ロクショウさんがふと目を覚ますと、人の気配がしました。
どうしたわけかほのかに明るい部屋の中、窓際に今の時間なら眠っているはずの人影を見て、 静かに寝ていた布団から抜け出しました。
近づこうとしましたがその前にベットの上に掛けてあったカーディガンを手にとりました。
「ヒカル殿、そんな格好でいては風邪をひきますよ。」
ロクショウさんは静かに歩み寄りカーディガンを羽織らせながら小さな声で言いました。
「ありがとう。ごめんね、起こしちゃった?」
その問いには小さくかぶりを振って答えを返しロクショウさんはヒカルさんの隣に並びました。
「一体何を見ているのですか?」
ヒカルさんは外を指差しました。
窓の外の風景は半分真っ白でした。見渡す限りに雪が積もっているのです。
夕方から降っていた雪は今はやみ、星空の中に浮かぶ月がただ静かにあたりを照らしていました。
いつもならば真っ暗で、道路添いの電灯が多少の光源となっているくらいですが その夜は一面に積もった雪が満月の光の照り返しを受けて青白く光っているのでした。
「綺麗だよね。」
しんとした部屋の中、真夜中という時間帯の所為もあって二人の会話は小さな声でしたがよく聞こえました。
「そうですね・・・」
冬の澄んだ空気の中、幾つかの星座と一緒に空に浮かぶ月は真ん丸で白い光をたたえています。
その月は端が仄かに青く見えました。
「ちょっと目が醒めて・・・部屋の中が何時もより明るかったから・・つい。」
この格好で窓のそとを覗きに行ったんだ・・・でも、すぐにベッドに戻るつもりだったんだよ?
一生懸命に言い訳するヒカルさんの言葉に苦笑しながらロクショウさんは言いました。
「ならせめて何かはおるなりして下さい。風邪をひいてしまいます。」
「はぁい。」
ヒカルさんは肩に掛けられたカーディガンにきちんと袖を通してボタンをかけました。
しばらくそうして二人窓の外の風景を眺めているとヒカルさんが口を開きました。
「どのくらいまで残ってるかなぁ・・・」
「今夜みたいな寒さが続けばしばらくは残っていると思いますよ。」
そっかあ、とヒカルさんはつぶやくとぼんやりと窓を見ていました。
少しの間二人は黙ったまま窓の外を眺めていました。
ロクショウさんはそろそろ寝てもらおうと思い見上げた時、同じタイミングで見下ろしてきた瞳と会いました。
そして何となく見つめ合ってしまいました。ヒカルさんはロクショウさんににっこりと微笑むと言いました。
「明日は雪合戦しよう、雪だるまとかも作れるよね。」
「出来ると思いますよ。・・・ヒカル殿が風邪を引かなければ。」
相変わらずのロクショウさんの言葉に苦笑しました。
「わかったってば、暖かくして寝ます。」
今までたたずんでいた窓際を離れ、カーディガンを脱ぎつつベットの中に入りました。
そしてさあ寝ようとしたときに、ヒカルさんは掛け布団のはしっこをめくりながら言いました。
「・・・ロクショウも一緒に寝よう、おいでよ。」
「・・・私が入るには狭くないですか?」
自分の両腕のパーツを見ながらのロクショウさんの言葉に、 ヒカルさんは大丈夫、と笑いメダロッチを取り上げました。
「・・・パーツ転送。」
次の瞬間ロクショウさんの両腕のパーツは何時もと違うものになっていました。
「これは・・・」
「『くない』と『にんじゃとう』だよ。これならそんなに場所取らないだろ?さあ、おいでよ。」
パタパタと手招きするヒカルさんにふと笑いを含んだような声でロクショウさんは言いました。
「・・・では、お邪魔致します。」
「いらっしゃいませーって、もうちょっとこっちおいでよ。落っこちちゃうよ。」
ベットの端っこの方にいるロクショウさんを自分の方に引き寄せました。
ロクショウさんがちゃんと傍らに収まるのを見てからぱふっと掛け布団をかぶると、 ヒカルさんはおやすみ、ロクショウとささやいて目を閉じました。
「おやすみなさい、ヒカル殿」
ロクショウさんの返答からたいしてたたないうちに安らかな寝息が聞こえてきました。
しばらくヒカルさんの寝顔を眺めていたロクショウさんは 掛け布団を少し上まで引っ張り、隙間が出来ないように直すと目を閉じました。
先ほどまで見ていた夜空を思い出し、起きた後を楽しみにしながら眠りに落ちていくのに そうたいして時間はかからなかったのでした。






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