夏の朝




夏の朝。

僕には大事な日課があった。


「ふわぁぁぁぁ・・・・。」


早朝6時。
眠い瞼を擦りながら、僕はベッドを抜け出した。

そして、そのまま庭へと向かう。


「・・・・あ。よかった、今日もちゃんと咲いたみたいだ。」



赤、青、紫・・・。
色とりどりな、朝顔の花。

フェンスにくるくると巻き付いている蔦や、まあるく開いた花びら達は、なんて可愛らしいんだろう。


僕はその場にしゃがみ込み、しばらくの間、そんな朝顔達を見つめていた。







―――― 僕達3人で、朝顔を育てようよっ!







北斗がそう言い出したのは、夏の始まる少し前。



「おじいちゃん家で、種をこんなにもらったんだ。・・・ほら!」



手のひらから、今にも零れ落ちそうだった『朝顔の種』。
その種を、北斗は僕の手のひらに乗せてくれた。


・・・・真っ黒で、小さな種。


その時の僕は、『朝顔』が一体なんなのかさえわからなくて・・・・。
それなのに、なぜか胸がドキドキして・・・・。



「コレが『朝顔の種』。この種から芽がでてくるんだよ!スバル、頑張って育ててみよう?」



初めて目にした、植物の『種』。
こんなに小さな粒から、花を咲かせる事など・・・・本当に出来るのだろうか?



「僕に、出来るだろうか・・・。花を育てるなど。」



何も知らない僕。
物事のうわべしか知らない僕。

そんな僕が、『育てる』なんて事・・・・。



「大丈夫だって!オマエ、花とか草とか好きなんだろ?・・・それに、オレだって昔育てた事あるからよ!」

「ほら、銀河にだって育てられたんだもん。スバルなら、奇麗な花がたくさん咲くに違いないよ!」

「・・・・そうだろうか。」



僕なら大丈夫・・・・。
奇麗な花がたくさん咲く・・・・。

その言葉を信じても良いのだろうか?


「心配すんなって!・・・それより北斗っ、さっきのセリフはどういう意味だっ?」

「あははははっ、気にしない気にしないっ!それよりスバルっ・・・・スバルなら、出来るよ。」
「朝顔か・・・・。どんな花が咲くのだろうな。」



ずっと・・・・。
何事もやる前から諦めてきた僕だけど。

友達を作る事も。
本当の自分をさらけ出す事も。

北斗や銀河がいてくれたから、今の僕がいる。

だからきっと。
大丈夫。うまくいくに違いない。


・・・・そう、思った。



「すっげぇ奇麗だぜ!・・・ただし、滅多に見らんねぇけど。」

「・・・・・?」

「もうっ、見られないのは銀河だけだろっ?あのね、朝顔って早朝にしか花が開かないんだ。だから、寝ぼすけ銀河には見られないんだよ。」

「そうなのか?では、朝顔と一緒に銀河の生活習慣も育てていこう。そうすれば花も見られる。」

「げっっ!冗談じゃねぇってのっ!!」

「はははっ!スバルっ、それいい考えだねっ!!」








―――― そして、夏が来た。






「スバル、おはよう・・・・。毎朝、早いね。」



アクビをかみ殺しながら、北斗が庭へと顔を出す。
僕が毎朝庭へ出ているのを知ってから、少し遅いながらも必ず顔を出してくれるんだ。



「おはよう、北斗。今朝もたくさん咲いたぞ!」

「ホントだ・・・・でも、やっぱりスバルの朝顔が一番たくさん咲いてるね。」

「そ、そうか?」
「うん。スバル、一生懸命育ててたもんね。・・・・きっと、心が通じたんだよ。」

「心・・・・。」



僕がガルファであった時、心など必要ないと思っていたし、自分には無い物だと思っていた。

それが今、この植物に通じたというのなら・・・・。
こんなに嬉しい事はない。



「ところで銀河は・・・・今朝も無理かなぁ?」



北斗はそう言うと、銀河の部屋のある方向を見上げた。
僕もつられるようにして、銀河の部屋を見上げる。

すると、ある疑問が頭を掠めた。



「そういえば・・・・銀河は自分の朝顔が咲くところを、見た事があるのか?」

「う〜ん・・・ないんじゃない?多分。」



確かに、朝顔の花が咲き始めてから、僕は毎朝庭に出ているが・・・・。

銀河にはあった事がない。

こんなに奇麗な花達を見ないなんて、なんて勿体無いんだろう。
それに、花達も可哀相だ。



「そうか・・・・。では見せてやろう。北斗、行こう!」

「えっ、行くってどこに?」

「もちろん、銀河を起こしに、だ。」

「・・・・ええっ!?」

「さぁ、早く行こう!花が閉じてしまう。」

「ちょ、ちょっとスバルっ!?」



僕は北斗の手を引くと、そのまま銀河の家へと向かった。





夏の朝。

僕には、もう一つの日課が増えた。





『interstellar』のchapico様の残暑見舞いSSです。
持っていっても良いということだったので貰ってきてしまいました。
……壁紙も一緒に貰ってきてしまいましたv
初カキコで掲載の許可まで!有難うございます、chapico様。

と、いうことで花を育てるスバル君です。
ガルファでは必要なかったとされるものを吸収して一緒にスバル君も育っていくのですね。
大きく育って綺麗な花を咲かせて欲しいです。
…うむ、あの二人と一緒ならば絶対咲くでしょう。




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