たんぽぽ 1



 今日は演習で、いつもの様に遅れた事への文句を言いながら演習場へ向う部下と言う名の教え子達が砂利道の脇でぽつんと佇む夏の高い日差しに向って顔を上げる向日葵の横を駆け抜けていく。
 向日葵は子供達の背よりも大きくて、落ちた影を過ぎる時に少しだけ自分に被さって来たからその存在を主張されて目を留める。
「何で一本だけこんな所に咲いてるんだってば」
 立ち止まって振り返り、見上げるしかない向日葵への素朴な疑問。周囲を見渡せば少し離れた所に向日葵の群集がある。
「ほら。あそこに向日葵がいっぱい咲いてるから、種を蒔くときに誰かが種を落としたんじゃない?」
 群集する向日葵を指差してサクラが言う。「う〜ん」と腕組をして「そうなのかなぁ」とぶつぶつ呟きながら首を傾げていても別の理由が見当たらないらしく。
「それ以外の何がある」
 にべもなく告るサスケに反論しようと突っかかる事で思考を転換させられてしまっていた。
 真横にある黄色い花弁、肩のあたりでも同じ様な黄色が揺れている。
 群れから外れても大地に根を張り太陽を見上げる向日葵に。
「ナルト、お前は似ている」
「え?」
「何に似てるの?」
「……」
 自分を見上げる子供達の顔へにっこりと弓の様に目を細めて笑んでやりながら黄色い頭をくしゃりと撫でた。
「お前がね、向日葵に似ているって言ったんだよ」
 言って少し屈めばナルトの顔を覗き込む事になる。そして「おや?」と思う。あまり嬉しくない様だ。理由は直ぐに分かった。
「黄色い頭だからだってば?」
 ナルトが口をへの字にして見返してきて、その抗議の目を受けて訂正しようとした時。
「何言ってやがる、ウスラトンカチ」
「そうよナルト。カカシ先生の言う通りじゃない」
 同じ様に思うところがあったのかサクラと、意外にもサスケもナルトに似ていると言う。
「だって何で似てるのか分からないってばよ」
 正しく自己を評価していない子供は己が周りに持たせる印象に気付いていないらしい。それがコイツらしいとも仕方が無いとも思え苦笑しながら名前を呼ぶ。
「ナルト」
「何だってばよ」
 笑われたと思ったナルトは拗ねて膨れっ面だ。
「『まっすぐ自分の言葉は曲げねぇ』そう言ったそうだな」
「そうだけど」
 だからどうしたと態度が言う。
「向日葵ってのは太陽に向って真っ直ぐに立ち顔を上げている。お前も……顔を上げて目標に向って真っ直ぐだ」
 だから、そんな姿が似ているんだと言葉にせず頭を撫でる事で伝えてやる。「お前らもそう思うだろう?」とサスケとサクラに目で問い掛ければサクラは「うん、うん」と頷いて、サスケは「それぐらい分からないのか」と睨んでいる。
 それでも納得していないのかナルトは何かを言いたそうにしている。
「どうした?」
 切り出してやればナルトは思いに切りを付けた様だ。
「でもイルカ先生はタンポポになれって言ったってばよ」
 どうやらその事を撤回するようで納得できなかったのだろう。
「それはどういう事を言われたんだ?」
 そんなに拘るくらいならさぞ良い例えだったのだろうか聞いてみたくなった。それはサスケとサクラも同様で興味津々と言ったところだ。




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