[みんなのうたB 〜天才って?〜] ジロー登場。

















「あらら、負けてもーた」 息を切らしながら、忍足はそう言った。 確かに跡部は勝った。 勝った、が。 「・・・・・お前、ホントに今日がはじめてなのか?」 跡部も息を弾ませながら、反対側のコートにいる忍足へ歩み寄る。 滴る汗を手で拭った。 寒くも暑くもないこの季節だが、激しい運動でカッターの中は汗だくだ。 文化祭の1週間前はさすがに部活はなく、かといってそのコートを使うことは文化祭の準備をさぼっていると言われるのは目に見えているため(本当のことだが)、滅多に活用しないストリートテニスで忍足と試合をした。 ルールも全く分かっていなかったため、基本的なことから説明すれば『とりあえずこの線より前にボールを入れればいいんやんなぁ?』と言ってのけた。 実際は試合というより、この男にテニスがどんなものか教えてやりたかっただけだったのだが。 まさか ------------- 。 「絶対ウソだろ!?なんで一発目であんないいサーブ打てるんだよ!」 ベンチで点をカウントしていた向日が、くるりと回転しながら俺たちのいるコートへ降り立つ。 慣れている俺とは違い、その身軽さに忍足は驚いて、詰め寄る向日から逃げるように後ずる。 「・・・・え、ええっと?そんなん言われたかって、なぁ・・・。最初に跡部が打つの見たさかい、そのまんまやっただけやで?」 「・・・オレとも、しよ」 「・・・・うお!?」 どもりながら向日を避ける忍足の腰に、ジローがしがみついて来て、忍足は声を上げた。 いつもは人の試合は見ずにほとんど寝ているジローが、俺と忍足の試合を見ていたことは気付いていた。 途中までは向日と同じベンチにいたが、試合がはじまってすぐ、向日とは逆の、プレイヤーがよく見える位置に移動していた。 忍足が試合をするコートの横の地べたに座り、試合を見ていたのだ。 詰め寄る向日に気を取られていた忍足には、背後のジローには気付かなかったらしい。 「ちょ、離せや・・・・って、聞こう聞こう思っとたけどお前、一体だれやねん!?」 「ジローだけど」 「・・・って、だから・・・ええっと、笑ってないでこの状況なんとかしろ、跡部!」 忍足は腰に絡むジローの手を取りあげようとしているが、しっかり抱き付いて離れない。 向日はおもしろがって、見ているだけ。 「・・・おい、ジロー。お前と試合するらしいから、離してやれよ」 跡部は口元を押さえて笑いを噛み殺しながらそう告げると、大人しくジローは忍足から離れる。 そうしていつも持参しているラケットを出して、反対側のコートへと急いで駆けて行った。 「何なん?あいつ・・・って勝手に決めるなや。俺、疲れたんやけど」 「同じクラスだぜ・・・ああ言わなかったらずっとあのまま絡まれてたが、それでも良かったのか?」 「・・・・・・・同じクラス?いたっけ?あんなやつ」 訝しげに忍足は言った。 ほとんどの授業、ジローは寝ているため記憶にないのは仕方のない事だ。 教師の方も、起こしても1分も経たないうちに寝てしまう生徒を諦めたのだろう(職務怠慢だ)、そのまま授業を進めている。 「言っておくが、あいつは手加減をしない。最初から全力でくるぜ」 忍足にそう言うと、跡部はコートから退く。 「じゃあ、はじめるぜ!いいな、ジロー!侑士!!」 向日のゲームをはじめる声。 恐らく、忍足はこの試合で更にレベルを上げるだろう。 常人では考えられないほどの、成長性。 元々ずば抜けて身体能力が高いのか、見たものを即座にやってのける天賦の才能。 それは、何というか知っているか。 『天才』 氷帝はもっと、強くなる。 さぼったことで、担任は予想通りうるさかった。 実行委員がさぼるとは!ってな。 だが、それよりも。 おもしろいものが見れたことで、何を言われても何の苦にもならなかった。 そういえば。 名前をまともに呼ばれたのは、これが最初だったと。 ふと、つまらないことを跡部は思った。  

















天才って。 今となっては笑いの種にしかなりません(失言) まあでも、こういう設定もありでしょ?たった2年半(?)で羆落としたら一応「天才」っぽくない? 跡部様は自分が一度思い込んだことは絶対に思い改めない人のような気がします(また失言!)