居眠りイベント〜皇太子逆襲(?)編〜


 「シオン、いるか?」
 クライン王国皇太子、セイリオス=アル=サークリッドが勢い良く扉を開けたのは、この国の若き筆頭魔導士シオン=カイナスの執務室兼私室であった。
 シオン=カイナス……実力、容姿、家柄、共に申し分ない男である。
 ただ惜しいことに、その実力は真っ当な方向に使われず、容姿の良さは女性相手に最大限に生かしすぎ、家柄の良さはその無法ぶりにより勘当の憂き目にあい無いに等しい。
 それでも皇太子にとっては、良き右腕であった。
 ただこの右腕、時折皇太子に向かって良からぬ事をしでかす事がある。
「シオン」
 部屋の中央のテーブルには、見慣れた瑠璃色の髪の後ろ姿。
 ところが名を呼ばれても、振り返ろうともしない。
 セイリオスが近寄り、シオンを覗き込んだ。
 ……眠っている。
 頬杖をつき、目を閉じて、ほとんど寝息も立てずにシオンは眠っていた。
 少し皮肉混じりに、意味ありげな色を浮かべる瞳を閉ざしたシオンは、何処までも穏やかで、古の賢者もかくやというような英知さえ感じられた。
 男らしい線の鋭さを持った、彫りの深い整った顔立ちからは、血筋と育ちの良さ、本人の誇り高さから溢れる気品があった。
「よく眠っているな」
 セイリオスはため息をついた。


 ……ここで選択肢(爆)……。
1,起こす
2,そのままにする。
3,くすぐる。


 「……決まっている」
 セイリオスが不敵な笑みを漏らした。
 いきなりシオンの脇に手をやりくすぐりだした。
 だが筆頭魔導士は、ぴくりともしない。
「……?なんだ?」
 セイリオスは別の場所もくすぐってみた。 
 シオンの背中に指を滑らせたり、首筋や耳元に息を吹きかけてみたりもしたが、全く動く気配さえない。
「……これだけやっても起きないのか……」
 呆れたように呟きながら、セイリオスは自分の来ているマントを取ると、シオンに着せ掛けた。
「疲れてるみたいだな」
 寝かせてやろう。
 セイリオスは、そのままシオンに背を向けた。
「フッ……」
 背後から小さな声。
「ふ?」
 セイリオスは慌てて振り向こうとした。
 がたっ。 
 椅子が動く音と同時に、体が浮いた。
「な、なんだ!」
「やってくれるじゃないか、セイリオス!」
 皇太子は筆頭魔導士の肩に担ぎ上げられてしまっていた。
「シ、シオン!起きていたのか」
「当たり前だ。あれだけ挑発されて、寝てる奴があるか!」
「ちょ、挑発なんてしてない!」
「俺の耳や首筋に息を吹きかけたりしといて、挑発してないもないだろう?」
「あれは挑発じゃない!だいたい、気づいていたなら起きろ!」
「聞かん。責任は取ってもらうぜ」
「せ、責任だと」
 シオンがセイリオスを担いだまま、寝室に使っている部屋の方に歩き出した。
「ま、待て!何をするつもりだ!」
「男らしく、責任を取って貰うぜ。体で」
「か、体って……シ、シオン!またんか〜〜〜〜〜〜〜〜」
 皇太子の雄叫びが、クライン王宮に響き渡った。

 この後セイリオスがどうなったのか……誰も知らない。

                                    END

  


病み上がりの聖さんに、「誕生日なの〜、誕生日なの〜」と暗示をかけて(おい)書いてもらった「皇太子逆襲編」!全然、皇太子が逆襲できてない辺りが素敵(笑)セイルは、きっとこうやって、一生シオンには勝てないんだわぁ。いいのよ、それがこの二人の幸せなんだしぃ。えへへ、聖さん、どうもありがとうでした!ちなみに、私は、セイリオスがこの先どうなったかは、知ってます(笑)



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