指し示す所は



ベットの上にコロンと寝転ぶ。
仰向けになると天井に張ってあるC−DRIVEのポスターが視界に入った。
銀河は悩んでいた。
北斗の誕生日が3日後に迫っているのにプレゼントが決まらないのだ。
お金の方は小遣いを貰ったばかりなのでなんとかなる、だが肝心の物が決まらない。
ここ数日はこの事にかかりっきりだった。
学校が終わってからや少林寺拳法の練習の合間を縫って、 色々店を覗いてみたりしているが何となくしっくりこない。
(いっそ新作ゲームかなんか買ってやろーかなー…)
ただでさえ深く考えるのは苦手なのだ、いいかげん悩むのにも飽きてきた。
(……でも向こうの方が先に買ってそうだよなー……)
北斗の家族のプレゼントとかぶりそうなものは避けたい。
ケーキか何か作ってあげるというのも一つの手のような気がするが、 そういった物は北斗の母親の織絵の方が上手だろう。
(う〜ん…)
仰向けの状態からコロンとまた転がって横向きになる、ポスターのほかに自分の机が視界に入った。
つらつらと考えながら見るともなしに見ていると、ふと思いついた。
反動をつけて起き上がりベットから降りる。机の引出しの一つを開けてがさごそと中身を一つずつ取り出していく。
一番奥に閉まってあった箱を取り出して、それ以外の物をまた引出しの中に放りこんだ。
箱を開けて目的の物を取り出す。手のひらにすっぽり収まってしまう大きさの皮袋だった。
ベットの上に戻って皮袋を開け、中の物を取り出す。それは、銀色のコンパスだった。
前に父親の源一が何処かへ長期取材に行ったときのお土産としてくれた物だ。
全体的に落ちついた銀色をしていて、中の板にも装飾が少し入っていた。
上部には磨き上げられたガラスのような物が嵌まっており、胴の部分には銀色の竜の羽根を休めた姿がくるりと一周している。
その眼には小さな青い石が嵌まっていた。
とても綺麗だったし何となくカッコ良かったので、貰ってからずっと大事にしてきたものだった。
前に北斗が部屋に来た時にこれを見せたことがあり、そのときにとても綺麗だと気に入っていたのを思い出したのだ。
(これなら、その辺じゃ手に入らねーよな。)
ちょっともったいないかなという気がしないでもなかったが、北斗が喜んでくれるかもしれないという気持ちのほうが大きかった。
(とりあえず明日、ラッピング用の袋とか買ってこなくちゃな。)
間に合って良かった、と思いながら一緒に入れてあった柔らかい布で丁寧に磨き始めた。


学校からの帰り道、何時ものように北斗と銀河は一緒に帰っていた。
「銀河。明日の約束の時間覚えてるよね。」
隣を歩いていた北斗が確認してくる。
「ああ、昼の一時だろ。」
覚えてるよ、と開始時刻を言ってみせる。
「そうそう、銀河良く遅刻するんだもん。気をつけてよ?」
「大丈夫、忘れねーよ。」
母ちゃんにも言ってあるから大丈夫だって、とちょっと向こうの方を見ながら言った。
「……身体張ってるねぇ。まあそれなら大丈夫かな。」
北斗は笑っている、そんな事を話しているとそれぞれの家が見えてきた。
「じゃあ、また明日。」
「ああ、またな。」
北斗と銀河はそう言うと、それぞれの家へと帰っていった。

その夜、明日の準備も済んでもうあとは寝るだけという時に銀河はふと考えた。
(どうせなら、一番に渡してやりたいな。)
薄いグリーンの袋に濃いグリーンのリボン。
それだけじゃ寂しいかなと黄色い花の造花も一緒にくっつけたというラッピングを されたプレゼントが目の前に置いてある。
(…驚かしてやろうかな。)
時計を見ればもう10時半を過ぎていた。
何時もならばもう寝ているが、今日は梱包作業をしていたので少し遅くなってしまったのだった。
北斗のバースデイパーティはお昼からなので、少しくらいは遅くまで起きていても平気だろうと思っていたこともあったが。
必要以上に丁寧にやっていたら思ったより時間がかかってしまった。
北斗の誕生日まで、あと1時間半。
少し眠いが起きていられないというほどではない。
(……驚かしてやろう。)
北斗のほうは寝てるかもしれないけど、その時はその時だ。
そう決めると、わくわくしながら12時になるのを待っていた。

(夜中の12時過ぎたら、7日だもんな。)
家族を起こさないように静かに行動を開始した。
12時を過ぎているのを確認するとプレゼントを持ち、パジャマのままでそっと一階に下り靴をはき鍵を開けて外へ出た。
合鍵をちゃんと持ってきたのでそれで鍵を掛け直し隣の北斗の家に行こうとして…その足が止まった。
あることに気がついたのだ。
「………あの馬鹿犬どうしよう……。」
草薙家の愛犬ジュピターのことだ。
銀河とは何故か仲が悪く、近くへ行けば必ず吠え立てられる。こんな真夜中、近所迷惑になることは避けたい…絶対に。
家の門を出たところで悩んでいると、一緒に持ってきていたギアコマンダーからレオのエイリアス体が出てきた。
「レオ?」
何かを待っているように銀河の目の高さ辺りでじっと浮かんでいる。
「ひょっとして…手伝ってくれんの?」
レオはこくん、と頷いた。
「さんきゅ、レオ。」
レオが手伝ってくれるのなら、誰かに見られないようにこっそりと迅速に行動しなくてはいけない。
そう考えると銀河は北斗の部屋の窓から一番近い道路へと移動した。
北斗の部屋の窓はカーテンが閉まっていたが明かりはついていた。
周りに誰もいないのを確認してからギアコマンダーをかまえる。
「ファイルロード、レオサークル。」
普段呼ぶ時よりずっと小さな声でレオを呼び出す。
レオが乗りやすいようにしゃがんでくれたので、たてがみに捕まるようにして背中に乗った。
「いいぜ、レオ。」
銀河の合図でレオは立ちあがりふわりと浮かび上がった。
部屋の窓の高さまで浮かび上がりぎりぎりまで近づき、並ぶようにして止まる。
銀河はレオのたてがみに捕まったままそっと手を伸ばし窓の桟にプレゼントを載せようとした。
朝にカーテンを開けたら見えるように、と。
その時、いきなりカーテンが開かれて北斗が顔をのぞかせたのだ。
思わず腕を伸ばしたポーズのままで止まってしまう銀河と、目を見開いてカーテンを開けた姿勢のまま固まってしまう北斗。
先に動き出したのは銀河の方だった。
「……よぉ、こんばんわ。」
小声で挨拶なんぞしてみた。
すると固まっていた北斗はいきなり窓を開け、伸ばしていた銀河の腕を掴み勢い良く引き寄せた。
「うわっ!?」
急に引っ張られて部屋の中に転がり込む。
床にぶつかると身を硬くすると、思っていたような衝撃の代わりに暖かいものにぶつかった。
北斗に抱きとめられたのだ。
耳元で北斗の声がする。
「銀河、早くレオを戻して!」
「え?」
何がなんだかわかっていない銀河に少し強い口調で北斗は急がせた。
「早く!」
「お、おう。戻れ、レオ。」
銀河の命令に従いレオはギアコマンダーに戻っていった。
ふーっ、と大きく息をつきそのままの姿勢で北斗は動かなくなってしまった。
「…おーい?」
銀河は大丈夫かー?と声を掛ける。
「ったくもう…誰かに見られたらどうするんだよぉ。この辺人通りが無くなるわけじゃないんだよ?」
あーもうビックリしたぁ、と北斗は顔を上げた。
「一体こんな時間にどうしたの?説明してくれるよね。」
「とりあえず靴脱ぎてーな、オレ。」
あとこの態勢は窮屈、と言うと北斗は気がついたように手を放した。
今までずっと抱きかかえたような格好のままだったのだ。
床を汚さないように靴を脱いで、それを手にふと周りを見渡す。それに気がついた北斗は貸して?と銀河の靴を持って部屋を出ていった。






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