怪我
『ああほら、そんな事すると』
辰羅川は一瞬、冥の執った行動に呆れを混じらせて驚いた。
口の端に付いたのは唾液で湿った少々の土と、血液。
量のあるそれは、独特のぬめりを持って冥の唇を彩った。
『こンくらい舐めときゃ治・・・ ・・・辰?』
辰羅川は血の滴り落ちる冥の腕を、彼の口許から優しく引き離した。
そして、呆気にとられる冥を余所に紅い血液の出場所、そのすり傷を
周りに流れ出る血液と共に自らの口に含み、吸い上げる。
『バカ、何して・・・』
急の事に赤く染まった顔で、冥は捕らわれた腕を逃がそうとした。
が、しかし、いつの間にか強く掴まれた腕は、そう簡単には。
吸い上げられた多量の血液が、不作法に地面に吐き捨てられる。
唾液混じりのそれは草の多い地面にいとも簡単に吸い込まれていく。
血を吐き捨てた辰羅川の口許にも、揃いの様に赤黒い血液がまとわりつく。
冥よりも身長の低い彼は見上げ、そして不敵に笑みを浮かべた。
『ほら、舐めただけじゃ治りませんよ。』
確かに、当の傷口からは命を証明するように新しい血が遑なく流れ続けている。
『・・・』
しかし冥の目線の先は傷には無く、血を付け微笑う「彼」にただ向けられていた。
『ちゃんと止血しましょうね?』
辰羅川の足が医務室の方に向かう。
倣って、冥の体もその方向に進み出す。
自分よりずっと色の薄い辰羅川の腕が、冥の傷口を触れぬ様に覆う。
傷周辺に付いた血液が、その覆う手を汚す。辰羅川は全くそれに無関心だ。
『・・・やっぱ超馬鹿』
自分を慈しむ白い手が紅く汚れるのを見て、もう一度冥は悪態を吐いた。
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あーい。
11月14日付けの日記に書かれていた小説です。
月が移動したので、作品の中に持ってきました。
いかれポンチなお話ですんません・・・。
しつこい様ですが、血は舐めちゃいけませんよ?
帰るっす