BaBy,yoUr My SweeT ChocoLaTe

「分からないですか?」
信二の指が優しく冥のノートの端を触る。
指に気付いた冥が弾いたように顔を上げると、真っ黒な瞳と自分の視線が当たった。

「・・・ん・・・」
短く返事をすると、また目の前の宿題に目を移す。
今日は、ともすれば雪の降りそうな程寒々しい空。
二人だけを受け入れているコタツが心地よい。
勉強をさせるには、とても快適すぎていけないなと信二は心の隅で思ってはいたのだが、
案の定冥はうとうとと目を据わらせている。・・・可愛らしいと言えば可愛らしいのだが。

「何処ですか?」
信二が顔を覗き込むように近づくと、無言のまま冥の指だけがだるそうに動く。
『用例:(多分〜だろう)で作文しなさい』
指で押された教科書に、うっすら皺が出来る。
「・・・ああ、其処はですねぇ」
「・・・・・・・答教えろ」

優しくかみ砕いて教えようとした信二の言葉を遮るように、冥が答えを求める。
「駄目ですよ、自分で。」
なだめるように冥の髪に触れた。気持ち良さそうに冥の目が閉じる。
(・・・また寝てしまいますね)
触れていた手を戻すと、冥の瞳が不満そうに開けられる。

不機嫌そうに戻った手を取り、信二のノートを覗きながら
「お前何て書いた?」
姑息な手段に出る。
「僕の写したらバレますよ」
当たり前だ。同じクラスで同じ文を提出するバカは猿野くらいだ。
当然という風に、冥の瞳が信二を捕らえ睨み付ける。
「いんだよ、参考」
「・・・読めます?」

とても整ってはいるが、英文は綴り文字の癖があるせいで素では読みづらい信二の字面。
「・・・」
勿論つづり文字など触れたことすらない冥は、眉をしかめた。
「何?I thi・・・」

「(思うに、多分私は彼にはいずれ追いつけなくなるだろう)」
流暢な英語が信二の口から紡がれる。
「・・・え?」
母国語以外の言葉を話されて、一瞬冥の表情が固まる。
「・・・て書いてあるんですよ。」

「・・・」
不思議そうに冥の口許に手があてがわれる。
「何て意味だ」
「さぁ?」
信二が目を細めて、意地悪く微笑んだ。

「多分あなたに関することですよ。」
「は?」
もっと不思議だ、と冥が顔をしかめる。
今の文字の羅列とも取れる言葉の中に、自分に関わる事が入っていると言うのだから。
「いいじゃないですか。別に。ばれないですから。」

「・・・やっぱ答教えろ。じゃなきゃ寝る」
幾ら知力知識が劣る冥とは言え、信二の嫌がることは知っているらしい。
なんだか疎外感を感じた冥は、拗ねたような顔で辰羅川に自分のノートをつきだした。
「はいはい、一回だけですよ?」
信二が笑う。


信二のノートのその答えの下の方に、うっすらと、冥の目ですら気付かないほどうっすらと消された文字がある。
「(けれど、私は彼と永遠に離れはしない。)」
宿題を終えて眠ってしまった冥の耳元で、その文字列を囁いた。

「(愛してますよ)」
「聞こえる?犬飼君」
瞳を閉じたままの彼に、もう一度、ささやいた。




漫画1ページに入るシーンをある程度それに近づく様にぶつ切りにしてみました。
だから小説的にはこの区切りは変なんです。

題名には意味は無いです。
ブッ飛んだ可愛い英文なら何でも良かったというか。

この話の漫画版は一部修正後、'01冬の「犬の生活」に収録する予定です。
12Pかぁ。入るかな。FU・A・N!
まあ入ると言う事にしておきましょう。

辰羅川はきっと冥よりか能力的には劣るのでしょう。
プロになれるのは多分冥のみ。
そう思うと、なんか嫌ですね。

reTUrn