たんぽぽ 2
下忍認定試験の後、ナルトはイルカにお祝い代わりとラーメン奢って貰った。寒さの残る夜に暖かい食べ物で体の内から温められて心も温かだ。
「あったけぇってば」
イルカが勘定をしている間、ナルトは温もりを逃がさない様に体を動かしていた。そして前屈みになった時、その目の前の路肩に咲く花に気付いて屈み込んで見詰めた。
「何してるんだ? ナルト」
勘定を済ませたイルカは屈んでいるナルトの上からナルトの見ているものを覗き込む。
「タンポポだな。ってお前、相変わらず草花が好きだなぁ」
頭上から降ってきた声に振り返ると真上気味の真後ろにイルカがいた。
「うん、特にタンポポって一生懸命だから好きだってばよ」
そう言ってにかっと笑うナルトにイルカは少し考える様な間を置いてから告げた。
「……そうだな。お前はタンポポみたいになると良いなぁ」
「それって……雑草みたいにって事か?」
ナルトが憮然と問い返すとイルカは少し慌てて言葉を足した。
「あー、違う違う。そうじゃなくってだな。何て言ったら良いんだ……」
ナルトはじっとイルカの次の言葉を待った。ナルトのその視線をちらちらと見ながら必至で言葉を捜す。
「だからな」
コホンと咳払いをして教師らしく繕って、それでも眼差しは優しくナルトへと向ける。
「まあ確かに、タンポポは冬の冷たい雪の下でも葉を広げて寒さを耐え、踏みつけにされても挫けずに花を咲かせる。その強さはどんなに辛い時でも歯を食いしばって耐え、失敗しても諦めずに努力していく事として見習う必要はある。それは誰でも、特に忍者を志す者や忍者なら誰しも持ちえなければいけない事だ」
「うん」
それは俺がタンポポが好きな理由だと力強く頷く。
イルカはナルトの隣に屈んで花の咲いたタンポポの隣にある綿毛の前で小さく風遁の印を組む。そして小さく、力強く起こった風はその白い綿毛を空へと舞い上げる。
「綿毛はな、風に乗って種を蒔く。そしてまたどんなに辛くてもそれを乗り越えて花を咲かせる」
舞い上がっていた綿毛はふわふわと雪の様に降りて来る。
「このタンポポも今はこの周辺だけかも知れないけど花を咲かせて綿毛になって、それを繰り返す度に何れこの木の葉隠れの里中に広まって行くだろう」
花の傍らに、手を伸ばしても届かない道の上に、そこかしこに舞い降りた綿毛。
「お前がこのタンポポの花を見つけた様に辛い時を乗り越えたら誰かが認めてくれる」
季節が巡る度に広がって行く元は一つのタンポポ。
「今はお前の周りだけかもしれないけど、それを繰り返す度にお前を認めてくれる人が増えたら良いよなぁ」
イルカはナルトの頭を撫でながら小さなタンポポを見ていた。
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