暖かい日差しがさし、時たま弱い風が吹くそんな日にヒカルとメタビーは並んで木の下にいた。
「いー天気だなー…」
「本当だねー、この間の大雨で桜が全部散っちゃうかと思ったけど…」
見上げると大分が葉が目立ってきたとはいえ、頭上には桜が咲いていた。
ヒカルとメタビーは天気が良いので食べ物を持ってもうすぐ終わってしまう桜を見に来たのだった。
「なー、ヒカル。」
ずずーっとオイルをすすり、メタビーは隣にいるヒカルに話しかけた。
「これはユウキから聞いた話なんだけどさー。」
ヒカルはスコーンにかぶりついたまま顔をしかめた。一口かじりとってよく噛んで飲みこむと言った。
「どうせロクな話じゃないだろー…」
「んーとな、桜が綺麗に咲く理由だってさ。」
「なんか聞いた事あるような気がするよ…覚えてないけど。」
楽しそうにメタビーは話し出した。
「えーとな、いくつかあってさ。桜自身が見て欲しいからっていうのと、木の下に誰かに当てたものが埋まっているってヤツ。 気がついて欲しくて、大きく綺麗に咲くって…」
まぁ、普通の話だね。とヒカルはふんふんと頷いた。
「それで最後に聞いたやつが、木の下に埋まっているものは実は死体だというのが……その血を吸って紅く色付くって。」
「嫌なこと言ってるね…。」
手にしたスコーンを食べるのを止めてヒカルはぶつぶつつぶやいている。
そんな様子を見ながらメタビーは更に続けた。
「んでもって、まれにその木の下から仲間が欲しいとさ迷い出てくるヤツがいるんだと。」
「ユウキ……なんて話を教えてるんだ……」
げんなりとしたヒカルとは対象的にメタビーは笑っている。
「春の風物詩なんだってよー。」
絶対風物詩なんかじゃないよそれは、などと話ながら二人はたわいもないお喋りを続けていた。
しばらくはのんびりとした時間が流れていた。

がらっ…

二人は頭の上の桜へと向けていた視線を外すと、恐る恐る音がしたほうへと向けた。
そこにあるものは花が咲く前に降った雨の所為で崩れ落ちていた崖の一部だった。
どちらからともなく顔を見合わせた二人の頭には先程までしていた話が浮かんでいた。
しかしあえてそれには触れようとはせず二人が口にしたのは違う事だった。
「……気のせいだよな?」
「……岩が崩れただけだよね?」
……タイミングがよすぎたので、語尾が疑問形になっていたのだけれど。

がららっ…がらん

更に音は続く。嫌な予感がしてその場から二人が遠ざかろうとした時にそれは姿をあらわした。

ビシュッ!

『!!』 いきなり崩れた土の山の中から十数本の触手のようなものが飛び出してきたのだ。
それは手当たり次第に側にあるものに巻き付いた。
メタビーは持ち前の反射神経で何とかかわしていた。
だがヒカルはかわしきれずにとっさに庇った腕に巻き着かれてしまっていた。
「ヒカル!それぐらいかわせよっ!」
思わず叫んでしまっていたメタビーの言葉に対する返答も即座に返ってきた。
「無茶言うなよっ!こんな足場の悪い所でっ!」
そう言いながらもヒカルはずりずりと引きずられている。
足場が良かったらかわせたんだろうかなどと考えつつも触手状のものに焦点を定めた。

ばん、ばん、ばんっ!!

狙いたがわず巻きついていたものを打ちぬいた。
自由になった反動でヒカルはすっ転んだが一回転して飛び起きる。
「ありがとっ。」
すぐさま側に来て戦闘態勢をとるメタビー、油断無く辺りに気を配りながら言った。
「何なんだ、あれ…」
「機械だったよ。多分……メダロットのパーツだと思うんだけど……」
同じように周りを伺いながら歯切れ悪くヒカルは答えた。
そんな会話を続ける間にも、周りに巻き付いたモノを手がかり(?)にして崩れた土の山から何か出てこようとしていた。
乗っかっていた土砂を落としながらそれは姿をあらわした。
「………何でこんな物が埋まってるんだ―――っ!!」
思いっきり叫んでしまったメタビーの後ろでヒカルはああ、やっぱり…と呟いていた。
ちょっと土まみれだったがそれは何処からどう見てもWEA型メダロット『ビーストマスター』だった。
「上にロボロボ団のアジトでもあったのかな…もしくは野良メダロットとか。」
「ンなコトは後でいいからとりあえず指示くれ、指示。」
攻撃が来たら飛びのける態勢でヒカルは相手を観察した。
メタビーはそんなヒカルを何時でもカバーできる位置に立つ。
「……あのヒト、戦えないよ……。」
じっと見ていたヒカルがぽつんとつぶやいた。
がけ崩れに巻きこまれた影響か左右の銃身は歪み土が詰まっていた。
まだ脚部は一部土に埋まった所があり、頭部装甲の一部も破損し剥き出しになった部品がショートしている。
「それに戦う意思はなさそうだよ?」
落下のショックか初期命令さえ入力されていなかったのか、ビーストマスターは周りを見まわしている。
「ホントだ。」
「じゃ、ちょっと行って来る。ここで待ってて。」
ええっ、オイちょっと待てっと言うメタビーの声に手をひらひらと降り返し歩いていった。
「こんにちは、はじめまして。」
にっこりと笑いながら真正面から近づいた。メタビーが後ろで騒いでいるがとりあえず放っておく。
ビーストマスターは少し警戒しているようだ。
少し離れた所でいったん立ち止まった。
「キミね、怪我してるし。このままここに居るのもなんだから一緒に来ない?」
相手が自分の言った事を理解してくれるまでしばらく待つ。
ビーストマスターは自分の体を見まわした後、ヒカルを見ていた。
とりあえず反応を返してくれたので眼の部分に顔が写るくらいまで近づく。
「……一緒に来ない?」
そう言いながら手を伸ばした、そのまま相手が動くのを待つ。
相手はその手をじっと見つめている。
恐る恐るといった感じで手を伸ばして触れてきたので、その手をぎゅっと握る。
その顔を見上げて、微笑んだ。
「…行こう。」


「花を見に来て思わぬ拾いもの…って言うより新しいお友達見つけちゃったな。」
日も暮れかけた帰り道、並んで歩きながらヒカルは手の中のメダルを見ていた。
メダルを外してティンペットやパーツをメダロッチに入れていたら思ったより時間がたっていたのだ。
「そーだな。」
隣のメタビーはといえば先ほどから腕を組んで考えながら歩いていた。
「さっきから何考えてるんだ?」
問いかけに顔を上げると腕を頭の後ろで組みなおした。
「ん?たいした事じゃねーんだけど…。今日ホラー系になるかと思ってたんだけどよ、日本昔話で終わったなーと。」
「昔話……?」
首を傾げて考えたヒカルは思いついたお話にちょっと嫌な顔をした。
「僕おじいさんですか?」
メタビーはぺし、と手に下げていた紙袋で軽くはたきながらツッコミ返した。
「じゃあ、オレは犬かよ?」
「猛犬注意だね……止めとこう、訳判らなくなるから。」
「そーだな。」
ひとまずの結論にメタビーが同意するとヒカルははまた話題を変えて話し出した。
「名前はどうしようかな。」
「……フツーの名前にしてやれよ?」
「そんな言い方されると僕がちゃんと考えていないみたいじゃないか、失礼な。」
ヒカルが膨れてみるとメタビーは肩をすくめてみせる。
「ちゃんと考えていてもなー。」
そんな話をしながら次第に濃くなる夕闇の中、家の門にたどり着いた。
「ただいまー。」
一足早く門の中に入ったメタビーが元気良く帰宅を告げる。
ヒカルは少し入り口で立ち止まり、今日手に入れたメダルに小声で話しかけた。
(…今日からキミの家だよ。)

―――――――これから、よろしく。

そして先に入っていったメタビーに習い帰宅を告げ、パタンと扉を閉めた。






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