[みんなのうたA 〜テニスって?〜]

















「ハロー!ジョン!」 「・・・・・・」 「ジョン!ジョーーンッ!!」 「ああ、うるせぇ!!その呼び方やめろ!!」 「ええやん、名前覚えれへんもん。それにジョンの方がアンタにあってるで」 苛立ちながら振り向けば、にこりと忍足が笑う。 転校初日、1時間目の英語の授業が仇となって、放課後までこの調子だ。 跡部のクラスを受け持つ英語の教師は外国人で、ユーモアのセンスがあるのかないのか分からないが授業中は全て仮の名前で呼ばれる。 しかも転校生の忍足のために、わざわざクラス全員が忍足に英語で自己紹介と握手を強要した。 そのため、忍足の頭の中は横文字の名前で溢れている。 跡部も忍足の中では「ジョン」になっていた。 跡部らにとってはもう当たり前のようになっているが、忍足にはどうもこれが多いに受けたらしい。 「アーサーセンセはおもろいわ〜。ってか自分らほんま、もっと疑問を持って生きぃや。純日本人がジョンだのマイケルだの言ってておかしい思わん?」 けらけらと、忍足はまた思い出したかのように笑い出す。 「だって仕方ねーじゃん!いきなり『ユーはマイケルねー?』とか外国人に言われたら、『イエス!』って答えるって!俺らノーと言えない純粋な日本人だし!」 マイケル、こと向日が忍足に反論する。 向日が席順の一番後ろだったことで(いつも跡部らのクラスの席順はくじ引きで決めている)、そのまた後ろの席に座った忍足とはすぐに親しくなり、既に親しげに会話をしている。 「どうでもいいから、早く歩け!俺は忙しいんだ!!」 「んまっ、ジョンったらヒドイわ〜!聞いたかマイケル?」 本気で本当の名前を覚える気がないらしい忍足を諦めて、跡部は先を急ぐ。 二人を追い越し、歩調を速めて前を歩く。 生徒たちが忙しなく行き交う廊下は、喧騒に満ちていた。 放課後の学校は、行事前だけ人口密度が高い。 木の板を運ぶ男子生徒。 仕入れてきた食料を食べながらセリフを覚える数人の女子生徒。 垂れ幕をセットする掛け声。 ちらしを配る生徒。 「・・・ほんま、本格的やねー」 きょろきょろと周りを見ながら、忍足が感嘆の声を上げる。 「・・・・・氷帝学園は学業の他に、行事も力を入れているからな」 跡部は彼に説明する。 “学校を案内してやれ”と忙しい文化祭実行委員に頼む担任を恨みながらも、ほとんど何も説明していない自分に気後れしたためだ。 少しくらいは説明しないと、後であのこうるさい担任に何を言われるか分かったものではない。 「そうだぜ。すごかったんだから!この前の体育祭!!跡部が最後の種目のリレー出てさ〜、3人抜いて!!堂々の赤組優勝!ってわけ!!」 「へー・・・」 何故か忍足の案内に着いてきた向日が熱弁する話に、忍足はさほど興味を示さない。 ちらしをもらって、それを見ながら跡部の後を歩く。 「・・・あいつらが遅すぎたんだよ」 跡部は言い訳するようにつぶく。 自慢にもならない。 跡部はこの男にこの話はしたくなかった。 どうでもいいことを、向日が自慢したことによって自分までもそうしたような気分にさせられる。 「何言ってんだよ。陸上部のやつ抜いたじゃん!!そいつ、すっげー悔しがってたって聞いたぜ!それのおかげで大逆転でさ!赤組全員に高級万年筆!金懸けすぎだっての!」 「・・・すごいやん。跡部は何かクラブ入ってるん?」 ちっともすごくなさそうに忍足は聞いてきた。 「テニスだよ。俺も一緒!」 跡部が答える前に、向日が言う。 「テニス?なんか優雅やねぇ。おもしろいん?」 「したことねぇの?」 「ぜんぜんないわ」 やはり興味なさそうに忍足は答える。 その態度が気に食わない。 尺に触る。 「・・・一度、俺と試合してみるか?負かしてやるよ」 跡部は挑発的に、そう告げてみる。 「忙しいんちゃうの?」 「息抜きにはいいだろ」 にやりと不敵に笑うと、忍足は楽しそうに微笑する。 ノってきた。 「じゃ、俺ともやろ!すっげー楽しいぜ!!テニスって!!!」 はしゃぐ向日。 「そうなん?お前等、ほんとすきなんやな〜」 「「じゃなきゃ、やってねぇよ!」」 俺と向日の声がハモった。 それにぶっと忍足が吹き出す。 意外によく笑うやつだ。 俺は忍足に続いて、俺も少し笑った。 無駄に長い。向日がうるさい!