海を越えた答え (J)



その日、少し喉が渇いたのでミーティングが始まる前にトランスポーターを降りてジュースを買いに行った時だった。
自動販売機の前には先客がいた。あれは確かアメリカチームの・・・。
僕は彼を見ていた。
その僕の視線に気が付いたのかもしれない。
「ビクトリーズのJ・・・だったな?」
それは向こうからかけられた声だった。


まだWGPが始まって間もないから、きちんと覚えてないのかもしれない。
それは確認するような呼び方だった。
「君は確か・・・」
僕は少し不思議そうな顔をしていたような気がする。
「アストロレンジャーズのブレットだ」
彼は僕の言葉を遮って名乗った。
そう、アメリカの・・・Rねーちゃんのいる国から来たレーサー。
「何か用があるのか?」
僕が彼を見ていたから用事があるのと思ったのだろうか?
僕は慌てて首を振った。
「ジュースを買いに来ただけだから・・・」
僕は彼の横を通りすぎて自動販売機の前に立ってジュースを選ぶ。
プシュッ
後ろでプルタブを開ける音が聞こえた。
少し後ろを振り返って彼の様子を見ると彼は柱にもたれながらコーヒーを飲んでいた。
僕は博士から貰ったお金を入れてボタンを押す。
ガシャン
ジュースを取り出し向きを変えた時、僕は彼と目が合った。
僕は彼に微笑んで切り出した。
「君たちのマシン、かなりの技術が詰まってるね」
そう言うと
「君のマシンもビクトリーズの中ではかなりの技術を詰め込んでいるだろう」
その口調から彼はあまり嬉しそうでもないように答えた。
ゴーグルの下の表情は読み取れない。
「でも、技術だけで勝てる訳じゃないから」
マシンを信じて、仲間を信じていなければ勝てないと僕は思う。
「・・・アメリカを出る前にそう言ったヤツがいたな」
彼は否定も肯定もしなかった。


WGPも半分以上過ぎていた。
僕はトランスポーターを降りて飲み物を買いに自動販売機へと向かった。


そこにはブレットくんがいた。
WGPがはじまった頃にここで会った事を僕は思い出して、今度は僕から声をかけた。
「おはよう」
ガシャン
僕の声に続いて缶の出て来る音が聞こえた。
僕に気が付いたブレットくんは僕を見てジュースを放って寄越した。
パシッ
僕はそれを受け止めて首を傾げた。
「間違えて買ったヤツだ、くれてやる」
僕はブレットくんとジュースを交互に見た。
そのジュースは僕がブレットくんとここで出会った時に買ったものと同じだった。
「ありがとう」
僕はとりあえず礼を言って自動販売機の横にある長椅子に腰掛け、ブレットくんを見ていた。
ブレットくんは前と同じコーヒーを買って前と同じ柱にもたれた。
「WGPもあと少しだね」
僕はジュースを横に置いて話し掛けてみる。
「そうだな」
ブレットくんも少し表情を緩めて答えてくれた。
「飲まないのか?」
ブレットくんはジュースをさして言った。
「え? うん、いただきます」
プシュッ
僕はプルタブを開けてジュースを一口飲む。
「前にここで言った事を覚えてるか?」
ブレットくんは僕がジュースを飲むのを見てからそう切り出した。
僕はブレットくんを見てうなづいた。
「アメリカを出る前に全米チャンピオンという人物に出会った」
そのゴーグルの下のブレットくんの目が僕を見てるのが分かる。
「その人物も同じ事を言った、『技術だけでは勝てない』と。グランプリマシンじゃない普通のマシンでのレースだ、当然技術なんて必要のない世界の言葉だと思った」
僕は次の言葉を待った。
「だから俺は言ってやった、『NASAの開発した最新の技術を搭載したマシンが負ける訳がない』とね。だが帰ってきた全米チャンピオンの言葉は『日本へ行けば分かるさ・・・』だった」
「日本に・・・」
僕はブレットくんの言う全米チャンピオンが誰なのか分かる気がする。
「今ならその言葉が本当だと思える気がする」
「そうだね・・・」
カラン・・・
言い終わるとブレットくんはコーヒーを飲み干して空き缶を捨てた。
「そして日本に行ったら分かると言う事も・・・ビクトリーズの事だと思ったよ」
ブレットくんはもう一度僕を見た。
「全米チャンピオンは君に似ていたよ」
「そう・・・」
僕はその言葉を聞いて、ブレットくんに微笑んだ。
ブレットくんはそれだけ言うと向きを変えた。
「いい試合をしよう」
「うん、こちらこそよろしくね」
僕たちは言葉を交わした。
そしてブレットくんはトランスポーターの方へと歩き出して行った。


僕はブレットくんを見送るとジュースを飲み干して空き缶を捨て、自動販売機の前に立った。
土屋博士から頼まれたコーヒーを探す。
ブレットくんが飲んでいたのと同じコーヒー。
それはブレットくんが僕にくれたジュースとは離れた場所にあった。そう、押し間違えるような事なんてないような程に。
「Rねーちゃん・・・」
僕は思わず苦笑していた。


そのうちアメリカに行こう、Rねーちゃんに会いに。
これはブレットくんへの答えだけじゃない。
Rねーちゃんから僕へのメッセージだ。
だから僕も、Rねーちゃんに答えに行こう。


そして僕は博士のコーヒーを買ってトランスポーターに向かって歩き出す。
これから行われるレースに向かって歩き出した・・・。





今回はあんまり勢いで書いてないです
こう云う話っていうプロットがあって構成練って書きました
そのくせそんなに長くない・・・

またもやJくんです、でも何故かブレットとの会話・・・
この話は最初ブレットの視点から見た話だったんです、プロットの時は
でもプロットを練ってるうちにですね、ブレットの視線でやると
ブレットとRねーちゃんとの話まで付随しなくちゃ訳分からないっっ!
って事になりそうだったんでJくんに変えました

アストロレンジャーズがロッソストラーダと対戦した時にですね
「ラフプレーの本場はアメリカ」って言ってるんですよ
実習だけだとラフプレーなんてやりそうにないですよね
という事はアメリカのミニ4レースに出てた??もしくは知ってた?
Rねーちゃんは全米チャンピオンよね・・・?
「どっかで出会ってるかもしれないっっ!」
またまたそういう発想・・・私の頭って単純(^^;)
物投げるの好きだしね(爆)