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「ただいまー」 「お帰りなさい。遅かったなヒカル殿・・・っ!?」 ある寒い日の夜、ヒカルさんが帰ってくるのを待っていたロクショウさんは帰ってきたヒカルさんを見て言葉を失ってしまいました。 ヒカルさんの右手は包帯でぐるぐるに固定されていました。 「あ、ただいまロクショウ。今日の夕飯何だった?」 そんなロクショウさんに気づかずにヒカルさんはコートを脱いでキッチンへと入っていきました。 そして硬直から開放されたロクショウさんは慌ててヒカルさんの後を追いかけました。 片手だけでぎこちなく夕食の準備をしているヒカルさんを手伝いながらロクショウさんは訊ねました。 「その腕・・・どうしたんだ?」 「あぁ、これ?・・・ちょっと怪我しちゃって・・・」 (その怪我で『ちょっと』なのか!?) 見たところ腕は石膏で固められているようなので、結構酷い怪我であることがロクショウさんには判りました。 「・・・何があったんだ?」 そう聞いている間にもロクショウさんは食事の支度を終えてしまいました。 「あはは、ちょっとね」 何となくヒカルさんがごまかそうとしているように見えたので、ロクショウさんは隣に陣取って話を聞く態勢をとりました。 「食べながらで良い・・・ゆっくりと聞かせてもらおう。」 「ごちそうさまでした。」 いつもより時間をかけてヒカルさんは晩御飯を食べ終えました。 食べてる合間に説明もしていたのでさらに時間がかかってしまいました。 そのままいつものように食器を片付けようとするヒカルさんをロクショウさんは止めました。 「俺がしよう、ヒカル殿はおとなしく座っているといい。」 「あ、ありがとう。」 ヒカルさんはありがたくロクショウさんの申し出を受けることにしました。 向こうの方でかちゃかちゃという音をさせていたロクショウさんは、しばらくするとその手に何か持って戻ってきました。 それは真っ赤に熟れたリンゴでした。 「・・・食べるか?」 それを聞いたヒカルさんはにっこりと笑って答えました。 「うん、食べる♪」 ロクショウさんは果物ナイフでリンゴを切り出しました。ヒカルさんはその様子を嬉しそうにじっと見ています。 しばらくの間リンゴを切る音しか聞こえませんでした。リンゴを切り終わり、皮を剥き始める頃になってロクショウさんは問い掛けました。 「ヒカル殿・・・ひょっとして俺が『チャンバラソード』でリンゴを剥く事を期待していたのか?」 「え!?・・・別に・・・・」 ヒカルさんはちょっとあせった感じで答えました。 ヒカルさんの答える様子から見るとどうやらヒカルさんは、ロクショウさんがチャンバラソードで リンゴを剥くのを見たかったようです。 そしてロクショウさんはリンゴを剥く手を休めないまま追求しました。 「期待していたんだな。」 「・・・うん・・・ちょっと。」 ヒカルさんは少し笑いながら認めました。 ロクショウさんはリンゴを器に盛り付けています。 食べやすいサイズに切られたリンゴはさりげなくウサギさんになっていました。 「これはリンゴを切るための物ではないぞ?」 「そうだね、『レイピア』とか『にんじゃとう』の方が切りやすそうだしね・・・今度試してみるかい?」 どうやらヒカルさんはメダロットの武器でリンゴを切ることにまだ期待しているみたいです。 「・・・・・・遠慮しておこう。」 ロクショウさんは器に盛り付けたリンゴを一つフォークで差してヒカルさんに差し出しました。 「・・・ほら」 「・・・・・・え?」 ヒカルさんはきょとんとしてリンゴとロクショウさんを見比べました。 「まだ慣れていないから食べづらいのだろう?」 「え、うん・・・」 まだちょっと自体を把握して無いヒカルさんの口にロクショウさんはリンゴを一切れ放り込みました。 口の中にリンゴを放り込まれたヒカルさんは反射的に口を閉じしばらくもぐもぐとしていました。 「どうだ?」 ロクショウさんの問いがリンゴの事を聞いているのだとわかったヒカルさんは口の中のリンゴを飲み下してから答えました。 「・・・甘いよ。」 「そうか、それは良かった。」 次のリンゴにフォークを刺しているロクショウさんを見ながらヒカルさんは言いました。 「なぁ・・・ずっとこうしていてくれないかな。」 その言葉を聞いてロクショウさんはちょっと動きが止まってしまいましたが、何事も無かったかのように次のリンゴをヒカルさんの口元に運びながら言いました。 「・・・怪我が治るまではな。」 「うんうん♪」 ちょっと言い方はぶっきらぼうでしたが怒っているわけではないとヒカルさんは知っていましたので、にこにこしながらリンゴにかぶりつきました。 「・・・・・・怪我が治るまでだからな。」 「うん♪」 さらに念を押してくるロクショウさんを見ながら、ヒカルさんはリンゴを食べさせてもらっているあいだ中ずっとにこにこしていたのでした。 そしてロクショウさんは (ヒカル殿に怪我をさせたヤツとロボロボ団は・・・見つけたらただじゃ済まさん・・・) などと考えていたのでした。 |