一枝に火色の華咲く


その日は久しぶりにじめじめとした感じも無い、良く晴れた日だった。
続いていた長雨もやみ、スカイブルーの空に白い雲と強い日差し。
蝉の声が良く響くそんな日の夕方、清麿とガッシュは河原へと向かって歩いていた。


何でそんな事になったかといえば、夕方間近に起きた遣り取りの所為だろう。

「清麿、今日は一緒に花火をするのだ。」
「はぁ?いきなりなんだよガッシュ。」

一人でお使いに行っていたガッシュが帰ってくるなりそう言ったのだ。
商店街で買い物をしたら店の人に御褒美として子供用の花火セットを貰ったのだそうだ。
貰った時に『大人の人と一緒にするんだよ?』と念を押されたのだと。
勿論ガッシュは最初から清麿と一緒にするつもりではいたのだが『大人』も必要であるという場合。
付いて来てくれそうなのは、清麿の母親くらいしか思いつかなかった。
ここへ来る前に台所へ立ち寄って――買ってきた物を渡すと言う目的もあったが――訊ねてみた所、 生憎と手が空いていないと言うことだった。
本日は花火は無理かとガッシュが肩を落としていると清麿の母親はこう言ってくれた。
「母上殿が言われるには清麿が付いておれば良いのではないか、と。」
ガッシュが一人で花火をするのは問題だが、保護者役の人がついていれば大丈夫。
後はいっしょにして欲しい保護者役をその気にさせるだけである。
……それが一番大変な場合もあるのだが。
「だから一緒にするのだ、『花火』とはとても綺麗な物なのだろう?」
『よぞらいちめんにいろとりどりのはながさくよう』な感じだとか『ひかりがたきのようにながれる』物だとか、 誰に聞いたのかずらずらと情景説明を並べ立てている。
清麿は溜息を一つついて読んでいた本を閉じた。
「ガッシュ……それは『打ち上げ花火』と呼ばれる物でお前が持っているのとは違うぞ?」
そしてもう一つは『仕掛け花火』の事のようだ。
自分の期待している物とは違う物だと言われてしょんぼりとしかけたガッシュに慌てて付け加える。
「そこまで大掛かりじゃないが、それはそれで綺麗だけどな。」
言われてまたガッシュは期待に満ちた目で清麿を見た。
(しまった……)
ここでまた行くのを渋ればそれはもう騒々しく騒ぎ立てて階下の母親からもお叱りが飛ぶだろう。
それはちょっと望む所ではないし、清麿自身も花火なんぞするのは随分と久しぶりだった。

「あ〜、判った。行ってやるから、お袋にそう伝えて来い。」
「本当か!有難うなのだ清麿〜。」

ぴょこぴょこ飛び跳ねて全身で喜びを表現しているガッシュの脇を通りぬけて、バックパックに財布などを放りこむ。

「清麿、何処かへ行くのか?」
「……二人でそれだけじゃちょっと物足りねぇだろ?少し買い足してくる。」

そう言ってバックパックを肩に引っ掛け部屋を出ようとした清麿の後ろからかなりの勢いでぶつかってくるモノ。
何とかその場に踏みとどまりつつ首を捻って後ろを見てみれば、案の定そこにはガッシュの姿があった。
「ガッシュ……!」
清麿が怒鳴ろうと口を開く前にガッシュはそのままよじ登ってきた。
肩まで登ってそのまま顔を覗きこんでくる。
「私も行くぞ!荷物持ちをするのだ。」
こうなったガッシュは絶対について来るだろう、下手したらこの体勢のままで。
肩口にくっ付いて離れないガッシュを引っ張りながらささやかに抵抗してみた。

「お前帰ってきたばかりだろう……」
「良いのだ、一緒に行くのだ!行くったら行くのだ〜」

どうあってもついてくるつもりのガッシュに、先に清麿の方が音を上げた。

「また暑い中に出ていくなんて物好きだな……。」
「物好きかのう?でも良いのだ〜」

さあ行くぞと言わんばかりに肩にしがみ付いたまま進行方向を指差している。
引きはがすのを諦めてそのまま階段を降り、台所にいた母親に一声声をかけてから玄関にて靴をはいた。

「……ガッシュ、ずっと俺に乗っているつもりか?」
「そ、そんな事は無いぞ。ウヌ、今降りるのだ。」

慌てて清麿から降りるとガッシュも自分の靴をはいて、先に立って玄関のドアを開け、まぶしい日差しが降りしきる外に出た。






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