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おやつの時間 ホットケーキミックスに分量のミルクと卵をダマにならないよう十分に混ぜて。 出来た生地を十分に熱したホットプレートに一枚分ずつ流す。 生地の表面にプツプツと穴が空いて、表面が乾いてきたらひっくり返す。 反対側も同じくらい焼いてこんがりキツネ色になったら出来あがり。 メープルシロップや蜂蜜にバターなど、生クリームやチョコレートシロップをかけても良いし。 フルーツを添えても美味しい。 さあ、この〇×社ホットケーキミックスを是非お験しくださ… ぱこん 立て板に水のごとく話していた北斗の頭上で軽い音が響く、振りかえれば傍にはミックスの入っていた箱を手に 腕を組んでこちらを見ている銀河の姿があった。 手に持っていたものを軽く振っていることから、その空箱で殴られたのだと理解する。 「……何でホットケーキの説明から販売になってるんだよ。」 「あはは…この間食品売り場で見たんでつい…」 殴られた頭を撫でてごまかすように笑う北斗。 その前にはスバルと銀河の妹、乙女が並んで座っていた。 乙女は凄い凄い〜と手を叩いて笑っている、どうやら先程の『説明』はお気に召したようだ。 どうやら何時ものようにホットケーキの作り方等を説明しようとして、ついつい横道にそれてしまったようだ。 エプロン姿の銀河は立てた親指でくいっと背後のテーブルを指した。 「準備できたぜ、こっち来いよ。」 テーブルの方を見るとホットプレートの上でもう既に何枚か焼き始めているのが見える。 傍にあるイスの一つには既にアルテアが座っていた。 辺りに微かに漂う生地特有の甘い香り。それぞれ好きな場所に座らせて、その前に皿などを並べていく。 お子様が多いので飲み物は紅茶とジュース。 欲しい人はメイプルシロップ以外にもチョコレートソースや生クリームをかけて。 付け合せとして缶詰も含めて何種類かフルーツがテーブルの上に賑やかに並ぶ。 そのうちの数種は北斗の母親、織絵が持たせてくれた物だ。 そうこうしているうちに片面が焼けるとひっくり返して反対側も同じように焼いた。 その様子をじーっと見ていたスバルに銀河はフライ返しを差し出した。 「お前もやってみろよ。」 そう言って空いている手でまだひっくり返していないものを指した。 多少ぎこちない手でそろそろとひっくり返す。少しはみ出てしまったが無事にひっくり返した。 両面キツネ色に焼けたものから順に皿に乗せていく。 焼きあがった物をとって銀河はボールで湯煎しているチョコレートペンシルで簡単な模様を書いた。 自分の前に飾り付けられたホットケーキを見て乙女は喜んでいる。 「乙女もやるー、スバル兄にあげるのー。」 そう言って自分の前にあるホットケーキに苺をのせた。そっと上から生クリームをかけられて苺が埋まっていく。 「乙女、余あまりかけ過ぎるなよ?」 傍で見ていた銀河の言葉に苺が全部埋まった所でその手を止める。 「できたーv」 出来た代物は殆ど見た目クリームの山だったが、わずかに苺の赤が顔を覗かせている。 スバルはありがとう、と笑って言うとクリームと苺をこぼさないようにのせて ホットケーキの切り分けた一切れを口に運ぶ。 生クリームの甘味のあとに苺の酸味が続いたがそれはまったく気にならなかった。 お返しにと、生クリームで簡単な絵を書いてあげようとスバルは生クリームの入った袋を手に取る。 柔らかくて持ちにくくてしっかり持とうと握り直した。 「あ、あまり強く握ると…」 それを見ていた北斗がそう言って止めようとしたその時。 ブシュッ。 スバルの持っていた袋から生クリームが吹き出した。 とっさに北斗は手をひっこめる。どうやらクリームはこちらには飛んでこなかったようだ。 ほっと一息をつくがすぐに反対隣に誰がいたかを思い出し、 覗きこむようにそこにいた人物の方を向いた。 固まった表情で袋を持った姿勢のままぎこちなく横を向くスバル。 そこにいたのは予想していた人物ではなかった。 二人の視線の先にいたのは、生クリームで顔をデコレーションしてしまった銀河だった。 その手にティーソーサーとカップを持っているところを見ると、入れた紅茶を配ろうとしていたようだ。 「…大丈夫?」 「……す、済まない銀河!」 恐る恐るといった感じで訊ねる北斗と、慌てて謝るスバル。 一見表面上は静かなアルテアも視線は下方を向いたままだ。 何か言おうとして口を開くも言葉にはせずに一旦口を閉じ、スバルの持っている生クリームの袋を指す。 今度の言葉はちゃんと声になっていた。 「とりあえず、それ皿に置いとけスバル。」 「ああ…」 スバルが置いたのを見るとと他には飛んでねーな?と聞いてくる。 「僕は大丈夫だけど…」 自分と周りを見て答える北斗。 布巾を持ってテーブルの上に飛んでしまったクリームを拭きながらスバルも言った。 「僕の方にも被害はないが…銀河、洗ってきた方が良いのでないか?」 「銀兄べたべた〜。」 乙女にまでそう言われて、とりあえず自分以外は無事なようなので銀河はそっとその場を離れた。 「オレ顔洗ってくるから、どこかこぼれてたら拭いとけな。床だったら母ちゃんに言ったら何か拭くものくれるからさ。」 指示だけ出して洗面所に向かおうとする。 「っと、ヤベえ。」 顔から垂れ落ちそうになるクリームを手でぬぐって洗面所へと急いだ。 足音を殆ど立てないで出ていった銀河を見送って、ふと眼をやればアルテアにも同じように白いクリームが付いている。 ざっと拭いただけではべたべた感が拭えなさそうな量だ。 「アルテアさん、手についてる。」 「――ごめんなさい、兄上!」 「ああ……気づかなかったな、洗ってくる。」 無事だった方の手で気にするな、とスバルの頭を撫でてからアルテアは銀河の後を追った。 |