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降る光 髪を揺らし、通りすぎた風は水気を含んだような香りがした。 顔を上げれば頭上の空は薄暗い雲が立ち込めていて今にも雨が降りそうだ。 このまま降らないでいてくれるかどうかは判らないので降り出す前に家に帰ろうと考えた。 児童公園の木の下で遊んでいたガッシュは、背中のフード状になった所にバルカンを入れ 家へと向かって歩き出した。 もう直ぐそこに高嶺家の門が見えてきたという所で小さな雨粒がぽたりとあたった。 当たった場所を手で撫でると、足を早めて門をくぐりぬける。 「ただいまなのだ〜」 玄関で勢い良く帰宅を告げると、そのまま廊下へと上がりきょろきょろと見まわした。 「御帰りなさい、ガッシュちゃん。今日は早かったのね。」 声と音を聞きつけて清麿の母親が台所から顔を出す。 目指していたものを見つけた顔で足音軽く近づくとガッシュは急いで外の様子を告げた。 「母上殿、雨が降ってきたのだ。」 「あら、大変。洗濯物を入れなくちゃ。」 庭に出てどたばたと、乾してある洗濯物を取りいれる。ガッシュも一緒になって手伝った。 本格的に降り出した雨を横目に二人はほっと一息。 既に乾いていた洗濯物を畳み出して母親がはたと気が付いた。 「清麿、今日は傘を持っていかなかったわねぇ……」 時計を見れば学校の授業終了予定時刻までしばらく間が有るといった時刻だ。 窓の外は、相変わらずの雨。降り出したばかりのそれはまだまだ止む気配はなさそうだった。 一緒に窓の外を眺めていたガッシュは良い事を思いついたとばかりに笑顔で胸を叩いた。 「ウヌ、母上殿。私が清麿に傘を届けるのだ!」 「あら、行ってくれるの?」 清麿の通う中学校へは良く顔を出す、というより付いて行くので道順と授業終了時刻位は知っている。 その事を知っている母親は特に心配もせず素直に頼むことにした。 「じゃあ、頼むわねガッシュちゃん。」 「任せるのだ。」 早速とばかりに出かけようとするガッシュを少し引きとめて。 ちょっと待ってね、と母親は部屋の奥へ引っ込むと、何かを抱えて戻って来た。 「ほら、ガッシュちゃん此れ着ていきなさい。」 靴をはきかけて待っているガッシュに清麿の母親が出してきたものは、雨の日の装備一揃いだった。 フードの付いたレインコートと長靴、オマケに傘まで付いている。 「私の為に用意してくれたのかのう…?」 そうよ、との答えに渡された雨具をぎゅ、と抱き締めて満面の笑みを浮かべた。 「アリガトウなのだ、母上殿!」 早速着てみなさいとのお言葉に腕の中のものを広げるとその場でいそいそと着込みだす。 何時もの服装の上にレインコートを羽織り、フードもかぶって――バルカンは置いていくよう言われたのでお留守番だ―― 長靴を履いてどこかおかしくないか見てもらう。 「大丈夫、似合っているわよ。じゃあ、車と足元に気を付けて行ってらっしゃい。」 太鼓判と見送りの言葉を頂いてから、ぽん、と傘を差して元気良く高嶺家から飛びだした。 「いってくるのだー!」 その手には清麿の分の傘も忘れずにしっかりと持っている。 ぱちゃん。 ガッシュは言われた通りに気を付けて歩道を歩いていたが余程嬉しいのだろう、水溜りを踏み、時折くるくると傘を回しながら歩いていた。 ちょこちょこと余分な行動を取って居た為、校舎が見え始めた頃、チャイムの音が聞こえてきた。 お使いの目的である清麿が帰ってしまっては元も子もないので、ガッシュは中学校へと急いだ。 その頃学校では窓の外で降り止まぬ雨を見て、清麿が少し困って居た。 授業の途中から振り出した雨は勢いは弱まれど未だ止む事も無く。 暗く立ち込めた雲は少しずつ流れているのか、時折色の薄くなった所から弱い光が漏れた。 授業が終了しても、清掃が終わり帰りの仕度が出来ても雨は止まなかった。 (参ったなこれは……) 珍しく天気予報が当たりだったなと、携帯用の傘でも持ってこれば良かったと思うがそれはもう後の祭で。 守備良く傘を持って来ていたり、学校に置き傘を置いてあった生徒等はとっくに帰り支度を済ませて下校しはじめている。 帰宅の方向が一緒の知り合いを見つけると、あわよくばその恩恵にあずかろうとする声も聞こえて来たりしていて、 廊下は色々な賑やかさに満ちていた。 雨足が弱まった所を見計らって走ってでも帰るつもりだったがまだまだ止む気配は無い。 後5分ほど待っても弱まらなかったら、びしょ濡れになるのを覚悟で帰るかと清麿は決めた。 |