Dearest

 
 
 
 
  





『いいよ』
今朝、そう、メールに入っていた。







「……フフフフフフフフフフフ」
「……と、兎丸君?ど、どうしたの?」
「え?・…あっ、なんでもないよ〜、先生☆エヘヘ!」
にっこり笑って、兎丸比乃はこの学校で1、2位を争う美人教師に返事をした。
「そ、そう?じゃあ、続き。読んで?」
「エっ!?ええっと…エヘヘ…」
上目遣いに教師を見つめた比乃に、その教師はくすりとはにかみ、口元を押さえて微笑った。
微笑するその英語教師は、同級生の女の子にはない上品さと、軽く化粧をした大人の魅力が合わさって赴任してきて1カ月も経っていないというのに、男子生徒から絶大な人気を得る原因だった。
「あらら、授業聞いてなかったのね…」
そして、穏かな性格ももう一つ、人気のひとつ。
「おいおい〜、ピノ何やってんだよ〜」
「眠たかったの〜?134ページからよ」
あははっと、クラスの皆が比乃を茶化し、親切な女子生徒が読むページを教えてくれる。
「エヘヘ〜、アリガト!えっと〜、アイアム・…」



穏かな午後。
優しい教師。楽しいクラス。






『ピノってさ〜、嫌いなヤツいるの?』
いつか忘れたけど、誰に言われたかも忘れたけど、そう言われたことがある。
あの時、なんて答えたっけ?








「あっれ〜、ピノは〜?」
「ああ、あいつなら部活いったぜ!なんかずっげ〜いそいでさ〜」
「え〜!!せっかくクッキー作ってきたのに〜!!!!!」
「え、マジ?なんなら俺が食ってやろうか?」
「う〜ん、じゃあ仕方ないな〜」









『喧嘩したこととかある?怒ったこととか?』
あの時、なんて答えたっけ???







走る。走る。ボクの自慢の足で。
君のところまで。




「あいつなら、HR終ってすぐ出てったぜー」




教室にも行った。
屋上にも行った。
少し早いかも…って思ったけど部室にも行った。





おかしいな?
どこに行ったんだろ?
早く、会いたい。
会って、この嬉しい気持ちを伝えたいのに。





「おかしいな〜、どこ行っちゃったの〜!?」
「あら、どうしたの?兎丸君。そんなに息切らして」
焦る兎丸の前に、先程、6限目に英語を教わっていた美人教師が歩いてきた。
「あっ、せんせ〜い!司馬君知らない?探してるの!」
「しばくん?ああ、あのサングラスかけて耳に・・・」
兎丸の勢いにやや押されて、しかしマイペースに教師は自分の記憶を手繰り寄せる。
司馬葵。
名前と顔を覚えるのが苦手な彼女でも、一発で思い出せる男子生徒の一人。
「知ってるの?教えて!」
すぐに思い出せる男子生徒ー兎丸ーが、必死に詰め寄ってくる。
「え?え〜とっ、確かさっき、化学準備室に入っていったの見かけ…」 「アリガトッ!」
言い終わらないうちに、兎丸は走り去った。
「……早いな〜。すっごい…ん?確かしばくんともう一人、一緒にいたような…そう、金髪の…」
学年が違うため、彼女の記憶にその名前は出てこなかった。








走る。走る。
早く、会いたい。
会って、この嬉しい気持ちを伝えたいのに。
『ボクね、司馬君のコト、すきなんだ』
『だからね、ボクのコト、すきになってよ』
『つきあってよ』
『いっしょにいるってコトだよ』
『返事、メールでもいいよ』
『まってる』





これ、どういうこと?


なんで、司馬君と牛尾キャプテンがキスしてるの?