「シーサー」



 遥かなる遠い星で災いを追い払う為に作られた獅子がいた。その名をシーサー。
 ジャッド兄さんはその獅子から名を貰い自分のゾイドにシーザーと名付けた。シーザーは兄さんの亡き後、その名の通り災いを齎す者を追い払っていた。
 そしてバンを新たなる乗り手として選んだ。
 アタシは蘇ったシールドライガーを見上げる。兄さんが村に戻ってきたらいつもここにシーザーを置いていたその場所、シーザーにも懐かしい場所。
「久しぶりだね、シーザー。アタシを覚えているかい?」
 シーザーは軽く唸った。アタシは気をよくしてシーザーを撫でてやる。
「兄さんの意思を、墓を、守ってくれてありがとう」
 アタシはシーザーの気の流れが良くなるように思いを込めて撫でてやるとシーザーはそこに屈んだ。心地が良いと良い。
「アンタもこっちへおいで、バン」
 アタシは後ろで躊躇いがちに佇むバンに苦笑して呼んでやる。新しいシーザーの相棒はシーザーの様子を身に来たのだろうけれどアタシがいたから躊躇ったんだ。
 シーザーはアタシの兄の相棒だったから、アタシの方がよくシーザーを知っているから。
「アタシに気を使う事はないよ。シーザーはジャッド兄さんに代わってアンタを次の相棒だと選んだんだ」
「ムンベイ……」
 困った様なバンの声。バンは優しい子だ。
「ねぇバン。アタシをシーザーに乗せてくれないかい?」
「うん」
 バンは快く承諾した。

 バンがシーザーを操縦する後ろでアタシは兄さんにもこうしてシーザーに乗せてもらった事を思い出す。流れてゆく景色が楽しくてよくせがんだものだ。
 砂漠の景色に重なる既視感。
「バン?」
 それはジャッド兄さんと同じ動き、兄さんの癖。ゾイドの癖は乗り手の癖、でもバンは癖が出来るほどシーザーに乗っていない。
「シーザーってさ、時々俺の操縦を否定するんだ。でもシーザーが望んだ様にしてみると本当にそっちの方が動かしやすかったりしてさ。ああ、コイツは俺に教えてくれてるんだって思う」
「シーザーが?」
「ムンベイの兄さんってきっとシーザーが一番動きたいようにしてやってたんだな」
 ゾイド自身の自然な動きが一番理想的な無駄の無い動きなのだと云う。ゾイドの動きに癖が出来るのは乗り手に癖があるからだ、時としてそれはゾイドに無理な動きや無駄な動きをさせる。
「そっか」
 これはシーザー自身の動きなのだ。その事に少し残念に思いつつも兄さんがシーザーを大切にしていたのだと伝わって嬉しくなる。
「俺さ、まだゾイド乗りとしては半人前で、シーザーやムンベイやアーバインたちに教えてもらう事もいっぱいあると思う。でもいつかきっと俺は1人前のゾイド乗りになって、ムンベイの兄さん認めてもらえるような、シーザーの相棒として誇れるようなゾイド乗りになるよ」
 バンの決意が伝わる。
「アンタはきっと良いゾイド乗りになるよ」
 アタシはバンにそう言った。それ以上の言葉は必要ないだろう。
 兄さんが望んでいたのは腕が良いゾイド乗りではない、心優しいゾイド乗り。だからシーザーを託されたバンはもう兄さんに認められている。
 そのバンと一緒に旅をして成長を見る事が出来るアタシは幸せだ。

 シーザーから降りて振り返ればそこに佇むのは獅子と傍らに立つバンの姿。
 災いを追い払うという獅子よ。
 願わくばこの心優しきゾイド乗りに降りかかる災いを退けてその助けとならん事を。







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