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蝶 〜キム子様原案・猫柳様作成のGIFアニメから〜 プシュウ。 背後で自動ドアの閉まる音がする。 この半日ずっと室内で仕事をしていたら、織絵に部屋を追い出されてしまったのだ。 『そんなに急ぎの仕事でもありますまいに、根を詰め過ぎですわ。』 小休憩のためにお茶を持って来た織絵はお盆を手に心配そうに言った。 『しかし、早めに終わらせておいた方が良いだろう?』 淹れてくれたお茶を飲みながらアルテアは答える。 机の上には起動しているパソコンと何枚かの書類が広げられたままだった。 『この一週間ほどはそう言っておられます。』 そうだったか?と首を傾げているアルテアに織絵は一つ溜息をつく。 『もう本日は仕事をしてはいけませぬ。 ちゃんと休養をお取り下さるなり、気分転換をなさるなりして下さいませ。兄上。』 そう微笑みながら言ってきたのだった。 微妙な迫力を含んでの笑みに押され、素直に頷いて出てきてしまったのだ。 その手には得意の獲物が隠し持たれていたことを知っている。 従わない場合には実力行使もやむをえないと思っていたのだろう。 (……強くなったものだな、わが妹よ……) しみじみとアルテアは思ってしまったのだった。 やりかけの書類とか今日中に仕上げてしまいたかったが、 今戻ったら確実にその場は戦場と化すだろう。 (……応戦のみとなるだろうが、絶対に勝てなかろうな) そう考えていたが、よくよく考えると応戦すら出来ないような気がする。 結果、仕方なしに外へ出てみることにした。 薄く白い雲が青い空に張りついている、日差しはさほど強くない。 当ても無く散歩していると、この暖かい陽気に誘われたか一匹の蝶が眼前を飛んで行く。 どうせ行きつく目的もないのだから、とついていける範囲で付いていってみる事にした。 蝶は眼の高さ辺りをひらひらと飛んでいく。 幸か不幸か人が付いて行けそうに無い所を行かないでいるので、少し離れて後をゆっくりと歩いていく。 今までやっていた作業に疲れた眼には、頭上に生い茂る緑からさしこむ光が少しまぶしく映る。 ゆっくりと慣らすように目をしばたたかせた、自然と伸びをする。 自分が思っているより、疲れていたようだ。 ふう、と息をつき辺りを見るともはなしに眺めて歩いていく。 木々はうっそうと茂っているわけでもなく、足元には細い道らしきものが続いている。 蝶に道先案内をされるように木立の中を歩いていく。 木立がまばらになっていき目の前に少し開けた場所が見えた、人の気配がする。 多少聞き取り辛いが声もするようだ。 樹の傍らから覗いて見ると、拳法着姿の少年が練習をしていた。 深い呼吸の後に構えをとり、突きをいれる。 「はっ!」 そのまま勢いを殺さず蹴りが放たれ、身体ごと半回転する。 その小さな身体は身軽に動き、跳ねあがり、そして静止する。 またゆっくりと動き始めるとだんだんその動作は速さを増していった。 見ていると何回も何回も繰り返し身体に覚えさせた動きである事が判る。 まだ荒削りだが何処か人目を引くその動き。 このまま学び続けて積み重ねていったら、どのように育っていくのかいっそ楽しみなくらいだ。 そんな期待を持たせてくれる子供なのだ、この出雲銀河という少年は。 (このような所でも修練に励むとはな…) 最初は邪魔をしないうちに立ち去るつもりだったが、なんとなくその練習風景を見ていたくなった。 黙ってみているのも悪いと思ったので一声掛けるつもりで銀河のいる方へと歩いていく。 集中しているのだろう、アルテアが近づいてきたのも気がつかないで練習している。 あまりにも集中しているその姿に、ふと悪戯心がわいた。 今まで普通に歩いていたのだが、気配を消し足音を立てないようにする。 ここまで先導して来た蝶はそんな銀河の周りを先ほどから飛んでいた。 ほど近くまで飛んできた蝶に気がついた銀河は一時その練習の手を休め、そっと追い払おうとする。 蝶に注意がそれた瞬間、後ろから抱きしめそのまま持ちあげてみた。 「わああっ!」 急に抱え上げられたことに対してか、はたまたいきなり出現した人に対してか、銀河はかなり大きな声をあげた。 これ以上無いくらいにその大きな眼が見開かれてしまっている。 地面の上ならば飛びあがっていたかもしれないくらいの驚き様にアルテアは密かに満足を覚えた。 「注意力散漫だな、銀河。」 「アルテアかよ…」 相手が誰であるか認識したとたんうわ、ビックリしたーと大きく息を吐く。 アルテアの腕が支えているので銀河の体は空中で揺れている。 その顔を上から覗きこんで微笑って見せた。 つられて笑い返そうとして、銀河は自分の今置かれている状態に気がついた。 「いい加減にこの手離せよな。」 その腕を退けようと力をこめてみるがしっかりと抱えこまれていて外れない。 「折角捕まえたのだ、このまま持ちかえろうと思ったのだがな?」 その言葉を聞いて怪訝な表情した銀河は次にその顔に不敵な笑みを浮かべた。 アルテアの腕と自分の身体との隙間に右腕をさし込み、そのままひじから跳ね上げる。 身体が下へと沈み拘束が緩む。そのまま抜け出し一回前転して跳ね起きる。 自由の身になると飛び退って距離をとった。 油断無くアルテアを見据えながらもうまく逃げ出せた事で笑みを浮かべている。 「へへん、大人しく捕まってるかっての。」 アルテアは逃げられた手の中を見ていたが、次第に口元を緩ませて言った。 「ならばもう一度捕まえるまで。」 片足を軽く引き、重心をわずかにずらす。自然に立っているだけのようだがいつでも動ける態勢をとる。 その動きを見て銀河も構える。二人の間を一陣の風が吹き、それにのって木の葉が流れた。 それが合図ではないだろうが、同時に二人は動いた。 鋭い突きを受け流し、行き過ぎようとする身体を捕らえようとするが慌てて離れる。 その直後にアルテアのいた所を銀河の後ろ回し蹴りが通りすぎる。 かわされてしまいちっ、と舌打ちをするがそのまま攻撃を続ける銀河。 「てやっ!」 回し蹴りを避け、しゃがみこんで軸足に足払いを掛ける。 銀河は避けた拍子に少しバランスを崩すが、何とか立てなおした。 それを見て自然と笑みが浮かんでくる。この遣り取りが楽しくなってしまったのだ。 (……やはり一人での修練はつまらぬわ。) ここ最近は自分一人で剣の練習をしていた。 同じような剣の使い手がいないのだから仕方のないことなのだが。 「剣」にこだわらなく相手を探せば良かった。 こんなに近くに相手がいたのだから。 (ベガに感謝せねばなるまいな。) ちらりとそんな事を思ったりもしたが、すぐさま銀河との対戦に集中する。 余分な事を考えている暇など無い、向こうは全力でかかってくるだろう。 全力で来る相手にやむなく加減はしても、手を抜くなんてもっての外だからだ。 どうせだから思いきり相手して貰おうと、攻撃方法を捕まえる目的から切り替えた。 そう、その強さを確かめる方向へと。 強く踏みこみ距離を詰める、ひゅっ、と息を吐きつつ鋭く突きを放つ。 反応早く銀河には半身開いてかわされてしまったが、アルテアは気にせずその腕をそのまま大きく横へ振る。 「げっ!?」 両腕を盾にして受けとめるが勢いを受けきれずそのまま吹っ飛んでしまった。 勢い良く地面に転がる、回転が止まると手をついて起き上がった。 「くそーっ、やりやがったなっ。」 「ふっ、どうした。もう降参か?」 口の端に笑いを浮かべたままアルテアは問う。 銀河は、んなわけねーだろっ!とすぐさま立ち上がり構えをとった。 そうこなくては、と同じく構えをとるアルテア。瞬く間に静かな木立ちの間に掛け声が響いていく。 対峙する二人の周りをふわふわと飛んでいた蝶は、その光景に満足したかのように最後に大きく一回りする。 そしてその姿はゆっくりと森の奥へと飛んで行き、見えなくなっていったのだった。 |
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猫柳様の所でのキム子様のキリリクを見て思いついた話です。 元となったGIFアニメが見たい方は猫柳様のサイトかキム子様のサイトへどうぞなのです。 …その、大分違ってますが。文章の内容は所詮私なのですから。 でもかいてて楽しかったです〜v <数時間後> |
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