海を越えた答え (America side)
「君たちにミニ4駆をやってもらう」
その教官の一言からカリキュラムにミニ4駆という科目が追加された。
彼らの中にはミニ4駆がどんなものか知らない者もいたので、教官は彼らを連れて実際のミニ4駆のレースを見学させに連れていった。
「へぇ〜凄いな、あんなに小さな物があんなに速く走るんだ」
手すりにもたれながら彼の右隣にいた赤毛の少年は呟いていた。
彼がその少年を見るとその目は嬉しそうに輝いていた。
「なによ、こんなの車のおもちゃじゃないの!」
彼の左隣の少女呆れて言った。
「ああ、女には無理かもな」
その言葉を聞いた赤毛の少年は、少し刺のある口調でそう返した。
「男なんかに負けたりしない、私は絶対男より速くなって見せるわ!」
彼女もまた少年に挑戦的にそう返していた。
真ん中にいた彼は二人のやり取りを苦笑して聞いていた。
彼の名はブレット、赤毛の少年をエッジ、そして少女の名をジョーと云う。
後のアストロレンジャーズのメンバーである。
ブレットは苦笑しつつもレースの見学を続けていた。
冷静に観察しレース展開を読む。それぞれのマシンを比較していった。
「なんだ・・・あのマシンは・・・」
ブレットは思わず声に出していた。
ブレットが目にしたマシンは三角形の、普通の車型とは違うマシン。
しかしスピードとコーナーリングはその外観からは想像も付かないものだった。
「あれもミニ4駆なのか?」
ブレットはそのマシンを追って持ち主を探す。
誰があのマシンを走らせているんだ!?
細い手がそのマシンを止めた。
マシンを持ち上げた人物は褐色の肌に金髪の少女。
「あれが・・・」
その少女は髪をかきあげて客席を見た。ブレットのいる方を。
ブレットはその鋭い瞳から目が離せなかった。
その時、彼女のマシンは優勝を決めた。
世界レベルの大会がいくつか開催され、その度にブレット達はアメリカ代表として出場し、着々と力を付けていた。
そして世界グランプリが日本で開催される事になった。
当然ブレット達も「アストロレンジャーズ」として出場する。
その出場の壮行会も兼ねて、ミニ4駆の全米大会決勝にゲストとして招待されていた。
ミニ4駆を始めた頃とは違う自分達と比べると、そのスピードにも驚く事はなかった。
ブレットは何気なくコースを見ていた。
まあ、こんなもんだろうな。
それ以上の感想はないはずだった。そのマシンを見るまでは。
ミニ4駆を見に連れてこられた時に見た三角形のマシン。
「あれは・・・!」
ブレットはその持ち主の姿を探す。
長い金髪を靡かせて走る姿は直ぐに見つかった。
以前見た時と変わらない、いや、それ以上に速くなったマシンと激しい走り。
アメリカではアッタクなんて当たり前、彼女もマシンが壊れる事を厭わないようだった。
「あんな走りで最後までもつのか?」
途中で壊れてしまうのではないかと思うような走り。
しかし彼女は他のアタックをものともしない圧勝だった。
「優勝はRー!!!」
司会者の声が会場に響き渡る。
彼女は「R」と言うのか。
ブレット表彰台に無表情で立つ彼女を見ていた。
「さて、ここで我らがアメリカ代表を紹介しよう!」
いつの間にか表彰は終わって自分達の紹介になっていた。
ブレットは立ち上がり愛想よく手を振る。
「勝利者に何か一言!」
司会者からブレットにマイクが向けられた。
「連続優勝おめでとう、俺たちも君に負けないように優勝目指して頑張ってくるつもりだ」
ブレットはRと観客に向けて言った。
「ところで連続優勝の秘訣は何か?」
そしてRに話を振る。
「ただの約束だ」
Rはそっ気なく答えた。
そして司会者にマイクを渡す。司会者が次に言った内容はブレットを驚かせた。
「ここで全米チャンピオンとアストロレンジャーズにレースをしてもらおう!」
「馬鹿な!グランプリマシンと普通のマシンで勝負なんて勝負にならないんじゃないのか?」
思わずブレットは司会者に意見していた。
「別に構わない」
横から冷たい声が響いた。
「それとも勝つ自信が無いのか?」
Rは冷たい目でブレットを見ていた。
ブレットはRを見た。
「君が良いなら俺は構わない」
アストロレンジャーズのメンバーもブレットの言葉にうなずく。
その言葉を聞いた司会が宣言した。
「それではレース開始だ!」
アストロレンジャーズのメンバーとRが位置についた。
「手を抜くつもりはない」
ブレットはRに聞こえるように言った。
「当然だ」
Rは気にした様子も無かった。
レースは意外な展開を見せていた。
Rがブレットの直ぐ後ろにつけて2位になっていた。
「何故こんなノーマルのマシンがこんなに速いんだ?」
ブレットは少し焦りながら先頭を走る。
Rのマシン、ドラゴンデルタを気にしながら頭の中で計算をする。
でも振り切れない、計算を上回るRの走り。
ゴールは目前だった。でもRは直ぐ後ろを走っている。
「行け!ドラゴンデルタ!」
Rの声がブレットに届く。ドラゴンデルタはバックブレーダーに並んでいた。
「バックブレーダー!」
その状態のまま、ゴールに入って行く。
「どっちが勝ったんだ・・・?」
後から来たエッジが尋ねた。
「わからない」
ブレットは答えた。
「さあ、今の結果は・・・!」
司会から順位が発表された。
「グランプリマシンでもないのになぜそんなに速いんだ?」
ブレットはRに尋ねていた。
Rは相変わらずの表情でブレットを見て答えた。
「グランプリマシンもミニ4駆だと言う事だ」
「そんな事のはずがない!」
間髪入れずにブレットがRに言葉を返す。
「それ以外になにがある? 技術に頼りすぎだ」
ブレットは平静を保とうと呼吸を整える。
「NASAの開発した最新の技術を搭載したマシンが負ける訳がない」
Rはその言葉を聞いて苦笑した。
「技術だけでは勝てない、人の心まで計算通りにいかない、それだけだ」
その表情のまま逆に尋ねた。
「日本へ行くんだったな?」
ブレットは意外な質問をされて聞かれるままに答えた。
「ああ」
Rは少し考える素振りをしてブレットに言った。
「日本へ行けば分かるさ・・・、ミニ4駆をすると云う事もな」
Rはそれだけ言うとブレットに背を向けて歩き出す。
ブレットはそのまま考え続けていた。
ブレットは世界グランプリまでの間にセッティングや技術の事など色々と考えていた。
勉強をし直したり、セッティングを試した。
それでもRの言った意味が理解できた訳ではなかった。
大勢の人々に見送られながらアストロレンジャーズのメンバーは飛行機の搭乗口へと歩き出す。
見送りの人々の中にRはいなかった。
「・・・」
ブレットは小さくため息を吐いて気持ちを切り替える。
宇宙に行く訳ではないが空を飛ぶという事で多少の興味を持って滑走路の方へ視線を走らそうとした時、視界の角にその姿を確認する。
「R・・・」
先日のRとの会話を思い出しブレットは表情を引き締めた。
『日本へ行けば分かるさ・・・』
全ては日本へ行けば分かる。俺たちが正しいかどうかも全て!
Rはブレット達の飛行機が滑走路を飛び立つのを見送った。
日本へ行ったら彼らに・・・いや、あいつに会うんだろうな。
そして彼なら気づくはずだ。
そしてあいつも気づくんだろうか・・・?
J・・・。
RはJを思い出して目を閉じた。
そして再び目を開けて小さくなっていく飛行機を見送った。
ミニ4駆を走らせてる時には見る事の出来ないような、そんな表情。
優しい微笑みを浮かべながら見送っていた・・・。
そして日本・・・
ブレットは日本チーム・・・ビクトリーズの中にRに似た少年を見かけた。
雰囲気は違うが面差しが似ていた。
その色彩が同じだった。
その少年の名前はJと言った。
ブレットは自動販売機でコーヒーを買ったところで視線を感じて振り返る。
そこにはJが立っていた。
なぜが懐かしい思いがした。そう思った瞬間、話しかけていた。
「ビクトリーズのJ・・・だったな?」
予測可能範囲(笑)
アメリカでのRねーちゃんとブレットの話を
「書くかもしれないんじゃない?」とか思った人!
あなたはエライ!
「海を越えた答え」そのものはJくんからの視点だったので
ブレットとRねーちゃんのやり取りがなかったのが心残りでした
結構細かく話を作っていたのでこれだけでもと思い書きました(^^)
レース結果はどっちが勝っても納得できないので書かなかった
引き分けにしようと思ったけどそれも止めた
この話・・・短編だよね・・・?
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