★月★日
銀河達と一緒に「水族館」という所に行く。
すっっっごく、暑い日の最中に大人数で行ったからけっこう大変・・・・・


・・・・・がしがしがしっ。


「え?」
日記を書いていた俺。
そこへさっと影が差し、横からドラゴンの手が伸びて来る。
「?」
さらさらと何か書き直す。


しゃかしゃかしゃか・・・・・


「ああっ!何すんだよぅ!」
「今日俺達が注目された理由、人数のせいにするな」
じろりと睨まれる。
ついでに自分がつけ加えた文面を、シャーペンの先でこつこつと示す。


『≪引卒者≫が走り回った為に引き起こされた事がいろいろあって目立った』


「うっ・・・・・っなら、これも書くからなっ!」


『すぐ立ち止まる奴が一人いたせいで、迷子になったのが二人、俺は大変だった』


「・・・・・ちょっと待てレオ、俺のせいか!?」
「そうだろっ!!」


・・・・・二行の文章を間に挟み、俺とドラゴンが火花を散らす。





      「白銀日記」―――水族館探索記録―――





「おおっ!けっこう綺麗になってんじゃん!」
「そーなの?銀河?」
「改装前よか広くなってんのは確かだぜ!」
結構な人の中、俺達は順路を歩いて行く。
天井にも、周りにも足元にも泳いでいる魚達。


そこは―――そう、水中回廊。
順路の最後にある所だ。


「すっげーっ!総ガラス張りかー。海ん中歩いてるみたいだなー」
「何か不思議な気分だな。俺、こんなに魚を見た事ないから・・・・・綺麗だ」
「数cm隔てた所に泳いでるってのが凄いよね」
流石数年かけただけの事あるよなー、と銀河も相槌を打つ。
銀河の話では、以前はもっと小さくて―――そう、今とは大違いでこんな≪トンネル≫はなかったそうだ。
北斗と銀河に手を引かれながら、同じ様に俺はきょろきょろと見回す。


(・・・・・うん。結構収穫だよな)


相当大変だったけどなーここまで。
そう、妙な感慨にふける俺の耳に・・・・・残り二人の声が聞こえる。
「あれはずいぶん大きいんだな」
「マンボウだ。海産大型硬骨魚で、体長が三メートルに達するものもある。縦に平たいのが特徴だな」
「はぁ・・・・・」
スバルへ解説するドラゴンの声。
歩いて行く内に―――だんだん、それが小さくなっていく。


歩いて・・・・・聞こえなくなって・・・・・


・・・・・歩いて。



・・・・・ああ、また・・・・・



「北斗、銀河・・・・・」
「ん?どしたレオ?」
「・・・・・二人は?」
「「後ろ」」
「・・・・・」
声をかけてくる北斗と銀河に、ふうと溜息をつきつつ俺は振り返った。
興味を惹かれるのは判る。俺もそうだ。
でも・・・・・これ以上捜索したらじっくり見られないんだが?



(・・・・・お前ら何度はぐれたら気が済むんだよぅ・・・・・)



大音量で叫びたいのを、ぐっと堪えてそれでも俺は・・・・・



「ドラゴン!スバル!立ち止まるんじゃな―――――いっ!!」
「「ん?」」




* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 



時間を少し遡る。


事の起こり―――北斗・銀河・スバル・・・それにドラゴンと俺が水族館に来た理由。
それは北斗が『水族館改装記念』のフリーパスを持ってきたからだった。


「―――と、いう事で行こうよ皆!」
「あ、駄目よ私」
「え?」
即答したのは室内の人間(四人)の内、紅一点のエリスだった。
「行くのって有効期限の最終日でしょ?」
「うん」
スバルもいて、僕らがGEARで実験のないのはその日だし―――――と、言う北斗にエリスはボールペンをちっちっと振った。
「私、その日は学会だもの。アメリカにいるから無理よ」
「えー・・・・・」
うーっと唸る北斗。
「そっかぁ・・・・・残念」
「ごめんね、誘ってくれたのは嬉しいんだけど」
「仕方ないよ。エリスも研究者だものね」


二人で納得しつつある所へ、残り二人の声がハモった。


「「学会?」」


声の主は・・・・・言わずと知れた銀河とスバルである。
そして答えたのは―――――


「簡単に言ってしまえば“学者さん達の集まり”ですね。発表会と言っても良いですが」
「発表会って・・・・・間違っちゃいないけど砕きすぎよ?」


苦笑しながらエリスはボアを見やった。
その視線を追い、スバルが振り向いた先には―――――俺達五人。
俺とドラゴン、ユニコーン、ブルホーンにボア。
エリスの研究室でいつもの様に、人型を取ってだらけている。
いやー、この頃はのんびりできて俺としては非常に気分が良い。
思わず一日『昼寝タイム』に陥りそうである。
現に今もこの平和な会話を、うとうとと耳だけで感知している所だ・・・・・


(・・・・・あ、瞼が閉じる・・・・・)


「そうなのか、ボア?」
「―――それで良いですか?エリスさん」
「そんな可愛らしいものでもないけど・・・・・確かに“発表会”ね」
「へー・・・・・大変だなお前も。小難しい話ばっかだろ?」
「ま、慣れよ慣れ。こういうのはね」
「じゃあさ、データウェポンの皆で一緒に行ってくれる人!」


(・・・・ん?・・・・・)


後二人はOKなんだ―――――と、北斗の声に俺は眼を開ける。
「俺行くー」
「んじゃ、まずはレオな。で―――――」
「って・・・バイパーは?」
銀河が同行者を物色してるのにつられ、きょろきょろ部屋を見回すスバルが一人欠けてる事に気づいた。
「あぁ・・・暑いから夏眠に入ってるな。出撃でもない限り起きないぞ」
「は!?何だよその『夏眠』って?」
「冬眠の逆だよ、銀河」
素っ頓狂な銀河の声に、ユニの声が割って入った。
「暑いと眠るんだよねー。バイパーって・・・・・あ、寒くても寝るけど」
「ま、そういう事だから多分行かないと思うぞ・・・・・一応、起こすか?」
「いや、そうならいい」
ブルの言葉にスバルはふるふると首を振った。
「―――じゃあ改めて、誰か―――」
「俺でいいか?北斗」


名乗りを上げたのは・・・・・


「ドラゴン―――っと、他には?」
「ああ、私達は良いですよ。レオとドラゴンならバランス取れるでしょうし」
何でもない様に言ったボア。
ユニコーンとブルホーンもひらひら手を振り「行ってらっしゃい」と言うので、俺とドラゴンという組み合わせになった。



しかし、俺はこの時点で気づくべきだったのだ。
何でボアが『バランスが取れる』なんて言ったのか。



俺はすっかり忘れていた。
―――――ドラゴンは、興味対象に没頭したら最後・・・・・周りが見えなくなると。


そして、同行するスバルも又・・・・・その傾向がある事を。


・・・・・俺は知覚が広いから、例え二人が迷子になったとしても連れ戻せる。
だから『バランスが取れる』なんだと。



―――気づいてりゃあ心構えもできて、俺は何度も何度も何度も探し回る必要はなかったんだ!!!




言ってくれなかったボアを呪うのは―――当日、入場して三十分後。








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