〜プロローグ〜

 第二章

陰鬱な雰囲気が流れている

それもそうかもしれない

捕虜ともなればそうなる、いつ殺されるかどうかわからないからだ

投降すれば話しは別かもしれないが、

 いつ脱走、裏切るかわからない捕虜がいてもしょうがない、それに食料が無駄だ。
と考える指揮官だったらやはり最悪の事態は免れない

 俺は今、どういうことかそういう捕虜の集団と一緒に歩いている。手かせをつけられて。

どうやら日本側の国まで歩かせられるようだ

このまま西洋の国を攻めるわけではないらしい、というか西洋側が日本の国に攻めてきたみたいだ

日本側はただ迎撃に出ただけな模様

「しかし、今何年何月何曜日!?あんたの国の名前は!?そして相手の国はなんなんだ!?
 ここはどこ!?あたしはだぁれ!?」

前を歩いている金髪で良い男っぽいが疲れきっている顔の捕虜に質問を浴びせ続ける、
最後の方はノリで言ってみた。

「・・・今は、ミルトン暦198年、5月1日だ。」

突然質問したにもかかわらず答えてくれる律儀な奴かもしれない
っていうか、ミルトン暦ってなんだ!?聞いたこともない

夢なら覚めてほしい・・・が、しかし、退屈で平和な現実に戻されるのもいやな気がしてきた

それに・・・あまりにもリアルすぎる、根拠はないが、夢ではない、と言いきれる・・・

「となれば、順応するのみ!!」

人間は順応力が素晴らしい。が

「・・・お前はやっぱりキチガイか」

さっきの捕虜に"やっぱり"と言われてしまった。さっきの質問の内容を考えれば当然といえば当然かもしれない

「あぁ、キチガイだ」

納得してみる

「・・・寄るな」

なかなか無茶なことを言われてしまった

俺達捕虜の集団は1列縦隊にされ、

すっぽりと手首と首が入るくらいの穴が開いている、木でできた枷をつけられている

さらに首に縄をかけられ数珠繋ぎに捕虜達の首と首に繋げられている

なかなか考えたもんだ、腕が自由にならないし首が痛い。一人逃げようとすると周りの

奴らの首が締まって死んでしまう恐れがある

関心してる場合じゃない、このままだと殺されるかもしれない・・・

しかし、わからないことばかりだ

周りを見渡すと地平線が見えるほど平原が広がっている地形

確実に日本ではない

しかし、彼らの服装は、本で見た日本の戦国時代の兵装

西洋側の方もそうだ、ゲームででてきそうなプレート装備

雑兵は、そんな高級な装備はしていなかったが。

ひょっとすると、実は日本は、"大陸"に進出したのでは!?

そうなると各地の歴史の本は嘘を書いていたのかもしれない

「んなわけねーか・・・」

"キチガイ"らしく独り言をつぶやきまくる、なぜか前の金髪の捕虜との間が広い、

早歩きしているようだおかげで首がキツイ

「キチガイがそんなにいやなのかコラ」

とでも言いたいところだが、俺もキチガイはイヤ、というか関わりたくないから
言うのをやめておく

それよりもっと情報が欲しい

「ヘイ!そこな人!」

当然前にいる金髪の捕虜に向かって言う、縄と枷のせいで後ろを向けないからだ
っていうか普通に声をかけれない俺。

「・・・」

シカトされてしまう。泣きたいかもしれない。

すると、ドンッという鈍い音と共に

「さっきっからうるさいぞそこ!!」

と捕虜の護衛というか逃げ出されないための兵に怒鳴られてしまう

叫びたいところだが、ゲホゲホッとしか言えない

なぜならさっきの鈍い音は、その腐れ一兵卒に腹を突かれてしまったからだ

槍の柄の部分で。刃の部分よりはましだが。

なんとか普通に呼吸ができるくらいになると遠くの方に城壁が見えてきた

日本の格好してるくせに西洋風の城だ

「やっぱり本が嘘ついた!?」

思わず叫び気味になってしまう、また腐れ一兵卒に殴られるかと思いチラりと顔色をうかがう

めんどくさいとばかりにちらりと一瞥(いちべつ)されただけだった

「なんか奴隷の気持ちが分かるなぁ・・・」

すでに奴隷的な身分なのだがなんとなく実感が湧かない
もちろん聞こえない程度につぶやいてみただけ

「ワァァァァァ!」

今度は戦争での叫び声ではない、人々の歓声のようだ

まぁ勝っての帰宅だからな、いや帰宅とは言わないか、凱旋か

大勝だったし、それに、全然被害が少ないともなれば民も大喜びだろう

自軍に関しては・・・

俺達捕虜は巨人が通れそうな門をくぐると、歓声ではなく

興味を無くした者は去るが、残っている者の、侮蔑(ぶべつ)の目、
そして・・・

「死ね!」「私の彼を返して!!」

罵声と共に石が飛んでくる、例え勝ったとしても帰ってこれない家族もいる

その家族達の些細な報復だろう、とっても痛い、痛いというか死ぬッ!!

そりゃ家族殺された恨みは凄いだろう、かなり全開で石やらを投げてくる

頭に当たったら致命傷なくらいの勢いで・・・

自分の身の安全も考えたいが前の奴や後ろの奴が食らっても困る、

石つぶてを食らって倒れるもんなら連結してる縄で首が締まってしまう・・・

・・・

なんとか城までたどり着いた

何発か腹や足にヒットしてしまい、心体ともにボロボロになってしまった

何人かは脱落、死んでしまった模様だ

しかし、かなりの量の捕虜だ、この城も結構大きいが、こんなに入るもんなのかな?

と疑っていたが、城には定番の地下牢にいかされ、適当に何人ずつ、と牢に入れられた

地下は結構広いもので、全員入るくらいみたいだ、というか余りそう

俺も牢に、牢番に押されるように入れられた

先客が何人かいたが、皆死人のようにグッタリとしていた、泣いてる者もいた

ふと見渡すと、見知った顔を発見する

「例の捕虜の行進の時、前にいた金髪の捕虜である」

キチガイらしく説明口調で言ってみた。

「クッ、コイツと同室か・・・」

相当嫌われている。

そろそろ誤解を解かねばならない

「はっはっは、そう毛嫌いするなよ、ちょっとキチガイを装ってみただけだし」

さわやかに言ってみる

「・・・精神異常者は皆そう言う」

失礼な奴。

「・・・まぁ、キチガイと思うならキチガイでいいけどさ」

「おう」

間髪入れず了承される。
やっぱり泣きたい。すでに涙目になっているかもしれない

「うぐ・・・、ところで質問があるんですが」

下手(したて)にでてみる

「・・・」

シカトされているのか!?

「この国はなんて名前でしょうか?」

あの時答えてくれなかったことを聞いてみる

「・・・」

またシカトされ、そろそろ腹が立ってきた

「いい加減教えてくださいましやがれコラ?」

文法がかなり変になってきた

「・・・話しかけるなキチガイ」

「ぬがぁぁぁぁぁ!!」
キレた。

・・・

看守がかけつけ、警棒のようなもので叩かれるまで乱闘は終わらなかった

「クッ・・・あの看守、全開で殴りやがって・・・死ぬかと思ったぞ」

血をだらだら流しながら金髪は言う

「フッ、お前も良いパンチ打ってきたぜ・・・」

無理矢理男の友情を深めてみる俺

「チッ」と金髪は舌打ちしたが、もう俺をキチガイなどと言わないだろう
そんな気がした

「ところで"三橋"よ」

「勝手に名前決めんな!!」

反論された。

「ぬぅ・・・名前がわからないから言ってみただけだ」

ちなみに、俺の中では金髪といえば"三橋"である。

「んじゃ、"さんちゃん"」

「変わってねぇ!!」

三橋と同じワガママな奴だ

っていうか、理子ちゃんが三橋を呼ぶときのニックネームをなぜ知ってる?

「まさか、お前ひょっとして、現代日本にいた奴なのか!?」

ふとした疑問を投げかけてみる、"現代日本"というのもなんか変だが

そういえばそうだ、こういう世界にきたのは俺だけではないのかもしれないのだ

「げんだいにほん?なんだそりゃ、聞いたこともない名前だな」

質問の仕方がおかしかったかもしれない

「題一問!!1990年代の日本の首相を1人でもいいから名前をあげなさい!!」

日本にいればどんなバカでも日本の首相の1人や2人くらいは言えるだろう

・・・一部を除く。

「なぜ突然問題を出す!?」

当然だが不満をもらされる

「題一問!!1990年代の日本の首相を1人でもいいから名前をあげなさい!!」

ロボットのようにしつこく言ってみる

また"キチガイ"と言われシカトされてしまう危険性はあったが。

「知らねーよ」

むぅ、バカなのか!?

ガンッ

「何故殴る!」
「なんとなく侮辱された気がした・・・」

その通り。

「まぁ殴ったのは貸しにしといてやろう」

「おいおい・・・」

不満たらたらで言われたが質問を続ける

しかし、こいつはそんなにバカに見えない、日本の歴代首相の名前の1つくらいは言えそうだ

となれば日本人ではない!?っていうか今何語でしゃべってんだ!?

日本語が全世界共通語なのだろうか・・・

まぁそれはそれで嬉しいから置いておこう

「お前は、アメリカ人?フランス人?イギリス人?ロシア人?アフリカ人?
 原始人?北京原人?地球人?火星人?エイリアン?ブラックオイル?グレイ?」

たて続けに言ってみる、ノリでどんどんおかしくなっていったが。

「地球人に決まってんだろ!!」

地球という概念はあるらしい

「嘘つけ!!」

とりあえずノリで言ってみる

「クッ、このキチガイが・・・お前の方が地球人というのに疑いがあるぞ・・・」

また言われた。っていうかどんどん酷い言われようになってきた

「イジメカッコワルイ」

前園並に言ってみた

「うるさい!!」

当然の如く一喝された

「しかしお前は質問ばっかりだな、俺も一つ聞いていいか?」

確かに質問責めばかりだったな

「なんて名前なんだ?」

そういえば俺は、名乗ってなかった

「チャウグナルファウグンだ」

適当。

「チャウグナルファウグン?言いにくい名前だな」

確かに。

「お前に言われたくない」

「俺はまだ名乗ってないだろ!!」

ツッコミの上手いやつだ

「それに、嘘だ」

「ザケンナ!!」

その後、名前を教え合い、色々と話し込んだ

地下の牢獄に似合わないほどにぎやかに、今まで十分にぎやかだったが・・・

時折、迷惑そうに同室の捕虜に睨まれるがすぐに眠りだした

話しこんで疲れたのか、戦のせいで疲れたのか、それとも両方か
クロは寝た、クロというのはこの金髪である

「金髪のクセに・・・」

ガスッ

寝ているはずのクロに蹴られる。

「俺も寝るか・・・」

色々ありすぎた、寝る前に整理しよう・・・不眠症だからな

寝る前にそういうことばっかり考えているから寝れない
だから不眠症、という説もある
クロが言うにはこの世界には国が結構あるそうだ、といっても16〜17国くらいらしい

王のいない民衆だけの自治都市、軍事国家、法治国家、etc...

一つの大きな大陸に、国境を敷いてその国々があるらしい

「AoKでいう大陸マップか」

ガスッ

「寝ろ!」

クロに一喝されつつ蹴られた、いや逆か!? どうでもいいが。

ちなみに、日本の兵装をしてたり、西洋の兵装をしてたりしてたのは
文化の違いらしい・・・それだけで説明するには相当キツイと思うが。
やはり変な世界だ・・・

西洋の兵装をしていた国の名前は"ヴェノマスファング"という

かなりの強国、大国で、まぁ狙われたらお終い的な国らしい

いつの時代でもそうだが、大義名分がないと国と国との争いは起きない

問答無用で戦争なんぞおこしたら、自国の民衆、兵卒、その他もろもろだってやる気もでない

なおかつ、他の国も手助けしにくるかもしれない

それも、「突然襲ってきた国から守ってやろう!!」
という大義名分を掲げて・・・
俺から言わせれば下心丸見えなんだが、まぁいい。
今回、その"ヴェノマスファング"が攻めてきた理由は

「うちの国の商隊が襲われた、したがってその弔い合戦、及び自国の自尊心を守るため、貴国を討つ!!」

らしい

となれば日本の兵装をしていた国、"鳳仙花"(ホウセンカ)という名前らしいが

「そんなの知るか!お前んとこの山賊がやったんだろう!ザケンナ!!」

という大義名分らしい、ちなみに大義名分は、"クロ訳"である。「ザケンナ!!」なんて言うはずないしな

それにしても攻められて守るにも大義名分がいるのか・・・

まぁでもちゃんと言い返さないとな
「ヘヘヘ、オメェんとこの商人どもは美味かったぜブヘヘ」
なんて言ってる国なんて、速攻周りの国にツブされてしまうからなぁ
・・・そんなこと言う国ないだろうが。っていうか食ったのか?

自分自身に素朴な疑問を投げかけつつさらに頭の中の整理を進める

大国の"ヴェノマスファング"に比べ、"鳳仙花"はかなりの小国らしい

まぁさっき、いやもうかなり前になってしまうが、その時の戦闘でも

鳳仙花軍は"ヴェノマスファング"に比べ全然少なかったしな

クロが言うには
「絶対に、ヴェノマスファング軍が勝つと思っていた・・・」
「だから軍に志願した」らしい
確かに数では圧倒的だったしな

数が少ないせいで、安心してたのか、少ないとはいえ鳳仙花軍が精鋭すぎたのか

指揮が凄すぎたのか・・・

「まぁ全部だろうな」

と思う、舐めてかかってきたおかげですんなりと裏に周れたし

その周れる速度も速い、少ないとはいえ、別働隊が周りきるまで耐えきった

指揮官の言うことをちゃんと行動できる、精鋭すぎる。

その本体が耐えきれなかったら全てが終わってしまう作戦を大胆に行える、あの指揮官・・・

小高い丘の上で見たきらびやかな兵装の奴・・・

豪奢(ごうしゃ)な兜のおかげで顔が見えなかったが・・・

恐らく奴が指揮官なんだろう、全体を見渡せる小高い丘に前々からいたのだろうか・・・

うとうとしながらそんなことを考える

鉄格子の窓を見るとうっすらと外が明るくなっている

・・・外が見える?

地下だと思っていたが地下ではないみたいだ

地下の道は相当長かったからなぁ・・・

ただ地下道通っただけかもしれない、まぁどうでもいいや・・・

本気で寝むくなってきた

明日も、いや今日も何か起こりそうだ、とりあえずは寝よう・・・。



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「総勢10万の兵がたった4万の兵に全滅だと!!!」

鳳仙花国、百合城から20Km離れた場所に陣を敷いている陣営にて怒号が響く

「はっ・・・」

敗軍の将と思われる者が申し訳なさそうに顔を伏せる

「しかし、」

「言い訳などするな!!!」

偉そうに、実際偉いのだが髭を生やした色黒の、見た目はもう戦闘しか能の無い野獣が咆える(ほえる)

「神聖なるガタノトーア様の兵を無駄に死なせた罪は重い・・・、今ここで貴君を処分してもいいのだが?」

ビクッと敗軍の将は震える

「貴君の残党をわしの軍に加えてよろしいなら、後で貴君を弁護してやろう」

ガハハと下品な笑いをもらしつつ恩着せがましく言い放つ

「はっ・・・」

こんな奴に恩など貸したくないのだが、生きるためには仕方がない

ガタノトーア王は、失敗には厳しいのだ

「それでは・・・」

疲れたように、"髭大将"と異名だかニックネームだかを持つ"オールドワン"将軍に一礼し

オールドワン将軍のテントから離れる

それを見届けた後

「ラルヴァ将軍が破れた軍相手に圧倒的に勝つ。ガハハ!悪くない!!」

妄想にふけりつつ、野獣はひとりごちる

「大勝に喜んでいることだろう・・・そういう時は兵が最も油断する
 今夜"夜襲"だな・・・」

クックックと、もう勝利したかのように、必勝の策ができたかのように黒髭は一人笑う。

そして夜は明ける・・・


第二章   完