満月〜愛無き
果たしてどれほどの時間が過ぎたのか。
そんな事をふと思い、だが紛れた気に気づいたのか、
其処がフリックの欲望を噛み締めるようにやわりと蠢いた。
「っ!―――おま、え……締めるなよ…」
「はぁ、ん、ん……そ、なの…私の、ぁっあ…!」
背後から組み伏せられ、尻を高く上げて喘ぐ細い体。
幾度精を受けたか、蕾は大量の精液を零れさせ、
赤く腫れてなお己を責めるそれを離そうとしない。
抽出が行われる度にぐぶぐぶと淫らな音を立てながら、
フリックの精を求めている。
「んぅ……ん! あ、やぁ……!!」
手が背を滑り、肩を掴んで。
腰を密着させたまま、片足を持ち上げ、身体を反転させた。
流石に痛みもあったが、
それ以上の快感が其処を伝って全身に広がった。
それに逆らわず最奥に熱をぶちまければ、
悲鳴じみた嬌声を上げ、風雷の蕊からも蜜が溢れる。
「くぁっあ!! あう、あっぁ、あぁッ――――は、あ…う……ふぅ……」
二度三度、
中に吐き出される精を受け止めて身体を震わせ、
縋るものを失った手がシーツに深い陰影を刻む。
快感に泣きじゃくり、
真っ赤になった目元が痛々しく、
フリックの嗜虐心をそそった。
その微かな思いにも反応し、欲望は力を増す。
体内で再び硬化し始めたそれに、
風雷の目が見開かれ、 頬に朱を刷き
堪え難いと言いたげに強く閉じられた。
(踊らされている―――)
今度は正面から、勢い良く腰を使い始めながらフリックは思った。
(俺の、こいつの意思があったのは最初、あの会話の時だけだ。
後はきっと全部、アレの――)
性感帯を掠められて、刺激の強さに泣きながら喘ぐ風雷の手。
目元を強く押さえ、頭皮を握るように髪に指を絡めている、
その手の甲で、魂喰いが輝いている。
(アレが、俺をかきたてているんだ)
宿主には深く淫靡な快楽と力の礎を。
生贄には抑えられない衝動と代償の契約を。
決して、お互いに逃れられないように。
(……何て、周到なんだろう)
これでは逃れられる訳が無い。
普段の姿とこの姿のギャップに。
淫らな蜜に。
耳を打つ甘い声に。
存在全てを罠にして、
己が宿星達を喰らおうとする意思に、
只人たる者達が逃れる事など出来ない。
「フリック、――やっ、あああ!!」
伸ばしてきた手を取って引き上げ、座した上に座らせる。
深く抉り込まれてまた達し、
しなだれかかるその身体を容赦なく突き上げる。
「まっ、て、あ、いやぁ……!」
「いや、じゃ…ないんだろう…?」
耳朶を甘噛みし、舌を潜り込ませながら囁きかけて。
(……もう、いい)
噛み付くように口付けながら、思う。
(きっとこいつは、忘れないだろうから、いい)
こうして抱き合った事を、
彼女への背徳を、
風雷は忘れないだろう。
受け止めた熱も、与えられた思いも。
何より、この繋がりで彼が長い時を一人でなく過ごせるというのなら。
(俺は―――俺も、喜んで生贄になってやる。
きっと、皆同じ思いでこいつを抱き、抱かれたんだろう)
頭の奥が痺れるような快感の中、
再び風雷の中に熱を吐き出して、
フリックはくずおれる身体を腕の中に閉じ込めた。
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