Dearest

 
 
 
 
  







『いいよ』
今朝、そう、メールに入れた。







「司馬ァ〜、お客さ〜んっ!」
「?」
HRが終り、クラブへ行く準備をしている中、クラスの同級生に名を呼ばれて振り向くと、彼は親指でドアの方を差した。
その先には、自分が所属するクラブの部長。牛尾キャプテンが手をひらひらさせて、にっこりと笑っていた。
「ちょっと、いいかな?」
牛尾はにっこりと笑っていた。






「確かあの人って3年の野球部のキャプテンだよね〜!」
「へ?そうなの?」
「そ!かっこいい〜!金髪、超似合ってる〜!!」
「司馬君も青い髪、いいよね〜。すきだな〜自然だし」
「アタシもソレ思った〜、ってかさ、司馬君、めっちゃテレ屋なんだよ〜前ね〜
落とした消しゴム拾ってあげたらペコッて頭下げて頬赤くなってるの〜vvギャ〜!!!!!カワイイ!!」
「えーー!!ずっる〜い!でも、聞いてよ、私なんか司馬君にさ〜…」
「ってか、お前等も部活行けよ…」
「「「「アンタもでしょ!」」」」
「・・・・うるせぇ!」







早く、部室に行きたかったような気がする。
早く、君に会って君の顔が見たいと、思った。
とても恥ずかしいけど、でも会いたいと思った。





「悪いね・・・こんなところまで連れてきてしまって・・・」
牛尾が降り返った。
この部屋は、カーテンが閉まっていて薄暗く、サングラスを通して見た司馬の目からは一層澱んだ世界
を作り出していた。
ビーカーやフラスコが置いてある棚には埃がかぶっている。
掃除当番はどこのクラスだったっけ?
司馬は、そう思いながらも牛尾の言葉を否定するため、首を横に振る。
正直、早く部室に行って、彼の人が来るのを待っていたかったけれど、部長が何か自分に用事があって
わざわざ教室まで訪ねて来たのだから断るわけにはいかない。
MDも音を最小にしてある。
司馬はじっと牛尾を見る。
牛尾の顔は、この薄暗い世界では殆どその表情が隠されていて、何も見えなかった。
その牛尾から、くすくすと笑みが洩れた。
「?」
「急ぐ用事でもあるのかな?」
「・・・・!?」
「だって、いつになく、自分から目を合わせてくるから・・・」
「・・・・!」
そう言われて司馬はさっと床に目を逸らした。
しかし、反射的に取った自分の行動を司馬は後悔する。
「おもしろいね・・・君は・・・」
司馬との距離を縮めるため、牛尾は一歩動いた。
もう、司馬は牛尾を見ることができない。
一度、自分が外してしまった視線を動かすことはできない。この張り詰める空気の中では。
ただ、変わらないのは少し小さめの、洋楽が司馬の鼓膜を揺らす。
「サングラスを掛けててもね・・・人の視線というのは感じるものなんだよ?」
一歩。距離を詰める。反射的に司馬は一歩、後退した。
「僕の様に、五感が鋭いものとか・・・そうだね、蛇神君とかも・・・」
一歩。二歩。牛尾が詰める度に、司馬も遠ざかる。
トンッと司馬の背に、化学薬品が閉まってある戸棚が当たり、もう後ろには下がれない事を知った。
「彼も・・・・君の事は認めているんだけど・・・・、まだまだ蛇神君自身が成長しようとしているから、君も同じように上を目指すよう、指南したんだと思うよ。」
歩を数歩進めて、牛尾は司馬と何センチも離れていない程に近付いた。
「・・・・・人の・・・君の視線に敏感なのは、僕だけじゃないけどね・・・」
司馬は何故か酷く怖く、牛尾を見上げることはできない。
曲は変わらない。だが、司馬の耳には牛尾の声しかもう聞こえなかった。
「そう・・・・兎丸君とか・・・」
予期しない彼の名が出てきて、司馬はバッと上を------牛尾を見上げてしまった。
「・・・ッ」
間近にある牛尾の顔を見て、司馬はゾクっと身震いする。
温厚で誠実なキャプテンはどこにもいなかった。
いたのは、酷く計算高く、狡猾に獲物を捕らえようとする豹のような---------------------------
「チェックメイト・・・」
「・・・!」
抵抗する間にサングラスを捕られてしまう。
オブラードに包まれた優しい世界は、奪われて。
現実を------自覚する。
こ------わ------い------。
牛尾の手が、司馬の頬をそっと撫で、彼の耳を塞いでいたMDを外した。
途端、無音の世界が司馬に訪れる。
怖いほどの、リアル------。
酷い、喪失感。
有り余る色彩。相対する、何の音も鳴らない無音。
ボトっとMDが床に落ちる音は、しかし司馬には聞こえない。
目は穴が開くほど見開かれているのに、しかし目の前に居る牛尾すら見えていない。
そんな放心状態の司馬を、牛尾は愛おしげに見つめ、そっと唇を合わせた。














登場人物に私が何人かいるよ・・・・(笑)
っというか、司馬君を連れ去った(?)人物を見た人達は、部活に行って比乃と会えなかったからっていうのを表そうとしたら、いつの間にか「司馬君ってかわいいよね」談義に
陥ってしまったのです・・・。しかし、ほんとに楽しく書けました。ハマって日も浅いからキャラ掴むの大変かと思ったけど思ったより楽♪比乃をこういう風に書くゾ!って決めたらスイスイと・・・vv
っというか、牛尾先輩ファンにはごめんなさい!怪しい人になっちゃってます・・・手が・・・手が勝手に動いたの〜!ヒィ〜!狂牛病!?(笑)そして、司馬君〜、なんか精神患ってるかんじに・・・いや、でもあの個性(見ざる言わざる聞かざる)を悲観的に見るとそれも萌えてきませんか?(爆)いや萌えるだろ!?萌えなきゃ!
笑える誤変換・・・「牛尾」=「ウシオ」→当たり前だけど、ホント情けないような・・・・       ・・・「放心状態」=「封神状態」→な、なつかしい・・・!