龍神の神子が京に召喚されて早二ヶ月。龍神の神子もそろそろ京での生活に慣れてきた頃 のお話。 「…最近よく頑張ってるね。ご褒美に一つだけお願いを聞いてあげよう。」 と、橘友雅は連日怨霊退治に悪戦苦闘している神子、元宮あかねに労いの意味をこめて 言った。 「本当ですかっ!?」 と、あかねはパッと顔を輝かせてたずねた。 友雅はあかねの少女らしい無邪気さを微笑ましく思いながら答えた。 「もちろんだよ。…姫君の仰せのままに。」 「…うーん」 あかねはしばらく考え込んでから 「…じゃあ、私に楽を教えてください!!」 …と、一言。 「…楽?」 あかねの意外なお願いに友雅は目を丸くした。 するとあかねはもう一度はっきりとした口調で言った。 「ハイ!篳篥とか龍笛とか琵琶とかです。それが教えてほしいんです。」 「…なんでまた楽に興味が?」 不思議に思って尋ねるとあかねは恥ずかしそうにボソボソと答えた。 「…だって…それは友雅さんが楽がとても上手だって藤姫から聞いて…。…その…友雅さ んと一緒に演奏できたら嬉しいなって思って…」 友雅は真っ赤になってうつむくあかねがたまらなくいとおしいので、思わず抱き締めたい 衝動にかられた。 …が、それをなんとか押しとどめあかねの申し出を快く引き受けた。 「…わかった。私で良ければ御指導しますよ、姫君。」 ―――こうして友雅の個人レッスンが始まったのである。