ロクショウさんはヒカルさんのお家にお泊まりに来ていました。
正確に言えばばったり道で出会ったロクショウさんを ヒカルさんがちゃっかり連れてきたということでしたが。
メタビーさんも一緒になってゲームやお喋りをしているうちにすっかり夜もふけてきたので3人 ・・・もとい1人とメダロット2体はそろそろ寝ることにしました。
ヒカルさんがお風呂に入っている間部屋に残っていたメダロットの二人は何となくお喋りを続けていました。
ふと話の途中でメタビーさんが言い出しました。
「なぁロクショウ。おもしれーものみせてやろうか。」
「面白いもの?」
言い出したメタビーさんの顔が素敵ないたずらを思いついた子供のようだったので、ロクショウさんはちょっと構えながら聞き返しました。
「そ、まあたまにハズレな時もあるけどな。・・・ちょっと待ってろ。」
そう言い置いてメタビーさんは部屋から出ていきました。
しばらくたってメタビーさんはその手に液体がなみなみと入ったグラスを持って戻ってきました。
とりあえずメタビーさんが何をするつもりなのかわからないロクショウさんは持っている物についてたずねてみることにしました。
「それは?」
「ふっふっ・・・色無し青汁。」
「何?」
「冗談だよ、冗談。ま、見てのお楽しみだな」
そんな会話を交わしているうちにお風呂上りのヒカルさんが戻ってきました。
「何やってるんだ?」
「べぇつに何も。それより飲み物持ってきてやったからさ、飲めよ。」
「あ、ありがとメタビー」
メタビーさんのたくらみなど何も知らないヒカルさんは渡された飲み物をほとんど一息に飲んでしまいました。
「・・・なんかこれちょっと苦くない・・・?」
そう言うヒカルさんにメタビーさんはあっさりと答えました。
「おう、アルコール入りだ。」
「え?」


「おー、すっかり酔っぱらったな。」
お風呂上がりのせいでアルコールのまわり早く、ほろ酔いかげんでベットにもたれかかっているヒカルさんを見てメタビーさんは楽しそうです。
お酒のせいでほんのり紅く染まったヒカルさんを直視できないらしくロクショウさんの視線はあさってを向いています。
「んじゃ、もう少しでヒカル寝ちまうだろうからその間相手よろしくっ♪」
そう言い置いてメタビーさんはドアからひょこっと外へ出ていきました。
「なっ・・・」
気づいた時にはすでに遅く、さっきまでへにゃんとしていたヒカルさんが目の前にいました。
「ふふふ・・・」
すっかりよそを向いてしまっていたロクショウさんは一瞬逃げそこね、しっかりヒカルさんに抱きしめられてしまいました。
「うー・・・冷たくて気持ち良い・・・」
「ヒ、ヒカル殿・・・っ」
べちゃーっとヒカルさんはロクショウさんに張りついて離れません。
最初のうちはわたわたして引き剥がそうとしていたロクショウさんもヒカルさんが どうしても離れようとしないのを見ると溜息を一つついて仕方なさそうにされるがままになっていました。
「・・・なぁ・・ロクショウ」
「何だ?」
火照った頬がロクショウさんの装甲にあたって気持ちが良いのかヒカルさんはうっとりと目を閉じています。 「君ねぇ・・この町にいる間はずっと僕の家に住んでなさい。」
「と、言われても・・・これ以上御迷惑をかけるわけには・・・」
「駄目です、ここが君のお家だよ。旅に出ても良いけど・・・ちゃんと帰ってくるんだぞ・・・」
ロクショウさんの肩口に頭をのせたような態勢で、もごもごとヒカルさんは言いました。
既にヒカルさんは半分夢の世界を漂っているような感じです。
だんだんヒカルさんの体がずりずりと傾いてきていました。
一生懸命支えながらロクショウさんは今のヒカルさんの言葉がじんわりと染み込んでくるような気がしました。
(・・・昔に無くしてしまったものをこの人はいとも簡単に・・・)
ぼんやりと壁を見つめたままぽつりとロクショウさんは言葉をこぼしました。
「・・・どうして・・・そこまでしてくれる?マスターでも・・・無いのに・・・」
「君――と―――なんだよ・・・」
「え?何て言って・・・」
ヒカルさんはもごもごと小声で何か言っていましたが、そのまま眠りの海へ落ちていきました。

とすん

ロクショウさんはなんとかヒカルさんを床の上に寝かせ布団をかけました。
すっかり眠りこけてるヒカルさんを見ていると、小さくドアの開く音がしてメタビーさんが戻ってきました。
「ヒカルもう寝たか。どうだ、おもしろかったろ?」
その言葉を聞いたロクショウさんは何となく表情を和ませると言いました。
「ああ、確かに・・・おもしろかったな。」
「じゃ、俺たちも寝ようぜー・・・っと何処で寝るかな」
何時もメタビーさんが寝ている場所にはちょうどヒカルさんが寝ています。
ベットの上はがら空きでしたのでそこで寝ようかとメタビーさんが考えていると
「ヒカル殿の隣で良いのではないか?」
ロクショウさんがこともなげに言いました。
「そうだな。よし、3人で川の字だ。」
「どちらかと言えばりっしんべんではないか・・・?」
ロクショウさんのツッコミを流し、部屋の電気を消してさっさとヒカルさんの隣にもぐりこんだメタビーさんは言いました。 「そうそう、ヒカルが酔っぱらっていた間のことはあんまり言わないでやらねーほうがいいぜ。」 「何故だ?」
「何も考えずに思ったことを口に出してる事が多くてな、照れるみてーだ。記憶があいまいなときもあるみてーだしな。じゃ、おやすみ」
「・・・ああ、おやすみ」

次の日、案の定ヒカルさんには酔っぱらっていた時の記憶はほとんどありませんでした。
でも酔っぱらってしまったことは覚えているらしく、ひたすらロクショウさんに自分は何もしなかったかとたずねていました。
ロクショウさんは笑って何も無かったと告げるのでした。
それを聞いて安堵の溜息をついていたヒカルさんにロクショウさんは言いました。
「しばらく・・・俺をここにおいて貰えないだろうか。」
「ここに・・居てくれるのかい?・・・大歓迎さ!」
満面の笑顔で喜ぶヒカルさんはメタビーさんにもこの情報を教えようと探しに行きました。
パタパタと部屋を出ていくヒカルさんを見送って、ロクショウさんは窓際の日の当たる場所に腰を下ろしました。
(・・・こういう時間も悪くないな。)
そう思いながらロクショウさんは窓の外を見上げながら微笑んでいたのでした。






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