「風のライオン EXTRA」

 周囲にいる人間にしてみればかなり珍しい組み合わせだと思わずにはいられない。
「任務は無事に終わったと連絡があった。もう直ぐ帰って来るそうだ」
 シュバルツは格納庫のハッチを開けると帝国軍最高機密であったゾイド、ライトニングサイクスの乗り手に声をかけた。
「出迎えか?」
 アーバインはライトニングサイクスのコックピットから調整をしながら開け放たれたハッチに佇むシュバルツを見た。
「出迎えにもならんよ」
 シュバルツは遠くを見やりながらそう返す。
「一緒に行かなかったのだな」
 確認のような質問、その声と振り返った顔には僅かな疑問が浮かんでいた。この距離でも分かるそれにアーバインは苦笑した。
「ライトニングサイクスは良い相棒だ。最新型・軍事機密として開発されただけはあるが、その分調整が複雑化しちまっててアイツらの出発に間に合わなかったんでな」
「それは残念だったな」
 帝国製、アンタの国が作ったんだろうがと言外に含ませながら返すがシュバルツは言葉ほどの感情を持ち合わせずに言った。
 シュバルツはライトニングサイクスを見上げそのしなやかな機体に幾分かの羨望を感じながら、同時に落胆していた。
「居残り、という事か」
「アンタと同じな」
 お互い顔を見合わせて苦笑する。
 後方支援と言えば聞こえは良いが、送り出して待つ、と云うのはこう言う事なのだとアーバインは思う。
「俺には向かねぇってのが良く分かったぜ」
「そうだろうな、私も向いていないので良く分かる」
 アーバインはシュバルツのそれに眉を顰めた。
「私は軍人だがゾイド乗りでもある、そう思っていたが?」
 シュバルツはアーバインの反応に答えを返す。アーバインは溜め息をついてライトニングサイクスの調整の手を止めた。
「確かに、テストパイロットと違ってアンタならコイツを乗りこなせていたかもな」
 アーバインは自分がライトニングサイクスを乗りこなせていないともシュバルツに劣っているとも思わない。ただ帝国軍の技術の粋を集めたこのゾイドの乗り手としてトップクラスの腕を持つシュバルツの名が無かったとは思えない。
「始めから私の名前は無かった」
 シュバルツはアーバインの意図を汲み取って答える。
「それに、このライトニングサイクスにはアーバイン、お前以上の乗り手はいなかったと思うよ」
「それはどうも」
 アーバインは複雑な思いで礼を言う。
 シュバルツはならば何故羨望と落胆を感じるのか、ライトニングサイクスを見上げながらそれを考えた。
 アーバインはその様子を上から見て溜め息が出そうになった。親切心なんてものは持ち合わせていないはずなのにと思いながら、自分が結構お節介な事をしてきているのに気付く。
「アンタは前線に出てくるなよ」
 それは警告のように。
「それがアンタの役目だろ」
 励ましのように。
 シュバルツはアーバインの意図を読む。
「そうだな」
 そして疑問の答えも同時に得る。
 羨望は一緒に前線で戦える事、落胆は……戦えるはずなのにと、それは勝手な要望から。その自分の心の狭量さに気付く。
「暇なら手伝ってくれると有り難いんだが?」
 アーバインはどこか楽し気にシュバルツに提案した。
「良いだろう」
 それはとりあえずの妥協案、何もせずに待つよりも力になれる事を。
 シュバルツは感謝の言葉の変わりにライトニングサイクスの調整に着手した。

 待つもどかしさを感じながらアーバインは考える。
 シュバルツの戦える力は有っても地位に縛られてそれが出来ないという事、それも辛いだろう。
 だがバンはシュバルツに一緒に戦って欲しいと望んではいない。
 自分とバンが一緒に戦える理由、それは信頼、仲間という絆。
 バンがシュバルツを信頼していないと云う訳ではない。
 ならば何故一緒に戦う事を望んでいないのか、答えはシュバルツの傍にいる時のバンを見れば簡単だ。
 如いて言えば安らぎの場所。
 だから待っていて欲しいと思うのだろう。
「俺達のように喧嘩なんてザラと云うのもどうかと思うが、お互い言葉が足りないんじゃねぇのか……?」
 シュバルツは少しだけアーバインに視線を向けただけで何も言わない。呟いた言葉がシュバルツに届いたのかはアーバインには分からない。
 アーバインはブレードライガーへと通信文を送信した。

『あんまり待たすんじゃねぇ! でないと待ちくたびれて、フラれるぞ』









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