[みんなのうたH 〜甘い香り〜] 再びジロ視点。
秋の風は、冷たくもなく心地がいい。 ジローの髪を撫でて、通り過ぎていく。 屋上。 文化祭も終わって後片付けをしている生徒や下校する人たちを、ジローはそこからフェンス越しに見下ろしていた。 この場所で朝からずっと寝てしまい、起きたら青かった空が夕焼け色に染まっていた。 「・・・なんで、あんなコト、したんだろ」 ぼそっとジローは呟く。 あの後、そんな風に思い悩んでいたら、いつのまにか寝てしまっていたのだ。 自分はとことん、思い悩む繊細な人間ではないと思う。 それでも、目が覚めて一番に思うのは彼のこと。 (オシタリ、どう思ったんだろ・・・) 逃げるように彼から離れて、ずっとここにいる自分。 無意識に忍足が触れた頬に手をやる。 ・・・彼の手は少し冷たかった。 今、触れている己の手は眠っていたこともあってか、彼の手とは違って酷く暖かい。 (オシタリ・・・) 冷たい水で洗い落とせたのはパウダーだけで、火照る頬と、あれから彼のことばかり思う心は、なかったことにはできなかった。 忍足、今、何思ってるんだろう。 いつもは考えない頭で、ジローは物思いに更ける。 あのとき――――― 。 眼鏡はずして、それを間近で見て、すごくきれいだと思って。 そしたら。 (キスしてた・・・) 感触を思い出して、またジローは指で自分の唇をなぞる。 そっと触れた忍足の唇は柔らかくて。 甘くて。 忍足の身体からも、どこか甘い香りがして。 もっと味わいたくて。 忍足の身体に噛み付きたくなって。 でも。 名残惜しかったけど、離れたら。
(オシタリ・・・すっごい驚いたカオしてた)
そんなオシタリ見たら、オレ、すっごく恥ずかしくなって『ゴメン』って言って逃げたけど。 今でも思い出したら、恥ずかしくなって顔が熱くなるけど。 でも。
(もう一回キスしたいって言ったら、またオシタリ驚くかな・・・)