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星月夜 「んーっ、やっと着いたぁ」 北斗は荷物を足元に置き大きく伸びをした。 ずっと乗り物での移動が続いていたため体がすっかりこわばってしまっている。 隣で銀河は同じように荷物を置き、腕をぐるぐると回していた。 「結構時間かかったよな」 ここは星見町から電車を乗り継ぎ、バスに乗ってようやく着いた小さなキャンプ場。 山のふもと辺りに小さな村と共にある静かな所だった。 出雲家と草薙家、それにアルテアとスバルも加えてのキャンプだったが 予定がずれてしまい先に二人で来たのだった。 明日には皆合流する予定だが本日の所は二人だけ、折角だからと自分たちだけで電車に乗った。 何となく冒険しているような気分でわくわくしながらそれをを楽しむ。 お昼を少し過ぎた頃に到着して、バンガローの鍵を借りる。 そこへ荷物を置いて近くを散策したりしているとすぐに日が暮れてしまった。 夕食をとり、寝る支度を整えると後はする事が特に無い。 幸い夜になっても晴れているので、バンガローから出て星が見えそうな場所まで出てみることにした。 山の中だしきっと良く見えるだろうと思ったのだ。 星見町でも十分見れるが、やはりそれとは別に自然の中で見てみたくて、 昼間のうちに目をつけていた川向こうを目指す。 こちら側のほうが山が低いので空が広く見えるだろうという北斗の推測の結果だ。 こんな時間帯になると同じようにキャンプにきている人々でも歩いている事なんて無いようで、 村の人達も寝ているのだろうか、もちろん車も通らない。 大き目な橋を渡って道路を民家から離れた方へ少し歩いていく。 道路添いには外灯の明りが点在していた。 外灯の立っている間隔が広いために次の外灯との間の中程まで行ってしまえば明りが邪魔にならない。 明りの傍でも、見上げた空は黒い空間が少なく見えている。 それほど星が多く見えるのだ。 特に大きく光る星が見えるわけでもないが、一面を覆うように星が散っている。 月は中空に大きくかかるでもなく、山の稜線辺りに浮いているため空は星が独占していた。 川へと降りていくコンクリートの階段の一番上に並んで腰掛ける。 一緒に星座早見表を持ってきていたのだけれど必要無かったかな、と北斗は思う。 星座なんかわざわざ探さなくとも、この夜空を見ているだけでいいような気がしてきたのだ。 川の流れる音と、虫の鳴き声。 二人とも喋らずにいるので聞こえてくる音はただそれだけだった。 後ろに手をついて見上げていたら、唐突に着ているパーカーのフードを引っ張られた。 上半身をひねって隣を見る、少し低い位置に見えるはずの銀河の顔が無い。 「こっちこっち。」 振り向いてそのまま視点を下げると道路に寝転んでいる銀河と目が合った。 ひらひらと手を振って笑っている。 「何やってるの銀河?」 「上見るんならこの方が楽だぜ。」 ちょっと背中痛てーけどな、とフードを引っ張った手を頭の下で組みなおす。 いい加減支えていた腕も疲れていたので銀河に倣いその場に寝転ぶ。空が少し遠くなった。 確かに小石が当たって少し痛い、だが眺めている分にはこちらの方が楽だ。 着ている服を通して道路のアスファルトの熱が伝わってくる。 今時分の山の夜は涼しいぐらいなのでその暖かさが丁度良い。 北斗は黙ったままの銀河に声を掛けた。 「銀河。」 んー?と返事が返ってくる。銀河の視線は空を向いたままだ。 川面からのささやかな風に道路との境に生える雑草が揺れている。 「こんな所で寝たら駄目だよ?」 寝ねーよ、と今度は先程より早く返事が返ってきた。 ならいいけど、と北斗は笑い天空に光る星を見つめる。 北斗の視線に沿うように銀河はまっすぐに腕を伸ばした。 「あの辺。」 つい、と空の真ん中辺りを指差す。星が多いよな、と銀河は続けて言った。 指した先には小さな星が集まって少し幅のあるラインを描いている。 「河…みたいだよね、あの辺が天の川なのかな。」 「お前、星座早見表っての持ってきてたじゃねーか。」 あれってそういうの載ってねーのと隣の北斗の方を向く。 「…わざわざ探さなくても良いかなって。見てるだけで良いような気がしない?」 この量、と両腕を空に向けてくるりと回して見せた。 「それもそうだなー。ま、いっか今夜は。」 銀河も北斗の言葉にあっさりと納得して。そしてまた、虫の声だけが聞こえる時が過ぎていく。 山の端に見えていた月が少し高くなった。 「何かさあ…」 顔を上に向けたまま銀河は言った。北斗も上を向いたまま続きを促す。 「何?」 「うん、これだけ星があったら一つくらい落ちてきそうだよな。」 その言葉に北斗は笑みをこぼす。 実際今でも宇宙の何処かでは落ちているのだろう。 地球にだって毎年隕石で小さなものは落ちてきてはいるのだ、到達する前に大気圏で燃え尽きるだけで。 でも銀河が言いたいことはそうではなくて… 「本当に地球に落ちたら大変だろうけどね……」 「……ひょっとしてオレ達呼び出され?」 前にも似たような事があったのを思い出したようだ。 暗くてわかり辛いが苦笑しているような銀河の口調からどのような表情をしているのか想像出来る。 それがおかしくて北斗は微笑った。 「笑うなよ。」 銀河が不貞腐れたような表情で言うが、北斗の笑いは止まらない。 北斗の笑いも収まる頃、急にポケットに入れてあるギアコマンダーから光が漏れた。 不思議に思う間もなく小さなエイリアス体の姿でユニコーンが飛び出してくる。 後を追うようにドラゴン、バイパーも飛び出し北斗の周りを飛び回った。 「えっ、ちょっと皆!?」 がばっと身を起こし慌てて周りを見まわす。 北斗の声と周りを飛び交う光に銀河も身を起こした。 「どうしたんだよ…っておい!?」 同じように光るギアコマンダーからレオが最初に飛びだし、続けて残りの2体も飛び出した。 それぞれの光を放ちながらデータウェポン達は飛びまわる、星空を背景にして。 金をおびた白や青、赤や緑、橙、紫。その存在を示す色が暗闇に溶け込まず舞っている。 二人はデータウェポン達を戻すのを忘れてしばらくその光景に見入ってしまった。 楕円を描くように飛びまわり、尾を引いて重なるように螺旋となる光。 散々飛びまわって気が済んだのかデータウェポンはそれぞれの契約者の周りに集まってきた。 「もう、ビックリしたじゃないか。」 北斗はちょん、と肩の上に乗っているユニコーンを指でつついて言った。 ドラゴンとバイパーは宙に浮いたままそれぞれ左右に控えている。 「お前等なー…誰かに見られたらどうするんだよ。」 銀河のほうはと言えば肩の上で擦り寄るレオに反対側の肩の上にはボア、頭の上にはブルが乗っている。 「まぁ、誰もいないから出てきたのかもしれないね。」 乗っかっているブルを眺めて北斗はポケットからギアコマンダーを出した。 「誰か人が通りそうだったら戻って、ね?」 北斗の傍の3体とも頷いた。 「お前等もな?」 銀河も同じようにポケットから出すと、銀河の傍の3体も頷く。 「しばらくは一緒に見てよーな。」 二人は視線を交し合うとにっこり笑いあう、そしてまた静かに上を見上げていた。 実際にたいした時間は経っていないのだろうが、見上げた先を斜めに横切るひとすじの光。 『あ!』 声を上げ目で追ったが間に合わず、光は散らばる星に紛れ見えなくなってしまった。 『…あ〜あ。』 口をついた言葉が同じだったことに気がついて、二人はその場で笑っていた。 「…残念だったね。」 「ま、次の時狙おうぜ。」 願いごとを繰り返せなかったのは確かに残念だったけれど、 みんなで流星を見れたことで二人は満足していたのだった。 「……皆明日来るんだよな。」 銀河はまだ地面に両足を投げ出したままで言った。 「明日も晴れるかな。」 夕方チェックした気象情報では晴れだった、とか山の気象は変わりやすいから断言は出来ないとか。 色々な言葉が頭の中を周るが、口にしたのは結局最後に思いついた一言。 「晴れるよ。これだけ星があるんだもの、そういうお願いなら一つくらい叶えてくれるんじゃない?」 北斗の言葉に大きな眼をぱちくりとさせる。 一瞬の後に銀河は笑って立ち上がった。座りこんでいる北斗に向かって手を差し出す。 「そーだな、じゃあもう寝ようぜ。明日はアイツ等とたくさん遊ばねーと。」 その手を握って引っ張り起こしてもらう。服に付いた砂を払い持ってきた早見表を拾い上げた。 「そうだね、スバル達も来るんだもんね。」 「乙女も来るぞ?全力で遊ぶぞきっと。」 その時の想像がつくのか楽しそうににやりと笑う銀河。 返事がこないので覗きこむと、北斗の表情が固まってしまっている。 「……大丈夫、アルテアさんもいるからきっと大丈夫だよ。」 どう大丈夫なのか何か言い聞かせるような口調になってしまっている。 隣で銀河はその場でしゃがみこんで笑っていた。目元に涙が浮かんでいる。 「もう、行くよ銀河」 ぐいと腕を引っ張り上げ先にたって歩き出す北斗。 ちゃんとギアコマンダーにデータウェポン達を戻すのを忘れない。 銀河は浮かんだ涙をぬぐいながら引っ張られるがままについていく。 結局銀河はバンガローに着くまで笑いつづけていたのだった。 |
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勘違いキリ番を快く引き受けてくださったタカハシナヲコ様に差し上げましたv 前からやりたかった『星空の下での北斗と銀河』です。 Topに歌詞載せている GARNETCROW の A crown を聞いてからずっと書いてみたくて… アルテア様やGEARの皆もいるけど、二人で護りきった星空みたいな感じで聞いてました。 やっと書けたです〜v |
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