渡久地菊夫(とぐち きくお) フリーのジャーナリスト。そしてガクソの記録係 ハンディタイプのビデオカメラと自転車で走り回っている。左目が無くいつも眼帯をしている。 毎回登場の度に違う眼帯をしているが……いったいいくつ持っているんだろう? 彼の左目が無いのはその昔、戦場でゲリラに捕まった時にえぐり出されたためである。そして彼の左目にも「バーコード」があった。もともとは写真家だったという。カンボジアで戦場の写真を撮っていた、ジャーナリスト意識よりも芸術嗜好の方が強いらしく、写真で個展を開きたいといっていた。
人は不幸が重なったときや、自分のアイデンティティがすべて崩れたときに凶行に走るときがある。彼の場合もそうである。
そして、彼の最初で最後の個展『渡久地菊夫 ART LIVE』(一般に都庁展望室ジャック事件といわれている)が開かれた。
彼の写真の師ともいうべき桐生氏に作品を非難されたことや、残された右目も白内障にかかり失明の危険があること、恋人の裏切り、ガクソへの反逆。
そういったものが、彼を個展『渡久地菊夫 ART LIVE』別名「都庁展望室ジャック事件」という凶行に追いやったのである。そのような事がなければ彼は凶行に及ばなかっただろうか?
いや、それは解らない。彼もまた左目に『バーコード』を持っていた人間の一人なのだから……。彼は都庁展望室を占拠すると、インターネットを通じてそのもようを中継した。そしてEメールで犯人の要求を募集する。それと同時にホームページでバーコード殺人者の記録ファイル・小林洋介だった頃の雨宮の行動記録などをを公開したがその趣旨は不明、「ガクソ」が握っている情報を公開することでガクソへ反発したかったのだろうか?それとも「雨宮一彦」へのメッセージだったのだろうか?
彼には両親がいる。いや、いたといったほうが正しいのだが……。彼の両親は彼の個展中に死んでいる。彼の反逆に腹を立てた全一によって殺されている。息子の犯したことを知らずに死んでいったのだから彼らは幸せだったのかもしれない……。
全一に両親を殺された事によってガクソを裏切ったことの重大さに気がついたのか「雨宮一彦との会見」「学窓会からの保護」を求めて投降する。
警視庁公安四課の鬼頭が雨宮一彦を連れて彼の元へやって来るが、しかし彼は学窓会について何も話せなかった。 ガクソの全一によって彼は射殺される。こうして彼の個展は幕を下ろした。この事件の際、彼はバーコード柄の眼帯をしている。それは彼自身がバーコード殺人者の一員であると主張したかったのかもしれない……
彼はいったい何をしたかったのだろうか?そして、彼が雨宮一彦に伝えたかったことは何だったのだろうか?
彼が死んでしまった今すべては涅槃の彼方に隠されてしまった。