『同じ部屋』

・・アークエンジェルに来てから、俺はキラと同じ部屋になった。
というか、俺がキラの部屋に居座らせてもらうことになったという言い方が正しいのだろう。
俺の立場が曖昧なものであるというのと、キラが同じ部屋にして欲しいと掛け合ったから
でもあるらしい。
確かに、ここでの生活はまだ分からないことが多いし、キラと同じ部屋の方が断然心強い。

・・今日もまた、お互いに機体のプログラムが終わっていなかった俺たちは、
ジャスティスとフリーダムの整備をしていた。
ふとキラの方を見ると、黙々と作業に打ち込んでいるようだった。
「キラ。」
「・・・・・。」
「キ〜ラ!!」
「・・・・・・。」
「キラ〜〜〜っ!!!!!」
「わっ!アスラン、何っ!?いきなりどうしたの!?あっ、もう、間違えちゃったじゃないか!」
・・これだ。
キラは昔から何かに熱中すると、周りが見えなくなったり、聞こえなくなったりするらしい。
それは今でも変わってないらしい。
まあ、そうだろうとは思っていたけど。
そんなキラを見て、思わず苦笑する。
「これが終わったら、どうするの?」
「んー。さっきラクスが何か話があるって言ってたから、食堂に行こうかと思ってる。」
「そっか。キラは忙しそうだね。」
「アスランだってそうだろ?さっきも、あっちこっち走り回ってたじゃないか。」
「まぁね。」
・・それは嘘。
確かにこんな状況で、忙しくないとは言わないが、暇な時間を見つけようと思えば
見つけられないこともない。
それなのに。
ザフトを離れ、キラと共に戦う事になった。
今は、キラが敵じゃない。殺し合いもしなくていい。
・・・こんなに傍にキラがいる。
なのに、落ち着いて話をする機会もなかなかないのだ。
毎日、キラは忙しそうにしているから。
・・そんな風にキラを見ていると、どうしてもこんな考えが浮かんできてしまう。
『キラは俺と再会できたことが嬉しくないのだろうか?』・・と。
キラは俺が思っていたほど、会いたいわけではなかったのだろうか?
・・そんな疑問を忘れ、振り払うかのように、ここ数日は何か仕事を探し、没頭する事にした。
その間だけは、余計な事を考えずにすむから。
部屋に戻ってきても、キラは既に疲れきって、眠っていることがほとんどだった。
まともに話すこともあまりない。
・・それが、キラと同じ部屋になって5日目現在の状況だった。

・・ウィーン
部屋のロックもかかっていない。ライトも消えて部屋は薄暗い。
照明のスイッチに手を伸ばしかけ、引っ込める。
今日もまた、既にぐっすりと眠っているキラの姿が目に入ったから。
きっとライトをつけたら、眩しくて目を覚ましてしまうだろう。
少しずつ目も慣れて、ベッドの方へと静かに歩いていく。
やはりよく眠っているのか、起きる気配は全くない。
そっと、キラのベッドサイドにしゃがんで、寝顔を見つめる。
・・気付いたら、手が伸びていた。キラの顔へと、手が伸びて、触れる。
茶色くて柔らかい髪を撫でる。
それでもキラは、目を覚まさない。
ん、と小さな声を漏らしただけで、また寝息をたて始める。
少し、微笑んだようにも見えた。
・・気のせいだったかもしれない。
でも、そんな事はどうでも良かった。
もう一度、手を伸ばす。
・・ああ、キラはここにいる。今、俺の目の前にいる。
触れても、夢のように消えることはない。
もう、あんな悪夢は見なくていい。
触れたら消えてしまった幻。何度、そんな夢を見ただろう?
「・・キラ・・・。」
口から零れた声は、ほとんど息に近かった。
その笑顔は、誰に向けられたものなのだろう?
夢の中で、キラは誰と話しているのだろう?
現実だけでなく、キラの夢にまで嫉妬するなんて、自分でも馬鹿馬鹿しいと思う。
・・いつから、俺はこんなにキラの事ばかり考えてしまうようになっていたんだろう。
別にいつからでも関係ない、か。
・・こんな、キラの無垢で穢れのない寝顔を見れるのは、昔も今も俺だけなのだから。
そう、信じるのは自惚れだろうか?
もう一度、今度は両手を伸ばし、頬に触れる。
そのままキラの吐息がかかる位置まで自分の顔を近付け、目を閉じる。
(キラ・・。俺はこんなに近くにいるんだよ・・?)
キラ・・キラ・・・。
もっと、キラに触れたい・・・。
頭が朦朧として、熱くなってくる。身体も、また・・・。
今も規則正しい寝息をたてている、キラの可愛らしい唇へ・・顔の位置を少し下に下げ、
近付けていく。
キラ・・・。
もうちょっとでキラの唇へ、俺のものも重なる・・という時に、ハッと気付き、身を起こす。
何をしようとしてたんだ、俺は!?
慌てて自分のベッドに行き、布団にもぐる。
ハァ、ハァ・・・。
ゆっくりと、呼吸を整え、目を瞑る。
気持ちも、身体も落ち着かせようと、ただそれだけを考えるようにしながら。
・・俺は、最低だ・・・。

・・「アスラン、今日は早く戻ってきてね?」
今朝、部屋を出る時、一言。
キラはそれだけを言うと、部屋を後にしてどこかへ行ってしまった。
結局俺は今日1日、寝不足でぼーっとしながら、仕事を片付ける羽目になってしまった。
自業自得だが。
そして、今日も今日とて、それほど急を要する仕事もなかったので、
いつもよりも早めに部屋へと戻る。
ウィーン・・・
「あ、アスラン。おかえり。」
ドアが開いた先には、既にキラが戻っていて、出迎えてくれた。

「キラ。今日は仕事は良かったの?」
「うん。急いで片付けてきちゃったし。」
「そう・・・。」
「ほら、座ってよ。食堂からご飯ももらってきたんだよ。今日は、一緒に食べられるね。」
「あ、ああ。」
キラが勧める椅子(とはいっても部屋にある簡易椅子だが)に腰掛けて、
テーブルの上を見ると、いつものトレイに、いつもの食事が載っていた。
「少し冷めちゃったかもしれないけど、まあいいよね。」
そう言いながら、キラも向かいの椅子に座る。
そういえば、食事すら一緒にしたことがなかったのだ。
食堂の前を通りかかった時に、思い出したかのように食べていた気がする。
「あ、ほら。ロールキャベツがあるよ!アスラン、ロールキャベツ好きだったよね〜!」
無邪気に笑いながら、ロールキャベツをつっつくキラ。
「ああ、キラのお母さんのロールキャベツは美味しかったからね。」
「うん。アスラン、いっぱい食べてたもんね。」
笑いながらロールキャベツを口に入れるキラにつられて、俺も食べ始める。
「・・・やっと、ゆっくり話せたね。」
「え?」
「ごめん・・。」
「キラ?」
「せっかく、こうしてアスランと一緒にいることができるのに。
落ち着いて話をすることもできなくて・・。」
「キラは昔から、頼まれごとをされると断れなかったから、ね。」
「それは、アスランもでしょ?」
お互いに目を見交わして、微笑む。
「待ってようと思ってるんだけど、アスラン帰ってくるの遅いんだもん。
いつの間にやら、気付いたら寝ちゃってて・・。」
「え?キラ、待っててくれてたの!?」
「そ、そうだよ・・。」
少し照れたようで、赤くなって俯くキラ。
知らなかった・・・。
「ごめん・・。」
今度は俺が謝る番。
「これでおあいこ、だね。」
「ああ。」
キラの目を見ると、キラも真っ直ぐに俺を見返してきた。
「・・あのね。昨日は、アスランの夢を見ちゃったんだよ。」
「えっ・・?」
「・・よくは覚えてないけど、アスランが近くにいて・・何だか・・あったかい夢。」
「キラ・・・。」
それは。
「夢じゃないよ、キラ。」
俺は傍にいるから。
いつでも手の届くところにいるから。
・・これからは、もう離れない。
この広い宇宙の中の、二人だけの居場所。
ここには、俺しか知らないキラがいて。
キラしか知らない俺がいる。
・・会えなかった日々の分も、想いを重ねていこう?



〜あとがき〜
・・何なんでしょうねー、これは・・・(笑)
このタイトルの話を書こうと思った時、イメージしてたのは一言で言うと、
『変態アスラン』でした・・・(笑)(こう書くと身も蓋もないな・・。)
いや、違うんです!キラと同じ部屋になったら、アスラン理性持たないんじゃないの〜!?とか
考えてました・・。それが言いたかっただけです。・・変わらないじゃん・・(笑)
これでも私、アスランファンなんですってばー!(笑)
キラ命っ!なアスラン大好きなんでvv
一時どうなることかと思いましたが、何とか最後はほのぼのないつものノリにすることが
できました。危なかったなー、もう。アスランってば(笑)
アスラン一人称は、難しいですね・・・。
・・あ、この話を書きながら気付いたこと。
『新婚さんみたいだ・・・。』
シャレになりませんね、ほんと(笑)


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