河原で



ほどよく晴れた日のこと、ロクショウさんは河原でお昼寝をしていました。
気持ちの良い風に乗って咲いている花の香りや小鳥の鳴く声や、子供達がロボトルをしている声が届いてきます。
(・・・良い天気だ・・・)
そうしていてどの位たったのか知りませんが、あるとき自分の上に影が差したような気がして ロクショウさんは目をあけました。
(雲が出てきたのだろうか・・・!?)
目をあけてみてびっくり、なんとヒカルさんがしゃがんで上から覗きこんでいました。
「や♪」
ロクショウさんと目があうとにこっと笑いながらヒカルさんは挨拶をしてきます。 「こんにちはヒカル殿・・・今日は、何か?」
とりあえずロクショウさんは礼儀正しいので挨拶を返しました。
「いや、別に用は無いよ。バイト帰りに通りかかったら君が寝ていたから・・・ごめん、起こしちゃったみたいだね」
「かまわん、だいぶ日も落ちてきたようだからな」
寝ているうちに大分日も暮れてきていたようで、たくさん聞こえてきていた子供達の声も聞こえなくなっていました。
薄いオレンジ色の光があたりを満たし始めていました。

「なぁ、ロクショウ。君はいつも何処に泊まっているんだ?」
ちょこんとしゃがみこんだままヒカルさんがたずねます。
河原の土手に起き上がって座りなおしながらロクショウさんは答えました。
「そのへんの・・・木の上とか、色々だが。」
その答えを聞いてヒカルさんは少し考え込んだようでした。
少しの間沈黙があたりを支配しました。
「そ・・」
それが何か?とたずね返そうとしたロクショウさんが言うより早くヒカルさんは言いました。
「そうだ、ちょうどいいや今日泊まりにきなよ。」
良いことを思いついたようににこにこしてるヒカルさんに対し、ロクショウさんはちょっとびっくりしたようです。
「何がちょうど良いんだ・・・」
「君に今ここで会えたことが、さ。」
ロクショウさんのツッコミも軽く流し、ロクショウさんを家に連れていこうとします。
「しかし、いきなりではご家族の方にもご迷惑が・・・」
なんやかんやと言っているロクショウさんの手を引っつかみ、ずんずんと先に立って歩き出しました。
殆どヒカルさんに引きずられるような形でロクショウさんはついていきました。
メダロットと人間の力の差もあるでしょうから、その気になればロクショウさんも手を振り解くことくらい
簡単なことでしょう。でもロクショウさんはそうしませんでした。
「家族は別に良いんだ、絶対怒らないと思うよ。ぜんぜん知らないわけじゃないんだし・・・」
後ろに引きずられるようにしてついて来ているロクショウさんに向かってヒカルさんは言いました。
「君が来てくれたらあいつも喜ぶと思うし、それに・・・」
「それに?」
「僕もとっても嬉しい。」
他人に自分が訪問することを喜ばれたら誰だって嬉しいものです、しかもそれがそこの人に望まれてならなおさらです。
言っている言葉自体はごくありふれたものでしたが、本当に心からそう思ってくれているのが伝わってきたので ロクショウさんはなんとなく嬉しくなってしまいました。
(・・・ヒカル殿の御好意に甘えることにしよう。)
そう思ったロクショウさんは、まず引きずられるままになっているこの状況をどうにかしようと思いました。
ちょっと考えてから、繋いでいる手を自分から握り返してみました。
ちょっと驚いたように自分の方を向いたヒカルさんにむかって言いました。
「・・・お言葉に甘えさせてもらってもよろしいか?」
それを聞いたヒカルさんはいと嬉しそうに笑いながら言いました。
「こっちが言い出したことなんだよ?もちろん、喜んで!」
「それでは、もう少し引っ張るのをやめてもらえると嬉しいのだが。」
自分がちょっと速めのペースで歩いていることを知ったヒカルさんはペースを落としました。
「ごっ、ごめん!」
そして今更ながら自分がずっとロクショウさんと手を繋いでいることを知って、 慌てて手を離そうとしました。
でもロクショウさんの方が離そうとしませんでした。
このときロクショウさんはこの暖かい手を離したくないと思っていたのでした。
「えーと・・・」
「このままゆっくり行こう、ヒカル殿。せっかく綺麗な夕焼けだからな」
夕日をあびてロクショウさんの顔が赤くなっていました。
夕日のせいだけとは限りませんでしたが。
夕焼けが綺麗なのと手を握っているのは関係ないような気がしましたが、ヒカルさんの方もこのまま 手を離すのはもったいないように思っていたので一つ頷いてそのままゆっくりと歩き出しました。
なんとなく楽しく嬉しい気持ちのまま二人は家に帰りつくまでずっと手を繋いでいました。

気持ちの良い風が吹いていた日の事でした。






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