カレー曜日



GEAR基地内。
銀河が自販機に飲み物を買いに行くとそこには先客がいた。
セルファイターのパイロット、吉良国進だ。自分より背の高い吉良国を見上げて挨拶をする。
「こんにちはー、吉良国さん。」
「やぁ、銀河君。今日は一人かい?」
自販機を眺めて何を買うか決めると硬貨をコイン投入口に入れ、ボタンを押す。
「北斗も一緒にいるって、北斗はスバルんトコ。」
ガタンと音がして缶が落ちてきた。
廊下の向こうの方から駆けて来る人影を見つけた吉良国はあ、と声を出した。
「銀河ぁ。」
自販機の取りだし口からドリンクの缶を取り出した銀河は北斗の声がしたので振り向いた。
北斗だけかと思いきやスバルも一緒にいる。
「こんにちは、北斗君、スバル君。」
スバルは軽く会釈して返す。
北斗は隣にいた吉良国にこんにちはと挨拶してから銀河に向き直った。
「ねぇ、お願いがあるんだけど」
「なんだよ?」
プシッっとプルトップをこじ開けジュースを一口飲むと、北斗はそんな銀河の空いている方の手をそっと握っていった。
「僕の為に……カレーを作ってくれないかな?」
吉良国は固まってしまった。銀河はもう一口ジュースを飲んでから答える。
「北斗……ネタ的にありがちな上にその理由が良くわからねえ。」
「そっか、ウケると思ったのに。」
残念そうに言いながら北斗は銀牙の手を離した。どうやら笑いをとりたかったらしい。
「あのね、さっきスバルと食事の話をしていたんだよ。
この間の母さんのシチュー美味しかったって言ってたから…次は何が食べたい?って話になって。」
「どのような物が美味しいのかって話で『カレー』の話題が出たんだ。」
自販機の前で北斗はさっきまでの会話の内容を説明している、スバルもそれに捕捉を入れていく。
「そうしたら北斗がカレーなら銀河が作ったやつが美味しいよと言うから…食べてみたいと思って。」
「じゃあ、今から作ってもらえないかどうかお願いしにいってみようって。」
ふんふんと相槌を打ちながら聞いていた銀河は説明を聞き終えていった。
「それでさっきのになるワケかよ…その前にそれじゃ北斗のお願いじゃなくてスバルのお願いじゃねーか。」
「まぁ、僕もまた食べたいと思っていたから、だから正確には僕とスバルのお願いだね。」
「お前等の分ぐらいなら作ってやるけど…材料今ねーぞ。多分。」
家の冷蔵庫の中身を思い出しながら銀河は言った。
「あ、それは持ってくるなり買ってくるなりするよ。」
北斗の言葉にちょっと待て、と銀河は確認する。
「おばさんトコの材料勝手に持ち出しとかはしねーよな?」
「やだなぁ、そんなコトするわけないじゃないか。」
ぱたぱたと手を振って笑いながら北斗は言った。
「僕も食べてみたいなー。」
先ほどからの硬直から脱した吉良国も言った。その言葉に銀河はひょこっと吉良国を見上げる。
「え、吉良国さんもか?じゃあ、家で作るってワケにはいかねーよな…」
とりあえず三人分も四人分も作るのは一緒だと思ったのか作ることはもう決定らしく、 次は一体何処で作るかという事で相談しだした。
近場のがいいよな、と言う銀河の言葉に北斗は僕の家か銀河の家くらいしかないんじゃない?と切り返す。
そんな事を話していると横から声がした。
「私も食べてみたいわね、銀河君の作ったカレー。」
何処から来たのか何時の間にか側にいたベガに一同は驚く。
「あら、どうしたの皆?」
「い、何時の間に…。」
「脅かさないでよぉ…。」
ドリンクをこぼしそうになりながら少し体が引いている銀河、おもわず一歩飛びのいた北斗。
スバルに至っては声が出ていないありさまだ。
「お疲れ様です、副指令。」
幾分なれているのか吉良国は普通に挨拶を交わす。
「お疲れ様、吉良国君。」
何事もなかったかのようにベガは吉良国に返事を返しておいて銀河達のほうを向く。
「ま、気にしないで頂戴。それより銀河君、作るんならここの厨房借りてあげるわよ。」
気になる、とその場にいた全員が思ったがあえて口には出さなかった。
奇妙な沈黙がこの場所を支配してしまったが、気にせずに銀河は言った。
「…ここで作っちゃっていいの?」
「ええ、材料も必要な分量を書いてくれたら買ってくるわ。」
そう言いながらポケットから筆記用具とメモをとりだし銀河に渡す。
ベガはちょっと考えてから言った。
「材料増やした方がいいかもしれないわね。」
「増やすのか?別にいいけど……」
ベガに手渡されたメモに大まかな材料の分量を書きながら銀河は言った。
「作るのは早い方が良いわよね、明日は学校なかったはずね。明日でも大丈夫かしら?」
「明日は…特に何もねーから平気だと思う。」
そして明日の時間等細かいことを決めてしまうと来た時の様にベガはすばやく去っていった。
「あの人GEAR内に特別な通路でも持っているのかな…」
と言う北斗の呟きには誰も答えることが出来なかった。


「うひゃあー……。」
ベガが買ってきた材料を前に銀河は絶句していた。メモに書いて渡した分量の軽く4〜5倍はあるようだ。
「ちょっと買い過ぎたかしらね。」
材料全部を調理台の上に並べてみてあらためてその量を実感したようだ。
お店の人が安くしてくれたから思わず買ってしまったのよね、とベガは言った。
「なー、これ全部使うのか?」
「全部は使わなくても良いと思うわ、でも多分半分以上は使うことになるでしょう。」
「……何人分作る気なんだ?」
「20人分くらい出来るといいわね。」
20人…と呟き絶句する銀河。そんなに大勢になるとは思わなかったらしい。
手渡されたエプロンを持ったままつける事を忘れている。
「なんでそんな人数になるんだ…?」
「作戦室にいるオペレーター達と整備班の人達を含めた人数よ。」
何時もの格好からジャケットを脱いで代わりにエプロンをつけながらベガは答えた。
「多分、吉良国君辺りから情報が流れているだろうと思うの。多めに作っておくにこしたことはないわ。」
「……ま、いっか。何時も世話になってる人等だもんな。」
しばらく黙っていたがにこっと笑い明るく銀河は言った。
「それに、ゴメンね。私、渋谷長官とDr.井上にも言ってしまったのよ。」
「あー、もういいって。食べてくれるかどうかわかんねーけど、そろそろ作ろうぜ。」
「絶対食べてくれるわよ、凄く楽しみにしていたもの。」
ベガさんの料理の方が美味いんじゃないのかなー、などと話ながら
ベガと銀河は野菜を手に取り流しに運び調理を開始した。






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