[ストロベリー・オン・ザ・ケーキ] 「オシタリの匂いってすきだよ」 そう言ってジローはにっこりと笑った。 「たまらんわ・・・」 自然と顔がにやけてしまう。 緩んだ表情を引き締める前に、うるさい声がする。 「あー、侑士!何?何ニヤけてんの?気持ちわるーッ!」 天気、晴れ。気温は適温。暑くもなく寒くもない心地の良い朝。 午前8時半の登校。予鈴3分前。 ソレは校門を抜けたところで、昨晩の出来事を振り返って浸っていた忍足を元気よく妨害した。 「・・・岳人、うるさいで」 「ひっでー!大事なパートナーに向かって朝からそんなこと言う!?フツウ!」 ギャーギャー喚くのを無視して、足早に教室へと向かう。 途中、靴箱に可愛らしい封筒などが入ってるのを向日が見てまたうるさい。 それを無造作に鞄に詰め込み、オカッパをあしらいながら廊下を歩く。 予鈴が鳴って急ぐ中、何人かの後輩に挨拶された。 義務付けられたとはいえ、声を張り上げる後輩の挨拶は向日のはしゃぎ声と合わさって苛立ちもピークに達しそうだ。 忍足は朝に弱い。 低血圧のため、不機嫌そうな顔をしていたら誰も近寄ってこないのに、このハイテンション男はそれを気にせず延々と喋り掛けてくる。 耳を塞ぎたい衝動に駈られながら忍足は教室へと廊下を足早に進めた。 と、前から見慣れた姿がこちらに向かって歩いてくる。 (なんでいっつも3年の教室がある1階におるねん・・・) 露骨に嫌な表情をした忍足にも、いつもどおり柔和な雰囲気で応対して彼は朝でもフル回転で営業していた。 「おはようございます!」 ご一緒にポテトもいかがですか〜? と、言いそうなスマイルに忍足は辟易する。 2年で正レギュラーの鳳。 横で騒いでいた岳人が、おっはよ〜☆と愛想よく返す。 (あ〜、なんでコイツラ朝からこんなに元気やねん・・・) ほとんど無視でサワヤカな後輩を通り過ごし、教室へと向かう。 置いていくつもりだった男が、また騒ぎながら着いてきた。 (着いてくんなって・・・。同じクラスやけど。げっ・・・) 「ちょっと待ってよ〜、もう!侑士、歩くの早ッ・・・ってなんで急に止ま・・・」 「おはようございます」 忍足はペコリと頭を下げた。 「あっ、監督!おはようございます!」 慌てて岳人も挨拶。 氷帝のテニス部監督である榊は、いつもの様に生徒の挨拶に無反応で自分達を通り過ぎる。 (先生としてその態度は失格やろうが・・・) 心の中で毒づく。 榊と擦れ違う際、ふわりと香水の香りが鼻について忍足は怪訝に眉を寄せた。 「・・・・すかんわ、あの匂い」 ボソリと呟いた自分の言葉に、岳人が首を傾げた。 「そう?」 「・・・香水自体、あんますかんねん」 彼の疑問符に、何気ない自分の感想を言葉に出す。 「そなの?俺は気にならないけど。そんなにきつくないと思うけどなぁ」 思い出すように、鼻をくんくんさせる向日に思わず吹き出す。 「キツいで、アレ。俺はもっと・・・こう、自然な感じの匂いが」 すき----------。 言いかけて、忍足は言葉を失くした。 忍足の脳裏に岳人につられて無意識に浮かんだのは、昨日のsex・・・。 (・・・・・・・・・アホ!何考えとるんや自分!朝っぱらから!!!!) 思わず、手で口元を押さえる。 (思考回路がなんでそこに繋がるん!?めっちゃおかしいやん!) 「侑士、どしたの?顔赤いケド?」 急に言葉を止めた忍足を不思議がる岳人に、平常心を保って流すのは。 意外に簡単。 しかし“なんでもない”と答える前に自分の名を呼ばれた。 「オシタリッ!!!」 どきりと、心臓が跳ねる。 後ろから自分を呼ぶ声。 誰かなんて見なくても分かる。 「あっ、ジローだ」 背後を振り返った岳人が言う。 だから、言わなくても分かるって。 「おはよう」 少し眠たそうな声。 近寄ってくるジローを忍足は直視できない。 「っはよー。ジロー、朝錬ないのに今日は遅刻じゃないんだ。めっずらしー!!」 「うん、きのううるさく言われたから」 あくびを噛み殺して、目を手で擦りながらジローが言う。 (あ、まずい・・・) 「?誰に?」 聞くなや、岳人。 「んーっと」 って、俺見んなや。ジロー・・・。 名簿順が近いのと、部活が同じなのと、仲良いのとで担任に俺がうるさく言われたんやから、しゃーないやろ。 「侑士なの?・・・ってそんなこと言ってたっけ?」 教室でも部活でも言ってなかったような気がする。 思い出したのが、ヤった後やったから。 その情景を再び思い浮かべてしまって、ますます顔が熱くなる。 きっと、真っ赤になっているはず。 「うん、ね。オシタリ。・・・オシタリ?」 ようやく自分を見ない忍足を不思議に思ったのか、ジローが顔を近付けてくる。 (うわ、そんな近寄んな・・・!) じりり、と後ずさりするがその分ジローはお構いなしに顔を寄せてくる。 ふわりと、ジローの匂いがした。 ような気がする。 (アカンッ!!!!!) 「お?」 どさっとジローが廊下に尻を着いた。 近付いてきたジローを押し返した忍足の意外な行動に、ジローも岳人も驚いた。 「・・・・オシタリ?」 「あー!何やってんだよ、侑・・・」 「すまん!俺、今日変やッ!!!」 二人に叫ぶなり、自分を食い入るように見つめる目を後にして、忍足はその場から走るように逃げ去った。 途中、教師が授業だとか何か言っていたがそんなものは無視して夢中で走った。 「俺、俺・・・・なにサカってんの・・・・・!」 頬の熱は、一向に収まりそうになかった。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 残された二人は、まだ忍足が走り去った廊下を見つめていた。 ジローはまだ廊下に尻餅を着いたままだ。 「・・・びっっっっくりしたーーーー!!!!今の見た???ジロー!!!!あんな侑士見た事ないっっ!!!すっげー貴重なもん見ちゃった!!!!!すっげ〜〜ッ!!!!!」 「・・・・・・」 「あの顔、跡部とか宍戸が見たらびびるぜ!?うっわ〜!」 「ムカイ・・・」 さっとジローは立ち上がる。 と、同時に本鈴のチャイムが鳴った。 「あ、やべ・・・侑士はほっといて早く行・・・」 「オレ、オシタリ追いかける!」 「え?」 ダッッと。 ジローは走り出した。 「お、おい・・・」 岳人が止めるよりも早く走り出したジローは、真っ直ぐな廊下を忍足を追って右に曲がって見えなくなった。 ほら、私にも書けた! 純情忍足受!!(誇らしげに!) っというか、最初からちょっと受と違うか?エッチシーン思い出してニヤけてるのって・・・。 まあホントはただ単にニヤけてる忍足(受です)が描きたかっただけなのに・・・。続いちゃった。 しかし朝からテンション高い人っているよね?ホント、殴りたくなるようなヤツっていない?(笑) そして何気に鳳宍(リバ可)。