抱えながら笑顔なハマーD。
「オイオイ、火星が見えるからってその程度の事で喜んでどうする」
呆れるように見せる為に、ふうっと大きく溜め息を吐いてみせる。
「ブレットは興味ないの?」
「ない」
予想通りの質問だから用意していた答え。
「6万年に1度の折角の出会いだろう。ブレットって夢がないぜ」
それも予想通り。
「夢見てどうする。俺たちは何になるんだ?」
俺達の目標は何だと言う。
それぞれに思い付いたのか驚きや照れ、反省の色を浮かべる。
「俺たちは宇宙飛行士になる。それは夢じゃない、現実にするものだ。そしていずれ……」
そこで言葉を区切り火星を見上げる。
「あそこへ行く。6万年に1度見れるからってその程度で満足する気はない」
言い切ればそれぞれに「そうだな」と返ってきた。
少し気が良くなったから、「見たかった」と言えなかった本音を少し冗談に混ぜた。
「まあ、折角だ。下見でもするか?」
そして夜が更けてゆく。
星を見上げながら、いつかその大地へ立つ事を誓った。
閑話小話で書いた話ですね。
宇宙系な話って言うと何故かアスレンが思い浮かびます。
それは彼等が宇宙飛行士の卵だからでしょうね。
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